表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の居場所を見つけてください。  作者: 葉方萌生
第五章 かわいい我が子です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/60

◾️九月二十五日——後日Ⅱ

「おそらくですけど……警察はその、怪奇現象のようなものは捜査範囲外だから、みよ子が自分の足で清葉病院に行ったという事実だけを見て、事件性がないと判断したんでしょうね……。今の山吹さんの話を聞いて、警察がそう判断するのはまあ、仕方がないかなと思ったり……」


 正直私も納得はいかない。

 警察は山吹さんの証言を受けて、実際に清葉病院を訪れ、捜査してくれたそうだ。だが、どこにもみよ子の姿は見えなかったという。代わりに、病院の知られざる地下室を見つけ、その部屋に血痕と思われるものがいくつも見受けられたらしい。だが、その血痕からDNA鑑定を行なった結果、みよ子のものではないということだった。

 それ以外、たとえばみよ子の所有物などは何も見つからず、捜査はそこで打ち切られてしまったらしい。


「僕は、諦めきれないんです。藤島さん、妊娠されているとおっしゃっていました。今、彼女がどこかでひとりきりで孤独に耐えているのかと思うと居てもたってもいられなくて。それに、病院だって行かないと、彼女とお腹の子の健康が危ぶまれます。早く見つけてあげないと、藤島さんが——」


「山吹さん」


 私は、焦った様子で話す山吹さんの肩をぽんと軽く叩いた。彼は、取り乱してしまったことに対して恥ずかしさを覚えたのか、「すみません」と小さく謝った。


「いや、私もみよ子の友達ですからすごく心配です。でもその……一つだけ、思ったことがあって」


「なんでしょう?」


「みよ子がその、妊娠しているというのは嘘なんじゃないかと思っているんです」


「嘘……?」


 山吹さんが困惑した表情を浮かべる。私は、考えていたことを彼に伝えた。


「嘘というより、本人も勘違いしているパターンでしょうか。想像妊娠ってご存知ですか? 私も二十日前にみよ子に会った時に、妊娠していると告げられたんです。だけどまだ病院に行っていないと。おかしいですよね。普通、妊娠したと思うならすぐ病院に行くでしょ? 確かに月のものは止まってるって言ってたんですけど、それはストレスや何らかの不調でも止まることがあるんですよ。まあ、完全に嘘とは言い切れないですけれど。だけどみよ子は、ちょっと前にお別れした恋人がいたんです。そのひとのことを好きな気持ちが空回りして、自分は彼との子どもを妊娠していると脳が思い込んでしまっている……私はそう感じました」


「で、でも……藤島さん、確かにここ最近体調が悪そうにしていたんです。あれも嘘だったんでしょうか……?」


「いや、それは本当だったと思います。実際、心理的に強いストレスを感じていたりホルモンバランスが乱れていたりすると体調不良は起きやすいですし、吐き気を覚えることもあるそうです」


「そう……なんですね」


 本当のところはみよ子自身に検査を受けてもらわないと分からない。だが、みよ子には昔から思い込みが激しいところがあった。素直な性格をしているぶん、一度こうだと思い込むとなかなかその考えが抜けないのだ。


「妊娠の件に関しては分かりました。あとひとつ、藤島さんと最後に電話をしている時に、気になることをおっしゃっていたんです」


「気になること?」


「はい。藤島さん、ご両親の養子だったそうです。でも、DNA鑑定の結果は、藤島さんとお母さんの血が繋がっていた……と」


「え?」


 一瞬、どういうことなのか理解することができなかった。山吹さん自身もよく分かっていないようで、困惑した表情を浮かべている。


「いや、正直僕もちょっとよく分からないんですけどね。これも藤島さんの思い込みかもしれないんですけれど。血が繋がっていないはずの母親とDNA鑑定をしたら実の親子だと判定された……。これっていったいどういうことなんでしょうね?」


 山吹さんの言葉が頭の中でぐわんぐわんと揺れては消えていく。

 みよ子が養子だったという事実も驚きだが、それ以上に不可解な結果には、私はどう解釈したらいいのかまったく分からない。


「どういうこと……? ごめんなさい、ちょっとよく意味が分かりません」


「すみません、そうですよね。藤島さん、お母さんが流産していたらしくて。それも、自分の誕生日と出産予定日が同じだった子どもらしいんです。僕は普段、怪異とか心霊とか信じない派なんですけれど、この時ばかりは思ってしまいましたね。もしかしたら、死んでしまった藤島さんのお母さんの子が、藤島みよ子としてこの世に現れたんじゃないかって。清葉病院って産婦人科だったんですよね。そこでお母さんが働いていたと。だから、その場所に“生まれなかった人間の魂”が漂っているなんてことがあるんじゃないかって……。ちょっと妄想も行き過ぎかもしれませんけど、そうとしか考えられなくて」


「……」


 山吹さんの言葉を噛み砕こうと必死に頭を動かす。でもダメだ。そんな怪異がこの世にあるはずがない。だけど、確かにそういうことでなければ、じゃあどうしてみよ子はお母さんと血縁関係があるのかという説明がつかない——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