珍しい料理
夕食はブッフェ形式だった。
ローストビーフに大エビのグラタン、フォアグラのステーキ、牛肉の赤ワイン煮などなど、学生向けとは思えない豪華な料理が並ぶ。
料理にはガラスの蓋が被せられているが、自動で開閉する魔法仕掛けのようだ。
床に魔法陣が描かれていて、立ち止まると蓋が開く仕組みらしい。
私の前にいたエアが、ギョッとする。
「エア、どうしたの?」
「ミシャ、大変だ! カタツムリの料理がある! 前におじさんがカタツムリは毒があるって言っていたのに、食べて大丈夫なのかよ!」
カタツムリ料理とは? と思って覗き込んだら、カタツムリではなかった。
「エア、これはエスカルゴよ」
富裕層が好む、高級食材だと言うと、信じがたいという眼差しを向けてきた。
「本気でこれを食うのか?」
「ええ。私は食べたことないけれど、エスカルゴは〝陸の貝〟って別名があって、けっこうおいしいっていう話よ」
「陸の貝……! そういうふうに聞くと、なんだかおいしそうに思えるから不思議だな」
「一緒に食べてみない?」
「ミシャも初めてか……。わかった。挑戦してみる」
そんなわけで、私とエアのお皿にエスカルゴが盛り付けられた。
「エスカルゴの口直しにローストビーフをたくさん食べよう」
「おいしいかもしれないじゃない」
私も食べたことがないし、好みもあるので、絶対に大丈夫と言えないのだが。
テーブルは班ごとに分かれていて、〝にゃんこ大好き班〟と合流する。
アリーセのお皿にもエスカルゴがあって、エアが反応する。
「アリーセもカタツムリ食べるんだな」
「エスカルゴですわ」
「そうだった!」
みんなが揃ったので、いただくことにした。
「よし、ミシャ、エスカルゴを食べるぞ!」
「ええ」
「これは、殻を潰して食べるのか?」
「いいえ、そうではなくて」
ちょうどアリーセが食べるところだったので、参考にさせていただく。
アリーセはトングみたいなカトラリーを手に取ると、エスカルゴの殻を固定させ、二股のフォークで身をくるりと回して取り外していた。
「あのトングみたいなやつ、パンを摘まむもんだと思っていた」
「ああやって使うのね」
私達の視線に気付いたアリーセは、「何を見ていますの!?」と顔を真っ赤にさせる。
「ごめんなさい。エスカルゴの食べ方がわからなくて、参考にさせてもらっていたの」
「そうやってすると、きれいに食べられるんだな! アリーセ、ありがとう!」
エアから感謝されたアリーセは、まんざらでもない様子でいた。
私達もエスカルゴをいただく。
トングでしっかりエスカルゴの殻を掴んで、二股のフォークで身をくるりと出す。
そのまま頬張ると、肉厚の身に薬草とバターの風味が広がっていく。
「うわ、おいしい!」
「本当、貝みたいだわ!」
私達がエスカルゴできゃっきゃと楽しむ様子を、レナ殿下やエルノフィーレ殿下、ノアが微笑ましい表情で見ているのに気付く。
「ミシャ、はしゃぎすぎちゃったな」
「ええ」
エアと一緒に、おおいに反省したのだった。




