55. セージ協会の成り立ち
宿は三日の宿泊延長し6レラの宿代も支払った、夕食も済ませ二人はステータスを見てみる。
名前 タテキ・アリハラ
年齢 13歳
職業 剣士
職業スキル
剣士 魔術士 治癒士 テイマー 錬金術師 商人
調理師
スキル
魔法(全属性)
錬金魔法
無属性魔法
身体強化魔法
生活魔法
「うん、知ってた」
「アタシそれに加えて裁縫師があるわよ」
「なんで?」
「こっちの服ってあんまり耐久力ないのよ、それでぼちぼち繕い物してたから?」
「なんか、服破いてすみません」
「良いわよ、どうせ背も伸びて買い換えなきゃいけないし。それよりライフワークは錬金術師にしときましょうか」
「確かにそうだ。変更しとこう」
取り敢えず今日は寝よう。
翌朝二人は朝のやや冷たい風を感じながら散歩を楽しむように歩いてセージ協会へ向かった。昨日よりも風が冷たく感じた、すれ違う人達も身体を縮こめるように足早に歩いていた。
「おはようございますタロスさん、そう言えば、どこに何時とかの具体的な事を聞いてなかったのでこちらに寄らせて頂きました。」
「そう言えばそうだったな、事務職は定時があるが、俺達研究職は定時とか決まった就業時間がないからうっかりしてた」
「定時がない?」
「なんてブラックなの、どブラックじゃない」
「研究職ってのは研究を始めたらのめり込んだり、時間が不定期だったりするからな。寧ろ自由で良いぞ」
フレックスって事か? この世界なりの就業規則があるんだろうか?
「それで私達は何をすれば良いでしょうか?」
「そうだな、部長の所に行ってみよう」
……
「部長、タテキとナツキの二人はどうすれば良いでしょうか」
「あぁ、来てくれたか。二人に聞きたい事があるんだが良いかい?」
「はい、どうぞ」
「君達は昨日初めてポーションを作って成功させた、つまり錬金魔法を使えるという事なんだが、錬金薬士の職業を持ってるのかい?」
「はい、錬金術師の職業スキルを持ってます」
「錬金術師?」
「はい、魔法職はあと魔術士、治癒士、テイマーです」
隠すかどうか奈津希と話し合って隠し立てして辻褄合わせに冷や汗掻くよりぶっちゃけた方が楽となった。進んで話す必要はないが、召喚されてこの世界に居る事を知られても構わなかった。擦り寄ってくる面倒事なら返り討ちにすれば済む、何人か黙らせれば誰も近付いて来なくなるだろう。少なくともこの国ではペンは剣よりも強しのペンは折っていると気楽に考えていた。
二人は協会会議室に連れて来られていた。
協会長、副協会長、管理部長、錬金部長、付与部長、魔術部長、治癒部長、部長級以上が勢揃いしていた。用意された席は協会長と副協会長の近くの席だった。
「私は協会長のユレイグラス・アガスティアだ、君達は錬金術師の他にも魔術士、治癒士、テイマーの職を持っていると?」
「はい」
「失礼だが開示して貰っても?」
「構いません、ステータスディスクローズ」
奈津希と二人でステータスを開示する。
「確かに聞いたとおりだ」
「魔法全属性、そんな……まさか」
「闇属性のテイマーは貴重だ」
「魔法全属性なんて聞いた事もない、宮廷魔導師にも居ませんよ」
「本当に錬金術師だ」
協会長から「君達是非セージ協会に登録してくれないか?」と言われた。ライセンスは欲しいので是非もない。
「私達も錬金術師のライセンスは欲しいと思っておりますので登録はさせて頂きたいですが。その、研究職になろうとは思っていないのですが」
「それは構わない、君達はフリーランサーだからな。協会に登録している魔法職でフリーランサーも大勢いる必ずしも協会職員になる必要はない」
「研究に協力してもらう際には、事前に調整するし、協力中は拘束料として日当も支給する」
干城は城よりも余程マトモだと思った。
「それでしたら是非お願いします。そうだ、王都にもセージ協会はあるのでしょうか?」
「勿論王都にもある、だいたい人口5万人くらいの街を目安に考えてくれればいい、ここは薬草が豊富なので例外だが、ここのように条件が良くて協会がある地もある」
「そうなのですね、ありがとうございます」
「では登録はこちらで進めておこう」
「お願いします。それで私達は今日は何をすれば」
それにはランツィア錬金部長が口を開く。
「今日は、昨日君達がやったポーション作りの再現と検証を行なって貰う」
「検証ですか?」
