侵略宣言するヒト種
侵入者は、ダイガの兵士達だった。
人数は8人で、次元トンネルを警備しているアクシルの兵士にとってはそう強敵ではない。何せ、昏倒させる雄叫びをあげるわけではない。
そちらはアクシル兵に任せ、特殊次元庁は次元の揺らぎに注目する。
「竜?いや、大トカゲであるか?」
子馬ほどはある大きさで、トカゲという名前をつけるには、いくら頭に大をつけたとしても大きすぎるだろうと地球人達は思ったが、ドルメとパセにはなじみがある動物だ。
「淡泊で美味いであるよ」
「皮が防具とかになるのよねえ、あたしのところでは」
「ふうん。地球ではハンドバッグだな」
「どこでも利用されているであるか」
「これはどうかわからないけどね」
言っている間に、それとは別の影も見えて来る。
「ヒト?」
こちらを見て、指さし、何か言い合いながら、警戒しているようだ。
どうも、大トカゲは彼らと戦っていたらしいと、その状況から察せられた。
大トカゲは、いきなり背後に篁文達が現れて戸惑ったようで、鋭い歯が並んだ大きな口を開け、カチカチという威嚇音らしき音を立て始める。
と、横手で大きな音がした。
「何だ!?」
思わずそちらを全員が見た。人が3人くらい並んで通れるくらいの穴が壁に開いて、その向こう側の空間が覗いている。
「別の次元世界!?こんな風になってるの!?」
パセが素っ頓狂な声を上げて、忙しく耳を動かす。
「来るぞ!」
「気を抜くな!」
篁文とショウが注意を促し、次元の向こうの異世界生物に向き直る。
大トカゲは驚くほどのスピードで這い出し、壁に開いた穴に潜り込んで行く。
「早っ!」
キヨが声を上げた。
そして、続いてヒトがゆっくりとこちら側に出て来た。
緊張感が辺りを覆う。
その中で、何か榴弾型の物がヒュウウと音を立ててひしゃげた金属塊のある次元ポイントに飛んで行き、見えない何かにぶつかったかのようにひしゃげ、激しい振動を引き起こして消えた。
篁文達も異世界人達も、眩暈を堪え、戻るのを待つ。
そこで改めて、彼らに接触を試みた。手近な人に翻訳機を差し出し、自分の耳を示す。彼は中央にいたボスっぽい人に伺うような目を向けた。30前くらいの男だ。
彼は篁文に近付いて来ると、翻訳機を受け取り、篁文の耳を見て、同じように自分の耳に装着した。
「こんにちは」
「!驚いたな」
「俺達は、ラクシー人と地球人……まあ、色んな次元の人間です。あなた方は?」
彼はこちらを見廻した。
「我々はテグシナ人。俺はロイナス」
「俺は篁文です。よろしく。
俺達は、友好的な存在と戦うつもりはありません。このまま帰るのであれば、手出しはしません」
ロイナスは、篁文達をもう1度値踏みするような目で眺め、ニヤリと笑った。
「俺達の惑星は滅びかけている。世界は熱に焼かれ、辛うじて生き残ったのはこの集団だけだ」
篁文達が、視線を見交わす。
「新しい土地を探している。お前達の惑星を頂くとちょうどいい」
ロイナスの背後の20人余りが、槍や剣を構え直した。
篁文達も、武器を構え直す。
篁文は、スッと銃を大トカゲに向け、撃った。大トカゲは膨張し、体液を撒き散らして破裂した。
息を呑むテグシナ人達に向かって、再度告げる。
「はいそうですかとは言えませんので。お帰り頂けるとお互いの為にいいと思いますが」
大トカゲの遺体を呆然と見ていたロイナスは、篁文に目を戻して歯を剥き出しにした。
「面白い。力こそすべて。それが我らテグシナの生き方。お前らを皆殺しにして、ここをいただく事に変わりはないわ!
どうせこのままでは滅ぶのみ。ならば、同じ事」
緊張が満ちる。
「我らを舐めない事だな」
ロイナス達はそう言って、一旦テグシナ側に帰った。
この時、皆が思った。これで彼らの意志に関わらず、次元が離れればおしまいだ、と。
しかしそうはならなかったのである。
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