【第一章】勇者召喚、ただし間違えました
召喚されました。でも勇者じゃないかもしれません。
ハルキの異世界生活、第一章です。
目が覚めたら石の床に倒れていた。
全身が重い。頭が割れそうに痛い。でも不思議と、ゲームをやりすぎた夜明けとは違う種類の痛みだった。
起き上がると、でかい広間にいた。柱が並び、窓から見たことのない色の空が見える。人が大勢いた。みんな変な服を着ていた。甲冑とか、ローブとか。
(……これ、ゲームで見たことある風景だ。)
「目覚められましたか、召喚された勇者よ」
声がした。振り返ると、白いローブを着た女の子が立っていた。年は同じくらい。銀色の髪に、金色の瞳。ゲームのキャラクターみたいにきれいだった。
(俺に話しかけてる。女の子が。俺に。)
動揺した。三年ぶりくらいだった。
「あなたはこの世界に勇者として召喚されました。魔王軍からエルディア王国を救うべく――」
「ちょ、待ってください」
俺は手を挙げた。
「俺、ハルキっていいます。竹中ハルキ。勇者とかじゃなくて、ただの高校生で――成績も最下位に近くて――あの、召喚者、間違えてませんか」
少女は一瞬固まった。それから、困ったように眉を寄せた。
「召喚魔法は……誤作動しません。あなたに確かに〈勇者の素質〉があるはずなのですが」
「ないです。断言できます」
「……」
広間が静まり返った。玉座にいる老いた王様が何か言いたそうに口を開けていた。
俺はとりあえず周囲を見回した。ゲームだったら、ここでステータス画面が出るはずだ。頭の中でコマンドを念じてみた。
何も起きなかった。
(そうだよな。俺に都合のいいことが起きるわけないか。)
――突然、宙に文字が浮かんだ。俺にだけ見えているらしい。透明なウィンドウみたいなやつが。
┌─ 異世界ステータス確認 ─────┐
名前:竹中ハルキ
レベル:1 職業:なし
力:3 素早さ:4 魔力:0 運:1
スキル:【ゲーム知識 Lv.MAX】
※ 勇者適性:測定不能
└─────────────────┘
(……ゲーム知識がMAXって何だよ。それだけかよ。)
でも、運が1というのだけは、なぜか妙に納得した。
「あの……」
少女がまた声をかけてきた。
「その、お名前は……ハルキ、さん、でしたか」
「あ、はい」
「私はシエラと申します。あなたに事情を説明しなければならないのですが……まず、お腹は空いていませんか?」
空いていた。めちゃくちゃ空いていた。
俺は素直に頷いた。女の子に素直に頷けたのは、これまた3年ぶりだった。
シエラは小さく微笑んだ。ゲームのヒロインみたいな、かわいい笑顔だった。
(……異世界は嫌だけど、今日だけは少し、悪くないかもしれない。
読んでいただきありがとうございます。
ハルキはゲームの知識しか持っていませんが、それが少しずつ武器になっていきます。次の章では城の中を案内してもらいながら、ハルキの意外な才能が少しずつ見えてきます。
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