宿泊施設へ
転移魔法で到着した宿泊施設は、五階建ての立派な建物だった。
噴水広場があり、幻獣保護の偉人であるマリウス・リヒテンベルガーの銅像もある。
「ノア、この人がマリウス・リヒテンベルガーだってさ」
「立派なお方だけれど、なんか雰囲気が神経質そう」
たしかに、眉間には深い皺が刻まれていて、険しい表情でいる。
けれども心の中は幻獣愛で満ちた、温かい人物なのだろう。たぶん。
マリウス・リヒテンベルガーの銅像を眺めていたら、アイン先生が駆けつけてきた。
「貴殿ら! 無事だったか!」
私達をまとめてぎゅ~~っと抱きしめてくれた。
苦しかったが、アイン先生の愛が伝わってくる。
「他の生徒もすぐにここへ集まってくるだろう。しばし休むといいと言いたいところだが、少し、詳しい話を聞きたい」
「ならば、私が代表して話そう」
〝にゃんこ大好き班〟のリーダーであるレナ殿下が挙手する。
レナ殿下は私達を振り返り、安心するように微笑む。
「皆は先に休んでいてくれ。私もすぐに合流するから」
「わたくしも、同席いたします」
エルノフィーレ殿下が挙手する。
「いいのだろうか?」
「はい。他の方はどうかお休みになっていてくださいね」
お二方の言葉に甘えて、私達は休ませていただく。
部屋は一人で使うようになっているらしい。
なんて贅沢な、と思ってしまう。
建物の内部は高級ホテルのようで、床は大理石、天井には水晶のシャンデリアと贅が尽くされたものだった。
この宿泊施設も、マリウス・リヒテンベルガーの支援で建てられたという。
優秀な魔法使いでもあった彼は、建物が劣化しないような魔法式を建築に組み込むという、高等技術を織り込んだ宿泊施設を築いたようだ。
エアと一緒に、美しい内装をまじまじと見てしまう。
「ミシャ、ここすごいな。この建物はすでに建てられてから何百年と経っているなんて」
「新築みたいにピカピカよね」
「本当に」
そんな会話をしているうちに、男女二名の案内人がやってきて部屋まで案内してくれるようだ。
男子は四階、女子は五階らしい。
魔法仕掛けの昇降機もあって、至れり尽くせりである。
エアだけ四階で下りた。
「じゃあ、またあとでな!」
「エアもゆっくり休んで」
「ああ、みんなも!」
エアは元気いっぱいな様子で下りていった。
私達は五階で下りる。
一人一人鍵となる腕輪が手渡された。これを装着していたら、扉に触れるだけで鍵の開け閉めができるという。
とても軽く、締め付けるような装着感もない。便利な品だと思ってしまった。
「部屋にあります飲み物や食べ物は、ご自由に召し上がってくださいませ」
「ありがとうございます」
ノアやアリーセと別れ、部屋で休ませていただく。
今すぐにでも眠ってしまいたいが、湿地帯でのあれこれで汗と泥まみれである。
お風呂が先だ。




