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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
3章 冒険者
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99. ダンジョンアタック 4 (ダンジョン生物の命とは?) 

 食事と食休みを終え、二人は草原を歩き始めた。見渡す限りの草原に方向感覚が狂いそうになり、とりあえず目立つ丘の頂上を目指そうとしたところで、干城はふと思い直した。飛行魔法で上空に出れば手っ取り早いのではないか、と。


「奈津希、どちらへ進むべきかも分からないし、飛行魔法で上空から地形を確認しようか」

「そうね、見渡す限り草ばかりで目印もないもの。そうしましょう」


 二人は飛行魔法を発動し、200メートルほど上空へと上昇した。東西南北の目星はつかないものの、遠くに蠢く魔物の群れが視界に入る。


 接近してみると、それは三本の角を持つ巨大な黒牛の群れだった。干城は魔物図鑑の記憶を巡らせる。——トレノネロテニィ。草食だが気性が荒く、縄張りに侵入したものを攻撃する特性を持つ。その肉は高級食材として高く取引されている。


「そう言えば、牛系の魔物の肉ってまだ食べたことがなかったな。奈津希、あの魔物、図鑑によるとかなりの高級肉らしいよ」

「本当? ……ちょっと待って図鑑を思い出してみるわ。本当ね高級食材ですって。牛系の魔物肉なんて、ぜひ料理に使ってみたいわね」


 二人はあっさりと食欲を優先し、討伐を決めた。


 下降しながら、干城の頭にふと疑問が浮かぶ。討伐すればリポップし、外に出れば物質として一部を除き消滅する、ダンジョンの生物の『命』とは、一体どういう概念なのだろうか。ただの食欲で彼らを狩ることは、無駄な殺生になるのだろうか、と。


 だが、思考に没頭する時間はない。群れはざっと20頭ほど。上空からの急襲で、二人はまず一頭ずつを確実に仕留めた。突如現れた敵に怒り狂い、残るトレノネロテニィが一斉に襲いかかってくる。激しい突進を紙一重でかわしざま、干城は眉間へ正確にアイスバレットを撃ち込み絶命させる。


 倒した端から速やかにインベントリへと格納していき、瞬く間に群れを全滅させた。


 そのあと二人は一頭ずつインベントリから出して魔石と血抜き、ワタ抜きを行い、ダンジョンに吸収される前に解体を終了させた。


 解体が終わった肉1頭分を残留魔力を放出させるため空間収納に移して、ふと思った。


「解体の全体時間で考えれば、ドロップ品を残して消える筈だけど、時間停止のインベントリだとダンジョンに吸収されないんだね」

「そう言えばそうね。その点は時間経過する空間収納だとどうなるのかしら? 検証が必要そうね」


 二人は解体を終え再び空へ上がり、飛行を開始する地上の様子を見る必要があるので速度は時速300キロ程度に落とした。干城は飛行コースとして当てもなく飛ぶよりはと、この階層に来た階段を起点に時計方向へ旋回しながら飛行を続けた。時折魔物の群れを見つければ降りて討伐をした。この階層は食肉になる動物の魔物が多いようで、牛系、ディア系、ボア系、シープ系、など肉や皮、角やシープの羊毛などの採取品も増えていった。


 風魔法のシールドを展開した飛行中なので肉声で会話はできない、奈津希とステータスレブリート(魔導チャット)を使い、脳裏にステータス表示スクリーンが現れ思考をチャットとして文字で意思疎通する。全文を一気に脳に叩き込まれる感じで話すより短い時間で理解できるし、ペネディエルトランサーを併用して画像イメージも送れる。


(元々は飛行中の意思疎通に念話が出来ないかが開発の始まりだったが、慣れると会話より早く意思疎通できて便利なんだよな。外から見ると喋らないのに意思疎通する鉄仮面夫婦かアンドロイドみたいに見えるんだろうな。それはそれで問題大有りだな)


