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婚約者から「第二夫人になって欲しい」と言われ、キレて拳(グーパン)で懲らしめたのちに、王都にある魔法学校に入学した話  作者: 江本マシメサ
七部・三章 幻獣保護区でのひと騒動

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ホイップ先生との合流

 すかさず、エルノフィーレ殿下が男について報告した。


「この男は幻獣を捕らえようと幻獣保護区に忍び込んだ密猟者です!」

「あら~」


 口調は柔らかかったものの、男を見つめる眼差しは鋭い。


「悪いことをする子は、おしおきしなくてはいけないわねえ」


 そう言ってホイップ先生は杖を取りだすと、地面に向かって突き刺す。

 男の周囲に緑色に輝く魔法陣が浮かび上がり、巨大な花が生えてくる。

 花びらには鋭い牙のようなものがあり、ぱくん!! と男を丸呑みしてしまった。


「食人花の魔法だ……!」


 ノアが呆然とした様子で呟く。

 ホイップ先生が召喚した食人花は『ふう!!』と満足げに息を吐いていた。


「ホイップ先生、さっきのおじさん、食人花に食べさせたのか?」

「ふふ、安心してちょうだい~。呑み込まないように言っているから」


 たしかに、よくよく見たら花びらがもごもご動いている。

 咀嚼しているような状態なのだろうか。

 さらに、男の叫び声みたいなものも漏れ聞こえていた。


「すこーしヒリヒリする溶解液の中で、飴を舐めるように転がしているだけだから、死にはしないわあ」


 嬉々として喋る様子を見ながら、ホイップ先生が味方でよかった、と心から思った。

 男は食人花の口に含んだまま、運んでいくという。

 ホイップ先生に危険はないようなので、ホッと胸を撫で下ろした。


「それはそうと、ホイップ先生はどうして私達を探していたのですか?」

「嫌な予感がしたのよお。妖精が私のもとに戻ってきたから、何かあったのかと思って」


 たまに妖精を撒いて先に進む生徒達もいるようだが、私達は真面目なメンバーの集まりなので、心配して探してくれていたようだ。


 言えない……。

 妖精を撒いてしまったのは、騒動が起きる前の休憩時間だったなんて。

 なんて思う私だったが、レナ殿下がきっちりホイップ先生に報告してくれた。


「気配と姿を消す魔法布ですって~? 王家のお宝ではないの~!」


 私達は知らずにたいそうなお宝の上で休んでいたようだ。


「密猟者は緑竜を捕らえようとしていたようで」

「なっ、緑竜ですって!?」


 なんでも緑竜というのは自然と同化するように存在しているため、人前に現れることはないという。


「ホイップ先生、いるんだよ、ここに」

「どこにいるというの~?」


 ホイップ先生でも魔法布の上にいる緑竜の居場所を把握できないらしい。

 さすが、王家の宝物だと思った。

 レナ殿下がホイップ先生に魔法布上にいる存在を目視できる眼鏡を手渡した。


「まあ!!」


 ホイップ先生のお腹の底から出た声を初めて聞いた気がする。


「よく、緑竜があなた達の誘導に従ったわねえ」

「ジェムに持ち上げてもらったんです」

「だったら、出して差し上げなさいな」


 自分の意思で出入りできるのだが、これ以上魔法布の上にいられてもレナ殿下が困るだろう。


「ジェム、もう一回、緑竜を持ち上げて、魔法布の外に出してくれる?」


 そうお願いすると、ジェムは緑竜を運んでくれた。

 外に出た緑竜は、くわ~~っと大きな口を開けて欠伸をしていた。


「立派な緑竜ですこと~」


 数百年以上生きているホイップ先生でも、目にするのは初めてだったようだ。


「ホイップ先生、この緑竜が密猟者について俺達に教えてくれたんだ」

「そうだったのねえ」


 ホイップ先生は深々と頭を下げ、生徒がお世話になったと感謝の気持ちを伝える。

 緑竜は『グオ』と短く鳴く。まるで気にするな、と言わんばかりだった。

 そんな緑竜は傍にいたレナ殿下に、何かあげているようだった。


「これは――!?」

『グオオ』


 何やら感謝の印をレナ殿下に託したようだ。

その後、緑竜は別れの挨拶をするような鳴き声をあげると、この場からゆっくりゆっくり去って行った。 

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