敵性異次元人
ダイガ兵はすぐに鎮圧された。訊くと、次元トンネル目当てにアレンに潜入して来た少数部隊員で、携行していた特殊な周波数のエネルギーを付与したロケットランチャーを撃ったらそれが次元トンネルの壁に穴を開け、もう1発は次元ポイントにぶつかり、吸収でもされたらしい。
穴の向こうには別次元の世界が広がっていたが、荒涼とした風景で、呼吸に適した空気と液体の水はあるようだし、気温は今の所は30℃前後で安定しているらしい。探査用無人ヘリを飛ばして調査した結果、ヒトや大型の陸生生物は見当たらない。
問題は、テグシナの方だった。
次元の接触面が不安定な時に撃ち込まれたロケットランチャーのせいなのか、次元が現在のところ固定されており、離れる様子はない。テグシナ人との戦闘は、避けられないらしい。
「テグシナの次元折衝ポイント周辺をざっと調べただけだけど、文明的には地球より少し後退したくらいかしら。気温は、45℃からマイナス20℃を行ったり来たり。大気組成は、ここよりも多少窒素が多いわね。全体的に地面の砂漠化が進んでいて、動植物はほとんど見られないわ。唯一が彼らで、大人から子供まで、男女合わせて30人くらいかしら。彼らの言う通りだとすれば、それがテグシナの最期の人類って事になるわね」
ルルカは淡々と報告した。
「滅亡?何があったんだろう?」
紗希が目を見開いて篁文に訊く。
「データが少ないから推測でしかないが、砂漠化、気温、動植物が全体的に絶滅していってる事から、急激な気温の変化でもあったのかな。惑星の軌道がずれるとか、恒星の活動に変化があったとか」
セレエが頷く。
「そんなところかもね。
それより今後だよ。やつらは襲う気満々だし、次元の接触は解けないし」
「30人全てが戦闘可能ではないとしても、死に物狂いでかかって来る事は間違いないであるな。
アクシルと日本に、向かうであるか?」
沢松が真面目な顔で答えた。
「日本は移民の受け入れをすぐにはできない。ましてや、ああも好戦的な種族では、無理だ。なので、トンネルの入り口を固める自衛隊で、流入は阻止する方針だ」
ヨウゼも頷いた。
「アクシルも同じですよ。気の毒とは思いますが、やはり好戦的な考え方が、受け入れが難しいと言わざるを得ませんねえ。それに、世界大戦中で、それどころじゃありません」
パセは、
「地面が丸ごとどうにかなっちゃうなんて、想像できないわ」
と目を白黒させる。
「吾輩も同じであるよ」
ドルメも溜め息をついた。
「移住先か」
篁文は言った。そして、視界の端に開いた穴を見た。
皆も、見ていた。
セレエは、ニンマリと笑った。
「わかったぞ」
無人偵察ヘリからの情報を見ていたルルカがバッと顔をセレエに向けた。
「わかった?」
「ああ!次元トンネルの壁を塞ぐ方法が!たぶん、だけど」
「いえ、上出来よ。大トカゲも戦闘種族も両方相手するなんて冗談じゃないわ」
「早速知らせて来よう!」
セレエとルルカは、いそいそと席を立った。
テグシナ人の生き残りは、大きな建物の地下に身を寄せ合っていた。
食べ物もないし、この先手に入るとも思えない。ここで、新天地に移動しなければ、遠くない未来、他の動物のように絶滅するだろうことは想像に難くない。
「唯一残っていた大トカゲもいなくなったし、明日の食糧も足りないよ」
リーダーであるロイナスに、報告が行く。
「あの世界が現れた事は僥倖だ。何としても、手に入れるぞ。奪え!力こそすべて。負けた者に何か言う資格など無し!」
「おう!」
「全員でかかる。どうせここにいても助からん。全員、向こうに移動させろ」
「しかし、大丈夫か?何か、凄い武器を持っていたぞ」
「それでも、使うのはヒトだ。使う前に殺ればいい。
楽しみだ。やつらはどのくらい楽しませてくれるか」
ロイナスは楽しそうに、うっとりと笑った。
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