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【ブラッシュアップ版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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11/11

011 才能開花のもふもふ軍団! 鬼に金棒、コボルトにマチェット!

「いやぁ、レン! コイツら本当に凄いぞ! 素直で真面目で、言われたことを一所懸命やるから成長がめちゃくちゃ早い! その上、元々の身体能力が高いし、野生の動きというか、躊躇なく一歩を踏み出す思い切りの良さもある。あっという間に、ゴブリンなんか屁でもなくなっちゃったぞ!」


 そう言って興奮気味にコボルトたちの凄まじい成長ぶりを語るリーダーの言葉は、一向に止まる気配がない。


 元来、この世界の野生のコボルトは身体が小さくて力も強くない。ゴブリンと一対一で正面から戦えば、まず勝てないのが常識だ。


 指導を引き受けたリーダー自身、まさかここまで劇的に強くなるとは夢にも思っていなかったのだろう。


 最初は「旅の間、魔物に襲われた時に死なない程度の動きを教えてやればいいか」くらいの、軽い気持ちだったのだ。


 そもそも野生のコボルトというのは、まともな武器を持つこともなく、『噛み付き』だけが唯一の攻撃手段である。


 だからこそ、冒険者からすれば、口を開けて襲ってくる横っ面を叩くか、迫る顔面をカウンターの剣で叩き斬るだけで簡単に倒せる雑魚に過ぎない。


 そのため、彼らが生き残るには数を集め、群れで波状攻撃を仕掛けるしかないのだが、数が多いと今度は一匹あたりの獲物の分け前が減ってしまう。結果として、野生のコボルトはいつも腹を空かせて飢えているのだ。


 そして飢えているからこそ、大した戦術も考えずに「とにかく喰える獲物」に向かって無謀に突撃し、返り討ちにあってすぐに殺される。


 そんな底辺の魔物が、なぜ絶滅もしないで生息しているのかといえば、理由はただ一つ。恐ろしいほどの多産だからだ。たくさん産まれて、たくさん死ぬ。


 それこそが、魔物界の最底辺に位置するコボルトという生態のリアルであった。


 この周辺でコボルトより弱い魔物といえば、もはやスライムか、一角兎のアルミラージくらいのもの。しかし、スライムはそもそも肉がないので喰えないから襲わないし、アルミラージは足が速いうえに一匹二匹捕まえたところで、群れを成すコボルトたちの腹の足しには到底足りない。


 そんな訳で、彼らは「安全に弱者を狩ってレベルを上げる」という経験を積むことができないのだ。仮にそこそこの敵を命がけで倒したとしても、群れの全員で経験値が分散されてしまうため、やはりレベルはほとんど上がらない。


 奇跡的にちょっとレベルが上がった個体ができても、まともな武器も防具もないため、次の戦いで生き残ることは非常に難しい。


 だからこそ、いつも飢えに突き動かされて無謀な戦いを挑む。野生のコボルトは、まさに『狂犬』と呼ぶに相応しい危険で哀れな存在だった。


 ゆえに、誰も好き好んでそんな飢えて狂った目をした、臭くて汚い魔物をテイムしようとする者など、これまでの歴史に一人もいなかったのである。


 しかし――ここに、コボルトしかテイムできない『コボルトテイマー』という固有スキルを持った少年・レンが現れたことで、その前提は文字通り一変することとなった。


  ◇◇


 コボルトに『クリーン』の生活魔法を使い、泥を落として綺麗にして獣臭を消せば、あら不思議。最高に愛らしいモフモフのワンちゃん型魔物の出来上がりだ。


 その上、もともと高度な社会性を持って群れで生活するコボルトは、地球の犬の特性を色濃く受け継いでおり、自分が認めたボスの言うことは絶対に従う。いわば、究極の『忠犬』なのだ。


 筋力こそゴブリンには劣るが、その代わりにしなやかで素早い身のこなしができ、何より人間を遥かに凌駕する嗅覚と聴覚を備えている。彼らには、生まれながらにして天性のハンターとしての輝かしい素質があった。


 ただ、これまではそれを活かせる「まともな環境」がどこにも無かった、というだけの話なのだ。


 マスターとなったレンが彼らの腹を十分に満たしてやり、恐怖と飢えを取り除き、適切な武器を持たせたことで、コボルトたちの眠っていた才能が一気に爆発開花した。


 特に、商人の男から購入して与えた『マチェット(山刀)』は、コボルトの体格に見事なまでにジャストフィットした。


 まさに鬼に金棒、コボルトにマチェット。自慢の素早さを一切阻害しない丁度良い大きさと絶妙な重さは、彼らの手の中で凶悪な白刃の武器へと早変わりし、その戦闘力はまさに水を得た魚のように跳ね上がったのだ。


「こりゃあ、そこらのDランクの冒険者パーティあたりじゃ、あっという間に敵わなくなるのも時間の問題だな!」

 確信を込めて太鼓判を押すリーダーの横から、女性陣もそれぞれの相棒を抱きしめて誇らしげに声を上げる。


「本当に! うちのツヴァイは可愛いだけじゃなくて、教えた弓の扱いも罠の見極めも、すっごく強くなったわ!」

 ゴールデンレトリーバー風のコボルト・ツヴァイの黄金の毛並みを、嬉しそうに何度も撫で回す狩人の女。


「そうそう! 私のフィアなんて、可愛い上に物覚えが良くて本当に賢いんだから! ね〜!」

 フラットコーテッドレトリバー風のコボルト・フィアを大切そうに抱っこし、頬ずりする魔法使いの女。


「……フンフも、槍の引きと突きの腕をかなり上げたぞ。筋が良い」

 シベリアンハスキー風のコボルト・フンフの頭を大きな手でワシワシと撫でながら、普段は無口な槍術士の男も、その確かな手応えに満足げな笑みを浮かべていた。


 これほど能力を見抜いて的確な指導ができたのも、無理はない。


 レンを乗せたこの馬車を護衛する四人組のパーティ『朝焼けの光』は、実力至上主義のギルドにおいて上位に君臨する【Bランク】――都市でもトップクラスの実力を誇る、一流の精鋭冒険者たちだったのだ。


 一流の指導者、満ち足りた食事、そして最適な武器。


 全てが揃ったもふもふ軍団は、レンの最強の盾であり矛となるべく、街道を突き進みながら驚異的な速度でその牙を研ぎ澄ましていくのだった。

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