「そうだよ、昨日直ぐにここに居るメンバーを集めて昨日の報告をしたら、そりゃあ紛糾してね」
アガスティア協会長も話に参加して懸念を口にする。
「我らとしてもミレアの実を介さずポーションが作成出来るのは一大事なのだよ」
干城も理解はできた、ミレアの実もなしにポーションが作れる事はセージ協会の優位性を失う。
「なのでこの検証作業は極秘試験なんだ」
「承知しました、それでは人目に付かないよう錬金薬士と治癒士の協同試験という事ですね」
「察しが早くて助かるよ、錬金薬士はタロスが行うよ」
その後の検証作業で治癒士による調和の魔法を使った共同作業は成功率2割程で、干城と奈津希は全て成功した。成功事例はあるので遣りようはあるが、それを探究するかは後日の課題とされた。
干城はセージ協会の成り立ちをランツィア部長に聞いてみた。
「セージ協会は元々それぞれギルドを作っていた錬金術師、魔術士、治癒士、付与士を120年前に統合して設立されたんだよ」
「それぞれがバラバラで研究や開発をしていれば、知識や技量の偏りで研究や開発が行き詰ったり失敗したりを繰り返してたんで協同して取り組もうというのが設立の目的だね、だからセージギルドではなくセージ協会なんだ」
(そういうことか、それぞれスペシャリストの知見を共有することで発展性を広げた。それぞれ得意とするものが違う同業種の町工場がグループ化した感じか)
「勿論最初は快く思わない設立反対派の妨害や撹乱、内部闘争があったらしい。それらに対処して、その都度規約や枠組みを作り、それらを乗り越えて今のセージ協会があるんだ」
(ああ、つまりあれか、グループ化や一元化することで役職の椅子が減るから理念より利権が優先する腐った林檎の類がいればそうもなるわな。組織作りの過渡期にありがちな生みの苦しみというやつか)
「フリーランスギルドのように国を跨いだ組織ではないから街の通門料が無料になる事はないが、協会員証が身分証になるくらいには信用があるし、ライセンスがなければ生産魔法職としての取り引きが出来ないくらいの影響力はある」
「あと、国に所属している魔法職はセージ協会には所属していない。彼らは国が発行する身分証を持っているからね、それは彼らの身分を保証するものではあるが、セージ協会員証のように生産魔法職が商売として身を立てる事には使えない。例外として規定年数以上勤務実績があり、定年まで勤めれば国からの恩赦として商売に使えるが、長年組織という囲いの中に居て世間や商人の暗黙の了解を知らない彼らが上手く立ち回れる例は少ないね。だから彼らもわざわざ商売を始めようとはしない、そうしなくても生きていけるからね」
(その点は天下りがないのは結構なことかな。公務員という組織の中に長くいれば、理屈は分かっていてもあくまで理屈だけで、商人としての視点を持っているわけでも駆け引きや引き際の心得や時機を見定める経験値はないだろうからな)
その日はそれで終わった、翌日から滞在最終日まで付与や魔導具や生活魔道具作り、属性魔法の検証や研究に協力した。テイムの従魔についてはレグラータをテイムしているが、出産に伴い今は子育ての為にエルベシャ山脈の麓にいると事情を説明して召喚できないと理解してもらった。
付与や道具作りは自分たちも大いに勉強になった。ことに商品とするなら彫金や木工、革細工などの必要性を痛感して、それらの技量を上げようと思った。
属性魔法については光属性魔法レーザーのアニメの浪漫魔法の多角攻撃やTOT攻撃は、光の奔流と攻撃の畳み掛けという見た目の派手さがあり。魔法部門長の度肝を抜いたらしく、研究したいが光属性の適性者がディノーラに居ないと残念がられた。
ただ、その発想は他に活かせないかと言っていたので、奈津希が代わりにと聖属性魔法のリフレクトを使って魔法を任意の方向に反射させて攻撃する方法を披露したが、リフレクトを術者から離れた位置に展開するところで躓いていた。
(やっぱり奈津希のリフレクトを自分から離れた位置に展開するって反則だよな。まあ、リフレクトは複数を経由した反射をできないのが浪漫の観点で欠点だけど)
二人は今回の研究協力で得るものも多々あり、実り大きなものとなった。滞在延長の最終日は惜しまれながらセージ協会から見送られ、最後の滞在日の夕食を堪能して、翌日王都ログマイヤへ向かった。生産魔法職のライセンスを得たのだ、商人の資格を得なけばならない。




