怪異感染 破 ⅩⅩ
この作品はフィクションです。
実際の人物、団体とは一切関係ありません。
「……つまり、どこかに隠された絵画を壊せばあれに勝てると?」
ライザは厄災の倒し方を二人に話した。
「確か先ほどの彼……佐藤さんと戦った少女は自分の体を貫いていましたが?」
「じゃあ場所は自由なんだろ。それこそ自分の体の中だろうがな。隠してんのか、はたまた透過してんのか。とにかく、あの手のを探すのは俺の苦手分野だ」
ライザが立ち上がり、戦災を見る。
「……つーわけで、双葉、お前に任せるぜそーいうのは。その間、俺があれの相手してやるよ」
ライザは腕を鳴らしながら駆け出す。
「ち、ちょっと!?」
「ニーサン、銃弾はもらったし、アンタはとっとと地面にでも身を隠しとくんだな!さっきも言ったけど守れねーぞ、俺たちは!」
「お、おいおい……」
ライザと、すぐさまライザについていく双葉を眺めながら、巡査長は途方に暮れるのだった。
「双葉、突っ込めるか!」
「無茶を!あの量は振り払えないです。どうしてもというなら、もっと薄くしてください!」
ライザの問いに双葉は要求を返す。
「オーケー了解!」
ライザが足を構える。刹那、雷鳴が轟いた。
「“跳雷”!」
ライザの叫ぶ技名とともに、振り抜いた脚から出た雷が骸骨を貫く。
一本が二本に、二本が四本に、跳ねるように増殖しながら次の獲物へと向かっていく雷。
雷がその電荷を失う頃には、手前の大多数が灰に還り、後続の一部も動きが止まっていた。
「おら、お膳立てはここまでだ。信じてるぜ副リーダー」
「ええ、これだけあれば十分です。奥に感じる気配、見つけて見せます!」
双葉がライザの脇を駆け抜ける。
「……“姫乃流剣術、抉騎”」
左、中央、右、体のそれぞれの位置で、剣を振り回し、手を持ち替え、また振り回し……それを繰り返しながら突進する双葉。
その姿は、さながら地下を掘り進むドリルのようだった。
「フン、浅はかな」
戦災が、双葉の前に更なる物量を喚ぶ。
同時に、背後で復活する骸骨に弓を構えさせた。
「殺
「させるかよ!」
戦災が指示を出す瞬間、ライザの拳が戦災を叩き落とした。
「……我を愚弄した罪、万死に値する」
「はっ、人生一度きりだぜ?一万回も死ねねーよ!」
戦災が空にいるライザを睨み、ライザが空から戦災を見下す。
「さぁ、一騎打ちと行こうか、大将さんよ!」
着地したライザが戦災に肉薄する。
「……否」
そして放たれた拳。
それは、幾重にも重なった骨に阻まれていた。
「……否、否、否!大将?笑わせるな、私の最終階級は“元帥”だ!」
周囲の骸骨が戦災に集まる。
「破って見せよ、無謀な童ども!我は『戦災』、この世を戦に染めるものである!」
集まった骸骨は、まるで一つの体をなすかのように、それぞれの巨大な骨を、そして巨大な剣を構成する。
砂漠に、一体の巨人が降り立った。
「……こーいうの、見たことあんな。なんつーんだっけ?えーっと……そう!『がしゃどくろ』だ!」
ゴリラ対妖怪。B級映画にありそうな決戦が、幕を上げた。
「なっ………」
僕は砂漠に聳える巨大な骸骨を呆然と見つめる。
普通の骸骨は数十倒した。正直、もう弾もない。
少ない弾で、骸骨の目が重なる位置を狙って、一発で五は落とした。
時間稼ぎでしかないが、頭を打ち抜くと動きが止まるらしい。
「……帰ったらクビかなぁ」
警部についてここまで来たが、流石に地図にないはずの場所であっても、銃弾の喪失は責任を問われるだろう。
「いや、そもそも帰れないか」
終わりだ。もう誰も助からない。
彼らを置いてきて正解だった。責任とって死ぬのは僕だけでいい。
「ただ、あの子達は……」
前へと走っていった二人。
死ぬ前に事情を聞きたかったけど、きっともう……
「……せめて、なるべく苦しまずに……」
僕は祈りを捧げる。
その時、大きな光が巨大骸骨の前から放たれた。
(………なるほど。銃弾を足場にしたのか)
戦災はライザの足元に転がる薬莢を見つけた。
空中に浮かぶ椅子まで一度で跳びつくのはライザには厳しい。
故に、ライザはもう一段跳んだのだ。
戦災が双葉に気を取られた隙に、まずは一段、雷燃機関込みの全力で。
次に、束ねた弾の、薬莢側を足蹴に、放電で火薬を着火、三発の銃弾が地面に向かって放たれると同時、その反作用により、一瞬だけ宙に浮く足場となった薬莢を踏み込んで、もう一段。
