お土産への思い
エアはノアが理事長のお土産として選んだ、赤い竜のぬいぐるみを左右に抱えていた。
「ノアもこの竜のぬいぐるみを買うんだな!」
「これは父上のお土産なんだ」
「そうなんだな。俺は自分の用とおじさんへのお土産なんだ」
奇しくも理事長とエア、ミュラー男爵の三人がお揃いのぬいぐるみを所持することになるようだ。微笑ましいというか、なんというか……。
その一方、アリーセは鋭い目で、猫系幻獣のグッズが展開された売り場にいた。
「何か気になる商品はあった?」
「いえ、猫系幻獣というのは、大型で肉食獣のような獰猛な見た目が多いな、と思いまして」
たしかに、猫系幻獣はトラやヒョウ、ライオンみたいな強そうな見た目が多い。
けれども幻獣なので獲物を狩ることはなく、果物や樹液などを好むかわいい巨大猫ちゃん達だそうだ。
「アリーセの推しはどの子なの?」
「いいえ、わたくしの推しはキティですわ! 他の猫に心を奪われることなんて……!」
なんて言いつつも、アリーセの視線は猫系幻獣に釘付けだった。
中でも、純白の毛並みにヒョウ柄を持つユキヒョウが気になっている模様。
「私がこのユキヒョウのぬいぐるみを、アリーセに贈るわ」
「そんな、悪いですわ!」
「だったら、アリーセも私へのお土産を選んでくれる?」
「そういうことでしたら……!」
アリーセは私のためにお土産を一生懸命吟味し、最終的に猫系幻獣の抜けた毛で作った鍋敷きを選んでくれた。
エルノフィーレ殿下は侍女達とぬいぐるみコーナーにいた。
やはり、幻獣のぬいぐるみは人気が高いようだ。
「ああ、ちょっといいですか?」
エルノフィーレ殿下は私に聞きたいことがあるらしい。
「祖国の友人にぬいぐるみを贈ろうと思っているのですが、緑竜と白竜、どちらがいいと思いますか?」
知名度があって万人受けしそうなのは白竜のほうである。けれども今回に限っては、緑竜をオススメしたい。
「実際に出会った子だと、ご友人に思い出を書かれてはいかがでしょう?」
そう提案すると、エルノフィーレ殿下は表情を曇らせる。
「どうかなさったのですか?」
「いえ……実を言えば、国外で見聞きしたことを祖国の者に詳しく伝えることは禁じられておりまして」
間諜行為だと疑われないために、国家間で交わした約束だったという。
「そうだったのですね」
「せっかく提案してくれたのに、申し訳ありません」
「いいえ、お気になさらず」
切ない表情を浮かべながら、エルノフィーレ殿下は緑竜を抱き上げる。
「よくよく見てみたら、緑竜がかわいいように思えてきました」
「私もそう思います」
エルノフィーレ殿下のご友人もきっとお気に召してくれるだろう。
「私が知らないだけで、エルノフィーレ殿下にはいろいろと誓約があるのでしょうね」
「そうなんです」
使い魔もその一つだという。
「魔法学校に転入してすぐに、使い魔を召喚するように勧められたのですが」
従えるのは在学中に限定し、ルームーン国に連れて行くのは禁じられていたようだ。
一時期は召喚する予定だったものの、他の生徒と使い魔の絆を見ているうちに、できなくなってしまったのだという。
「まだ出会ってもいないのに、お別れが辛くなってしまい……」
魔法学校の生徒は使い魔を従えることが決まりであるようだが、エルノフィーレ殿下は留学生だということで免除してもらっている状態だという。
「しかしながら、幻獣保護区でのみなさんと使い魔のコンビネーションを見ていたら、羨ましくなってしまいました」
いつか使い魔を召喚し、従えてみたい。エルノフィーレ殿下は夢みるように語っていた。




