第五十七話
勇は咄嗟に動く。相手がかなりの格上だということは頭から吹き飛んでいる。目の前で誰かが死ぬということはさせまいと本能的に感じていた。
「ふっ」
「おわっ」
国の剣で一撃、さらに実家から持ってきたもう一つの高級品を引き抜き素早く二撃目を当ててカイラを鎌ごと弾く。
「やるじゃねえか、てめえがやるか!」
カイラは興奮し舌で口の周りを舐める。
勇は屈曲な冒険者を庇うため連続で攻めていく。二刀流は最高騎士のハリーから教わったオルデオス流でも実家のユーディラド流でも邪道寄りだがやるしかあるまい。
「意外と接近戦も得意かよ…………!」
戦闘力の低さから遠距離から牽制するのみと思われた勇の思ってもない攻撃力にカイラは思ってもないいい獲物と興奮を高める。
「だがよっ」
「うわぁぁぁぁ!」
カイラは勇の剣を弾き鎌にエネルギーを込めて下から大振りに勇自身を切り裂き倒れている屈曲な冒険者より遠くに飛ばす。
「イサミぃ!しっかりなさい!」
リンネが駆け寄り回復魔法をかけていく。
「けっこうやるが、ここまでだな。ああん?」
カイラが勇を追撃しようとすると屈曲な冒険者が立ち上がった。傷の激痛に耐えながら冒険者は宣言する。
「やらせねえよ。貴族ぼっちゃんにこれ以上無茶はさせねえ。俺が壁になるよ」
「勇者の力はどうしたの?あれでどうにかできるんじゃないの?」
リンネは思ったより苦戦した勇に問う。
「あれは、アステリアがいないと駄目なの…………」
「それで勇者様と王女が結婚てわけね」
リンネはことの事態に納得する。
「そうかい。なら、代わりにてめえをしばいてやるよぉ!」
カイラは宣言すると屈曲な冒険者に鎌ではなく回し蹴りでもっていたぶっていく。
やがて勇は傷が浅くなるとゆっくり立ち上がった。
「ねえ、アステリア無しでどうする気なの?」
リンネは勇が死ぬのではとい恐怖を感じる。




