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王子になった俺と姫になったあいつ  作者: リュウ
第10章 夢のはざまに現実をかえりみて

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10-1 sideルイス(ハヤト)

オットーバッハ王国に着いたのは八月十三日だったが、ハリエットと城下町に出たりしているうちに時は過ぎ、八月も十七日になった。

八月二十六日のアンリエッタの誕生祝にも参加したいし、そろそろ学園の新年度が始まる九月一日に合わせて、ハリエットと共にクロス王国に向かわなければならない。

ハリエットの誕生日は八月三十一日なので、新学期が始まる前日にはハリエットの誕生祝もしたい。

ハリエットと俺はオットーバッハ王国でさらに仲睦まじくなったが、俺たちはまだ手を握ったことすらなかった。

オットーバッハ国王の前でいちゃつくのはどうかと思ったのもあったが、なんというか…どうしてもそういう流れにならなかったのだ。

俺はハリエットを愛していると自信を持って言えるが、手を握りたいとか抱きしめたいとか、そういう風に思えない。

それはやはり、俺が前世でも今世でもゲイだからだろうか…

俺が思いに沈んでいると、ハリエットが俺の顔を覗き込んで

「殿下、ご気分でもお悪いのですか?」

と尋ねてきた。

「いや、そんなことはないよ」

俺は笑って答えたが、まだハリエットは心配そうな顔をしていた。

「みんなへの土産の準備に忙しいんだろ?早くしないと明後日の出発に間に合わないぞ」

と俺が言うと、

「…そうですわね…」

ハリエットはまだ心配そうにしていた。

なので

「わかった、わかった、今夜は早く寝て明日は元気になるから」

と俺は笑ってハリエットに言った。

「お疲れなのですね。早くお休みになって下さいませ」

ちょっと安心したようにハリエットは言った。

なので俺は、夕食後風呂に入り、すぐにベッドに入って眠りについた。


朝日のまぶしさに目を覚ました俺は、周囲の様子が違うことに気づいた。

オットーバッハ王国の王宮の貴賓室で寝ていたはずだ。

なのに…ここは…?

前世の世界ではごく一般的な乗り物だった…バスの中…?

信じられない光景に、俺は目をこすって周囲を見回した。

俺の隣…通路側の席の俺の隣、窓側の席に…ユウヤがいる…

長いまつ毛を伏せて眠っている…ユウヤが…いる…

ハリエットじゃない。

ユウヤがいる…!

眠っていたユウヤがゆっくりと目をあけた。

そして俺の方を見て

「ん…?ハヤト…おはよー…」

と、まだ完全に目覚めていないぼんやりとした様子で言った。

ユウヤだ。

「ユウヤ…!!」

俺は思わずユウヤに抱きついた。

ユウヤは笑って

「ん…?どうしたの?何か怖い夢でも見たの?」

と俺の頭をなでた。

ユウヤの体のあたたかさに、俺は涙が出てきた。

「そっかそっか、怖い夢見てたんだねぇ」

小さな子供の頭をなでるように、ユウヤは優しく俺の頭をなで続けた。

俺の涙は、あふれ続けて止まらなかった。


「うひょっ…」

「私らが寝てる間にこんなおいしい状態に…!」

マユとリオの声がした。

後ろの席から俺たちを見ている。

レイズじゃない女子のマユと、アンリエッタじゃないリオだ。

「ハヤトがなんか怖い夢見ちゃったみたいなんだよ」

ユウヤがそう言うと、

「しばらくそうしてあげてたら?」

マユがにやにやと笑いながらそう言った。

リオも

「そうそう、慰めてあげなよ~」

やっぱりにやにや笑いながら言った。

「おーい、みんなそろそろ起きろよー」

俺たちのすぐ前から、のんびりした声がした。

ニシダ先生だ。

ゴードンじゃない。

「もうすぐスキー場に着くから、忘れ物しないように荷物まとめろよー」

ニシダ先生の声に

「はーい」

「わっ!スマホどっかいった!!」

みんなの元気な声がする。


あまりにもリアルな光景に、俺は呆然としていた。

夢か?夢なんだろ?

でもユウヤの体はこんなにもあったかい。

「さ、ハヤト。俺たちも準備しなきゃだよ」

ユウヤが笑って俺の頭をぽんぽんと叩く。

「あ…ああ…」

俺は自分のバッグの中身を確認した。

スマホに財布に着替えに洗顔料…あの時…出発する日の朝にバッグに詰めたものが入っている。

ちらりと見ると、マユがゲーム機を慌ててバッグにしまっていた。

リオのバッグの中にはお菓子がいっぱい入っている。

「おっ!スキー場に着いたぞー」

ニシダ先生の声がして、バスは白銀の世界の中、ゆっくりと停まった。

 

本日から第10章開始です。一応10章で終わり…でございます~

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