『肉が取れすぎだね、少し加減するべきかな』

『そうね、ダンジョンを出たら肉は消えてしまうんじゃ、食べきれないくらいあるわよね』


『ただ、ここなら刈り倒しても良いのかなとも思うんだよ』

『干城にしては珍しい見解ね。いったいどうしたの?』


『うん、ダンジョンから出たら物質として消滅したり、時間でリポップするダンジョンの魔物の命ってなんだろな? って思ってね』

『ダンジョン生物の命の定義って、干城らしい面倒なことを考えてるのね。それはアタシも答は持ってないわね。アタシはダンジョンとはそういう所と割り切ってるわ』


『相変わらず割り切りが凄いというか、現実的というか』

『哲学は大事よ、でも干城が考えてることって哲学じゃなくて神学論争な性質じゃない? 人それぞれに答があって、誰も確たる正解を持ってないものだと思うのよ』


『うっ……確かに。考えても無駄か。割り切るしかないか』

『無駄とは言わないわ。ただ、答えに辿り着くには時間が足りないってだけよ。頑張れば悟りがひらけるかもよ』


 そんな通話をしていると遠くに巨大な何かが見える、魔力探知をしてみると大きな反応がある。奈津希を見ると気づいてるようで、そちらを見ている。こちらの視線に気づいたのか奈津希がこちらを向いたのでハンドサインで、巨大な何かを指差し向かうことを伝える。奈津希はグッドサインで了承を伝えてきた。


 近づくと巨大な何かは地竜だった。正解かは分からないが表現するなら地竜だろう。四足歩行で手足は太く、頭と鼻に角があり、翼はなく身体は鱗で覆われている。体高は10メートルはあるんじゃないだろうか?


 地竜の付近に降り立ち、奈津希と相談する。といっても答は決まってるようなものだ。


「奈津希、多分避けて通れないと予想するんだけど、どう思う」

「そのとおりでしょうね。ラノベのノリ的に近くにある降り口を護る竜じゃないかしら? 楽しくなってきたわね、遂に竜と対決よ。テンション上がるわ〜」


 やっぱりこうなるか……今更惜しむ命でもない、奈津希が楽しみにしているんだ、いっちょ行くかな。


 さて、どうやって討伐するか。多分奈津希の『天使の聖裁』なら一撃で片がつくんだろうが。そういえば宝箱から小銃を回収したことを思い出した。竜を的に一発だけでも試してみるかと思い立ち、インベントリから小銃を取り出し奈津希に竜を的に試し撃ちさせてと頼み込んだ。駄目だったら対処は奈津希に任せる。


 小銃は二本の脚付きで少し離れるが、丘になってる所に移動した。丘の頂上から脚を使って伏せ撃ちの姿勢をとる。正面に見ている竜は静かに動かず距離は目測で500メートルほど、弾倉や弾丸を装填するところがないが槓桿を引いて発砲準備を始める、照門の距離を500メートルに調定する。照門の中心に照星を合わせ、竜の眉間を照星の頂点に持ってくるよう照準する。安全装置を解除して息を吸って少し吐いて止める。静かに引き金を絞り込む……小銃が発射された。火薬ではないので装薬の爆発音はないが、キュンとそれほど大きくもない音がしたあと、その音が聞こえたことで耳栓してなかったなと思った。火薬の発砲音だったらしばらく耳鳴りがしていたことだろう、危なかったというか助かったと言うべきか。自分の迂闊さを呪うところだった。


 弾? は竜の眉間に命中し竜は斃れた、魔力探知で確認すると絶命しているようだ。


「はっ? 何この威力。小銃だよね、竜を一撃?」

「ちょっと、何? 竜なのに弱すぎない?」


「奈津希、取り敢えず竜の所に行ってみようか」

「そうね、どっちにしろ、あの竜がいた辺りは調べないといけないでしょうし」


 奈津希は出番がなかったことに不満そうにしている。小銃の威力がおかしいと思うより、小銃一発で斃れた竜の弱さに幻滅している風のようだ。竜の元に向かう途中に奈津希は「何なのあの見かけ倒し、チェッって感じ」とか宣っていた。きっと奈津希には強い竜像があったのだろう。


 竜は取り敢えずインベントリに格納して、周辺を捜索すると下の階層に降りる階段を見つけた。階段を護るために竜が居るのかもという奈津希の見立ての正しさが証明された。




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