「……名乗りをあげよ。貴様は一騎打ちを要求し、我は名乗った。であれば、そちらも名乗るが道理というもの」
戦災はその工夫に感心しながらも、同時に目の前の存在の異常性に興味を持った。
「道理ねー……アンタにそんなもんはねーだろって言いてーけど、まあいいか」
ライザは拳を握り込む。
「……気繰ライザ。不動山高校2年兼リーダー兼……なんつってたっけ……そう!“剛腕雷双獣”だ」
ライザは構えて名乗りを上げる。
「いくぜ戦災!その骨、全部まとめて粉々にしてやるよ!」
ライザが巨大骸骨に殴りかかる。
バギィ、という音と共に、それは砕け散った。
「……あ?」
ライザが呆気に取られる。事情が飲み込めない。
「……しまった!双葉の方か!」
ライザが意図に気付いた時にはすでに遅かった。
その場に軍服骸骨の姿はない。
「ックソ!」
ライザが前方の軍勢を睨む。
「……なんてな」
そして、笑みを浮かべた。
「……よし、抜けました、リーダー!」
軍勢を抜けた双葉。
しかし、その後ろからはがしゃどくろの腕が伸びている。
「……浅はかな」
「……ぬっ!?」
戦災は寸分の狂いもなく、自分を見る双葉に思わず息を呑む。
「これは戦争なんだろ?何が道理だ、んなモン最初からねーだろ。にも関わらず、見当はずれな方向に走っていく双葉と、一騎打ちなんて宣う俺にアンタは心底こう感じたはずだ。『このマヌケども』ってな。だから見落とした。俺たちの本当の狙いに」
ライザが笑顔で語る。
「アンタが大将か元帥かなんてどーでもいいんだが……それを言ったのは失敗だったな。階級に拘ってるやつはわざわざ前線になんざ出てこねー」
そして、ゆっくりと歩を進め……
「アンタの考え、何となく分かるぜ。軍隊のボスが、リスクのある戦闘は出来ねーよな」
苦虫を噛む戦災。
「なら、守られる側をなんとかするのはジョーセキってやつだ。最もその守られるやつは俺と同じくらい強いけどな。絵画がどこにあるかは知んねーけど……ま、全部壊しゃあどっかにあんだろ」
ライザが脚を、双葉が竹刀を構えた。
「さて、横に逃げる、は無しだぜ。ま、アンタの気配はもう捉えたから逃さねーけどな」
「ぬう……!ならばこうよ!」
戦災が双葉に向かって巨腕を振り下ろす。
それも一つではない。
三本の腕が、双葉を叩き潰そうとその拳を振り下ろした。
「この物量、童如きに捌けまい!」
戦災は得意げに言張る。
「……姫乃流剣術、秘技の四、『生誕祭』」
双葉は抜刀するように竹刀を振る。
もちろんただ振ったわけではない。
手首を回し、特殊な回転を竹刀に与える事で、幾つかの現象を起こした。
「何だと!?」
一つは斬撃を飛ばす事。
バキバキバキバキ……そんな音と共に、腕の骨が砕ける。
何故いくつも音が鳴るのか。それこそが二つ目の現象、斬撃の分裂である。
「由来は……確か、生命の誕生の矛盾を表現した技だとか。元の生物には寿命があり、それより長くは生きられない。しかし、旧き生物から生まれる新しき生物には新たな寿命ができ、歴史は繋がっていく……よく分かりませんが、単に消えずに分裂を続けて、周囲の塵とかを巻き込んで拡大、成長していく斬撃だと思ってもらえれば」
双葉は竹刀を軽く振り払う。
そして、もう自分の仕事は終わったと言わんばかりに竹刀を降ろす。
「ぬ、ぬうううぅぅぅぅ……」
戦災は巨腕を眺める事しかできない。
斬撃は骨に当たると向きを変え、巨腕の中を蠢く。
そうしてスカスカになったその拳は、双葉の雑な最後の一振りで、無惨に砕け散った。
「ク、クソッ」
「よう」
踵を返した戦災を、ライザが捉える。
「これで終わりだ!」
「う、うわああぁ!」
ライザは戦災の腕を掴んで振り回し、地面に叩きつけた。
ガシャーン!という音と共に、戦災だったものは砕け散った。
他の骸骨も砂に還っていく。
「さて、これで……」
「ええ。後は……あの辺りですね」
双葉が再度竹刀を構え、ライザがその場に座り込む。
瞬間、ライザの背後から骨の巨腕が伸びた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
終わっていなかった戦……というところでまた明日です。
姫乃流のお話はまたいつか。彼女が竹刀の扱いに長けている理由は三章の閑話で少し触れています。是非。
それではまた明日!明日も18時更新予定です!




