第77話 モノホンの方
「私は、こっちの可愛らしいお嬢ちゃんと結婚させてくれって言ったんだよ?」
「「え?」」
その言葉に俺とアイルは声を上げる。
女性同士ならまだギリ分からなくもないが、幼女のソフィちゃんに結婚を申し込むとか、男女関係なくOUTですね。
うん。アウチです。
「あんたと隣りの亜人さんが夫婦でこの子はあんた達の子供じゃないのか?」
「な!?何を……ぱ、パンツと……ふ……夫婦て……そんな事……まだ……早い……それに……子供だなんて……。」
「何モジモジしてんだ?アイル。」
勘違いにも程がある。
俺とアイルが夫婦で、ソフィちゃんが俺達の子供だと思ったらしい。
アイルは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
いやいや、その前にソフィちゃんと結婚なんてさせるかい!!
まだ俺の野望(ソフィちゃん魔法少女化計画)も始まってもいないのに!!
と言うか……この世界でも、その……女の子同士での、その、あの……ありなんですか!?
「駄目に決まってんでしょ!!」
わっ!びっくりした。アイルが叫ぶ。
え?やっぱり女の子同士じゃダメだよね?って俺の心の声聞いてた?
「この子は私の妹よ!!それにソフィはまだ子供!!駄目に決まってるじゃない!!」
俺の心の声に答えた訳じゃなかったのね。
「え?夫婦じゃないの?あんた達二人の子供じゃないんだ。なーんだ。じゃあ私が攫って行こうかな?こーんなカワイイ子、ほーら高い高―い!!」
「わわわわっわわわぁー!!!」
紫髪のお姉さんはソフィちゃんを抱えて天井スレスレに着く勢いで高い高いされソフィちゃんは叫び声を上げている。
すると数回高い高いされた所で、アイルが飛び出す。
「わわわわわー!!!あっ!」
ガシッ!
「大丈夫?ソフィ?」
「……ありがとう!お姉ちゃん!!」
空中に放り投げられた所を、アイルが軽やかにジャンプしてソフィちゃんをがっちりキャッチして救出した。
なんてイケメンなんだ。アイル様。
そしてアイルが紫髪のお姉さんを睨み付ける。
「あんた……いい加減にしないと……怒るわよ!!」
アイルさん。既にキレてます。
アイルと紫髪お姉さんが顔を突き合わせて火花が散っている。
今にも取っ組み合いのキャットファイトが始まりそうな雰囲気だ……。
……それはそれで見て見たい気もするけども。
ポロリもあるよ的な。
俺がそんな不埒な妄想事を考えていると1人の男の声が辺りに響く。
「はいはい。もうーやめだやめだ。二人とも離れろ。」
そこへこの宿屋の主、ステフさんが二人の間に入り引き離す。
「おめーら、俺の宿で好き放題すんじゃねーよ。特にねーちゃん、こいつら(アイル達)は俺の知り合いでな。こいつらに非がないのは明らかだ。これ以上、事を構える心算なら宿から出て行って貰うぜ。」
ステフおっさんは、低く落ち着いた口調でそう話すが、有無を言わさない程の迫力を感じる。
やっぱこええ。ステフおっさん。
「む……すまなかった。店主。別に事を荒立てようとした訳ではないのだ。許して欲しい。」
あっさり謝罪する紫髪お姉さん。
変態さんかと思ったら、意外と常識人?
「その、何だ……。カワイイ子供を見ると、つい我を忘れて無意識に愛でたくなってしまってな……。すまなかった。お嬢ちゃん。」
紫髪のお姉さんはソフィちゃんにも頭を下げる。
しかしソフィちゃんはまだ膨れっ面だ。
「ムムー。ソフィは子供じゃなーい!!!」
ソフィちゃんは両手を上げてぷんすかと抗議の声を上げる。
どうやら子供扱いされている事に御立腹の様子。
カワイイ。
「ふくれっつらのぷりぷり怒っている顔もきゃっわいいー!!タマラン!!!そーれ!高いたかーい!!」
「わぁ!わわわわわわぁあー!!!」
どうやらそのソフィちゃんのふくれっ面姿もこの紫髪お姉さんには萌え要素だったらしくソフィちゃんを再び抱えて、高い高いが再開される。
うむ。ソフィちゃんはカワイイ。これは紛れもない事実。
うむ。仕方ないがないのだ。
そう。仕方ないのだ。うんうん。
ボコッ!!
