ルームツアー
ここからは男女に分かれて部屋で荷解きをすることにした。
私達しか入れないフロアなので、部屋に鍵はないらしい。
入ってすぐはエントランスホールで、螺旋階段がお出迎えする。
扉もいくつかあり、開けてみるとバスルームとドレッサールームだった。
レヴィアタン侯爵夫人と一緒に、わくわくしながら階段を上っていくと一面窓という、開放的な海原が広がるリビングルームに行き着く。
「わあ、すごいですねえ」
「本当に」
レヴィアタン侯爵夫人も船旅は初めてだという。
「お針子時代に、行かなかったのですか?」
「ええ。王妃殿下はあまり王都から離れることを好まなかったみたいで」
「そうだったのですね」
ソファは座り心地が最高で、クリスタルのテーブルは美しく、絨毯もふわふわで最高だ。
他にも部屋があるようで、扉を開いて覗いてみる。
一つ目は巨大な寝台があるベッドルーム。向かい側にある部屋もベッドルームだった。
「大きなベッドですねえ」
「今晩は夫がいないから、余計に大きく感じそう」
余裕でパジャマパーティーができそうな広さだと呟くと、レヴィアタン侯爵夫人は瞳を輝かせながら「やりましょう!!」と言ってくる。
「では、パジャマパーティーのお菓子を、あとで商店に買いに行きますか?」
「いいですわね。お揃いのパジャマも買いますか?」
「お揃い、素敵ですね」
そんな話をしていると、レヴィアタン侯爵夫人が「ああ、なんて楽しいのでしょう」とうっとりしながら言った。
「娘がいるというのは、このような感じですのね!」
なんでもレヴィアタン侯爵夫人はずっと、娘が欲しかったらしい。
けれどもご子息である双子のエグモンド氏とエグムント氏の出産で生死を彷徨ったため、レヴィアタン侯爵が再度出産をさせることに対して反対したという。
「あの子達はお腹にいた頃からすごく大きくて、大変な出産でしたの。きっと特殊な例だっただろうに、二度と出産はさせたくないって、言って聞かなくて」
「愛ですねえ」
「ふふ、そうだったみたいで。でも、その当時のわたくしは、夫に対して頑固親父だとなじってしまい」
レヴィアタン侯爵に大して〝頑固親父〟なんて言えるのは、レヴィアタン侯爵夫人くらいだろう。
「ご子息が結婚したら、娘ができますよ」
「結婚できるのでしょうか……?」
結婚相手を探すのは父君であるレヴィアタン侯爵の仕事である。
けれどもレヴィアタン侯爵家は特殊な家系ゆえ、なかなかいい娘が見つからないようだ。
「ミシャさんが婚約していなければ、ぜひとも嫁いできてほしかったのですが」
私みたいな娘がほしかった、なんて言ってくれる。
最大の褒め言葉だと思った。




