↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
62/85

57. 堂々としたモグリの商人

 城に一つの報告書が上がってきていた。干城と奈津希の盗賊討伐に関する、傭兵ギルドからの報告だ。


 フリーランサーギルドは多くの国を跨ぐ組織である為に国との関わりは淡白で礼を失しない程度だが、傭兵ギルドは国との関わりは強く良好だ。干城と奈津希が盗賊討伐に参加する事を掴んだ宰相グレカーレは内容や人物評などの報告書を城に上げるよう傭兵ギルドへ指示していた。


 80人規模の盗賊討伐を行い、首領他4人の主要構成員を生け捕りにし他は全て処分した事。捕縛者、死者合わせて83名だった事。傭兵団は周囲を包囲し取り逃すことがないよう努め、結果的に全て二人で対処し一人の取り逃しもなかった事。従魔としてレグラータを従えていた事。


 前日の実力確認で干城と奈津希の両名で模擬戦を行い戦闘力は、今回の結果も踏まえ一個傭兵団以上は確実であろう事。


 人物評は、13歳の子供と思えない程、礼儀正しく慈悲深く。思慮分別があり。作戦を提案し状況判断も的確で、事を始めれば目の前の財貨よりも目的を達成する事を選ぶ強い自制心がある。


 また、盗賊による魔法処置で安楽死となった女性を悼み盗賊に激昂する惻隠の情や義憤がある。


 どのような生い立ちであれば、僅か13歳であれ程の理性的な思慮深さと心の強さ、そして戦闘力が持てるのか全く想像がつかない。


 報告を読んだ宰相は、これを持って陛下の元に向かった。


 シルヴァノ国王も報告を読み溜息を吐いた。


「勇者はやはり勇者なのだろうな、強さも清廉さもあり、礼儀正しく思慮深い。前世が57歳と55歳と言うのも疑う余地はない。友誼を結べていればどれ程心強かったか」


「御意にございます。しかし、彼らにとって私達は特権を貪る寄生虫で、遅れた世界の野蛮人なのです。彼らにとって我らの世界には何の価値もなく、彼らと友誼を結ぶには我らは足らぬ存在なのでしょう」


「相手を尊重する事が彼らの常識だった、我らの常識は彼らに取って押し付けでしかなかった。この上は、貴族達が彼らに要らぬ手出しをしないよう祈るのみだ。手を出した者が当人だけでなく家ごと潰されても、我が国は約定で傍観するしかない。これが彼らが求めた唯一の約定だ、これを違える訳にはいかん」


「御意にごさいます」


 召喚した勇者が力を持て余した凶人ではなかった事は救いであった。それだけにタテキとナツキに与えた絶望の深さが、召喚魔法という理不尽がシルヴァノの心に残り続けた。全ては、常識も価値観も理も違う異世界の召喚者、という前提の認識ができず、相互理解もなしにこちらの常識を押し付けた事。それは今後の会話すら拒否する事を感じさせる決別という結果を招いた。


◇◇


 日毎に寒さを実感するする頃、ランクC依頼の為北門を出た所で屋台が出ていた、北のレクゼフロー領からの入街待ちが列を作っていて、カップで暖かいスープ売っていた、干城は特に何も感じず通り過ぎようとしたが、不意に違和感を覚えた。


 1種商人であれば街に店舗がある、屋台も店舗と見做されるだろう、店舗を持たずに街の外へ出て商売をするなら2種の行商人だ、門の外に屋台という店舗を持ち、商売をするのは何になるんだ? 奈津希と話しても「そう言われれば辻褄が合わないわね?」と首を傾げるので、干城は直接聞いてみたら、悪びれもなく商業ギルド登録してないモグリで商売をしていると答えた。商業ギルドは手出しできない場所で怪しいやつは門の警備隊が対処する、税さえ払えば行政は文句言わない。門前の商売はボロいのだそうだ。


 なぜそんな事が罷り通るかと言えば、商業ギルドの権力が及ぶ範囲は街や町、それと商業ギルドの窓口が設置してある村で、街やそういった村の外に関しては商業ギルドの手は及ばない、手の及ばない場所で、仮に商業ギルドカードを持っている者でも、行政に何をされようと関知しない。


 行政側は税金が取れれば良いので、売り上げに対して税は掛かるので足元を見て高値であろうとも、結果的に税収が上がると検挙しない。この類の一日店舗はその日に一日の売り上げに対して税が掛かるらしい。そこで干城はエルベシャ拠点の屋台が高くて味が落ちる理由が分かった、拠点の屋台は全て素人で、値段も商業ギルドの統制が入ってないのでボッタクリなのだ、そして駐在していた騎士は徴税のための監視か徴税員だと合点が入った。


 そしてこの構図はどこの国も似たようなものらしい。なぜならどの国も各国に跨る商業ギルドに一定の価値は置いてるが、その組織力や経済力で国を乗っ取られては堪らない。彼らは商人だ金儲けの匂いがすれば何処にでも手を伸ばす、だから力の及ぶ範囲を制限する。その辺りが礼を失さない程度の節度の違いが、フリーランスギルドと違う。


 ギルドも国が違法としないなら、特に何もする必要はない。買い物するかはフリーランサーの判断というスタンスなんだろう。


 それに対して物申そうとは思わない、それでこの世界は上手く回っているんだろう。ただ、ああ、そういう事かと言うのが分かれば良い、所詮自分達には関わりのないことだ。


 少し時間を食ったが、先ずは依頼を達成しよう、干城はオーグルディアというヘラジカに似た鹿の角と肉の採取で、奈津希はグロムサウという、金毛の羊の毛と角三頭分だ。


 デカい角の鹿なので、木が密集している森の中より、少し開けた川沿いの方に居るだろうとあたりをつけて魔力探知する、標的を見つけたが子連れの番だったので次を待つ。1時間ほど待つと一頭の大きなオーグルディアが居たので、音と気配を消してアイスバレットを眉間に当てて仕留めた、頭の中に埋まっても氷なら溶けて消えるだろう。


 解体前の仕込みを済ませて、角を取り外した本体はインベントリに格納し、角に傷や罅がないか確認する。異常がないので表面を風魔法でエアガンのように使い汚れを落とし。土魔法でサンドブラストのように角の表面を磨き、仕上げに解体でオーグルディアから出た脂を麻布につけ表面を磨く。このひと手間で素材査定額が上がるのでやらない手はない。


 バーチャルエリアに入ってみると奈津希は仕事を済ませてお茶を飲みながら寛いでいた、奈津希はグロムサウ三頭の素材だったよね? 素材の手当ても肉の処理も俺よか上手いんじゃないだろうか。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。