「パンツ!!何、一人でニヤつきながら頷いてんの!?」
アイルは俺に1発見舞った後、再び高い高いされているソフィちゃんを回収(助け出し)し、紫髪お姉さんに改めて抗議すると、紫髪お姉さんはアイルにも謝罪していたが……あれは多分、今後もやらかしそうな雰囲気だな。
と言うか、この紫髪お姉さん、何者だよ……。
すると自然と自己紹介の流れになり、紫髪お姉さんが話出す。
「わたしは王都ギルド所属の『カロリー』ってもんだ。気軽にカロリーって呼んでくれ。一応これでも君たちと同じ金級冒険者さ。」
そう言うと、胸元から下げているキラキラ光る真新しそうな金色のギルドプレートを見せると話を続ける。
「君達はこの街を拠点にしているのかい?」
「今は違うけど、これからするつもりだよ!ね!パンツ!!」
アイルは振り返りながら俺を見る。
ピクッ
すると紫髪のお姉さんのカロリーさんが反応して俺へと視線を移す。
アイル……余り人前で名前とか大声で呼ばないで欲しい。
個人情報漏れ漏れじゃないか。これじゃあ多い日も安心できんわ。
後でアイルにも釘を刺しておかなければ。
でも元いた世界でも田舎の祖母や祖父って簡単に孫が今どこどこで何やって~って他人に個人情報をまき散らして話し出すんだよね。
それだけ大らかな時代に生きた人たちだったと諦めてたけどさ。
「……パンツ?君、パンツと言うのか?」
「……はい。そうですけど。何か?」
「そうか。君が……。」
「え?」
「いや、何でもない。」
「あのー、もしかして俺の事、知ってるんですか?」
「……君の事?知らないよ。うん。知らない。」
「離してよぉー!シチューが食べられなーい!」
この紫髪のお姉さんカロリーさん、俺の事を知ってそうな口ぶりだったから尋ねてみたのだが、知らないのか……?
って、ソフィちゃんがカロリーさんに頬ずりされながら抱き着かれていて苦しそうだ。
すると直ぐにアイルがカロリーさんからソフィちゃんを救出する。
カロリーさんは哀しげな表情。
「で?その王都ギルドに所属している冒険者が何でここ(ルク・スエル)に来てるの?」
アイルがソフィちゃんを抱きしめながら、カロリーさんに問いただす。
「んー?別に不自然な事じゃないでしょ?冒険者はあちこちを回って依頼を熟すのが仕事だし。」
「じゃあ、今回は依頼でここに来てるって事?」
「そう言う事だよ。人探しも兼ねてるけどね。」
「人探し?」
「ま、いいじゃないか。あたしはもう昼寝でもするよ。腹も心も満たされたからね。ソフィちゃん!またね!!」
カロリーさんはソフィちゃんに投げキッスをして、2階にある自分の部屋へ戻って行った。
「ったく、何なのよあいつ。変な奴。ソフィ?大丈夫だった?」
「うん。大丈夫だよ!お姉ちゃん。モグモグ。」
アイルはソフィちゃんの事を危惧しているが、ソフィちゃんは特に気にする風でもなく、シチューをモグモグ頬張っている。
カロリーさん、子供大好きなお姉さんって感じだったしな。
子供好きにしても少し過剰な感じではあったが……。
まして結婚させての件の際は、目がマジだったし。
俺の中の『危険人物(変態)リスト』に載せておこう。
※貴重な時間を使いお読み頂きましてありがとう御座います!
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