第73話 獲物への食い付き
「こいつがアイルとソフィの兄貴ねぇ……。ま、詮索はしねぇが、アイルとソフィを死なせる様な行動はするなよ?おめぇさん、まだ冒険者としての経験が足りなそうだしな。」
「はい!餅のロンです!!」
「はぁ?モチノロン?何言ってんだこいつ。ミリィ。こいつやっぱり頭が……」
「大丈夫の筈……だったんですけど……あ、そう言えばゼダンさん?パンツさん達、もうすぐ私達の同僚になる予定ですから、色々と教えてあげて下さいね?」
「……は?同僚?どういうこった!!」
「パンツさんとアイルちゃんとソフィちゃんは、うちの調査隊に所属する事になったんですよ。だからお願いしますね。」
「こいつらが調査隊だと!?調査隊の条件は最低でも白銀級以上の実力がないとなれないんじゃなかったのか!?」
「えぇ。そうなんですけど、ゼダンさんも知っての通り、アイルちゃん達は既に戦闘力だけは白銀級に匹敵しますし、パンツさんもかなりの実力者なので問題ありませんよ。むしろギルマスがスカウトしたぐらいですからね。」
「マジかよ………そこまでなのか?」
ゼダンおっさんは俺の実力をまだ測りきれないのか、訝しげな表情で俺を見ている。
だから顔近いって…。
ヤ○ザ者(に見える)とチューなんてしませんよ?
「……あの、買取査定をして貰って宜しいですか?」
「………あぁ。分かったよ。それで獲物はどこにあるんだ?外か?外にあるなら持って来てくれていいぞ。どうせ角兎だろ?」
俺達が手ぶらなのでそう推測するゼダンのおっさん。
しかし角兎ってよく分かったな。
俺の知らないモンスターも交じってたけど。
「ゼダンちゃん!今日は兎さん以外もたぁ~くさん狩ってきたんだよぉ~!!」
「ほほぉ~そうかソフィ頑張ったんだな!」
そう言いながらソフィちゃんの頭をナデナデして獲物を確認する為に倉庫の外に出るゼダンちゃん。
ソフィちゃんから敬称“ちゃん”づけで呼ばれてるのか……。
見た目完全にヤ○ザなのに……。
「おい!だから獲物はどこだよ。何もねーじゃねぇか!俺をからかってんのか?あぁああん?」
そう言いながらまた俺に絡んでくるゼダンちゃん。
顔近いよ。チューはしないよ?
いや、逆にチューをしたら仲良くなれたりするかな?
ん~……
「ゼダンちゃん!お兄ちゃんの収納魔法に入ってるから外には無いよ~!」
「な!?なに!?収納魔法だと!?へっ!どうせゲイブルが使ってる程度の収納魔法だろ?」
俺が目を閉じて口をすぼめると同時にソフィちゃんがモンスターの在り処を白状した。
もう少しでチュー出来たの……っていやいやいやいや、しちゃダメだ……しちゃダメだ……。
ゲイブルさんはメリッサ村で鍛冶工房を営んでいて、アイル達とパーティを組んでいたおっさん冒険者だ。
希少な冥魔法の使い手だが、魔力が低く収納魔法の容量が少ない事を自虐気味に教えてくれた事がある。
魔力が少なくても十分、便利な魔法だと思うけど。
「ゼダンさん。ここに出していいんですか?」
「………本当に使えるのか?なら倉庫の中で出してくれ。」
ゼダンおっさんは親指で倉庫を指し示して付いて来る様に促す。
付いて行くと、行くとそこには解体用に使用すると思われる畳2畳分ほどのデカい机が6台設置されていた。
隣の机には、先程まで解体中と思われる見た事もない毛むくじゃらのモンスターが横たわっていた。
ラッパを鳴らした時、こいつの解体中だったんだな。
「おし。この机に出してくれ……って、何でおまえまで付いて来るんだよ。もう帰っていいぞ。」
ミリィさんもまだ俺達の付き添って一緒に付いて来ていた。
「いいじゃないですかぁ。またゼダンさんがパンツさんをイジめるかもしれないでしょ?それにどんなモンスターを狩って来たのか興味ありますし!」
「イジめてなんていないだろ!?」
「ではパンツさん。こちらの台に討伐した魔獣を出して頂けますか?」
「分かりました。」
俺はミリィさんに促され、収納魔法を発動し、昨日討伐したてホヤホヤのモンスターを出していく。
まずは角兎さんからっと。
「案の定、角兎か。しかし……綺麗に討伐してるな。アイルもソフィも腕、あげたんじゃねぇか?これ1頭か?」
「いえ、まだありますよ。」
ゼダンちゃんはモンスターの外傷が少ない事に驚いている様子だ。
俺は残りの角兎を取り出し机に出していく。
数は丁度10頭だった。
兎だから10羽?かな?
「パンツさん……こんなに……ランクFとは言え、よくこれだけ一気に倒しましたね‥…。」
「俺が倒した訳じゃないですけどね。アイルとソフィちゃん2人で狩ったんで。」
「たった2人でこれだけの数を!?」
「えへへへぇ~」
ミリィさんが驚いていると、ソフィちゃんも自慢気にエッヘンと腰に手を当て踏ん反り返っている。
いかん。これはアイルの影響を受けいてるな。
「ほう……アイルもソフィも白銀級の実力なのは間違いねぇみてぇだな‥…。これだけか?」
「あ、まだあります。残りは……これですね。」
俺は残りの虎に似た猫?1頭と、ダチョウみたいな鳥を4頭取り出す。
「ちょちょ……おめぇ!これ、ランクD魔獣の『クリープタイガー』じゃねぇか!!」
ゼダンちゃんは虎?を見るなり更に驚いた表情をする。
※クリープタイガー
ランクD魔獣。全身、緑色の体毛に覆われており、草原や密林でのカモフラージュし獲物に気付かれずに忍び寄る事が出来る。
体高3m~5m程度。体重2.0t~4.0t程度
上顎の左右から鋭い牙が伸びており、この牙で噛みつき失血死や首元の骨を砕き得物を狩る。また鋭い爪も強力な武器。
ブラッド・ボアが好物でブラッド・ボアの天敵とされる魔獣。
極稀にユニーク種も確認されており、主に土属性の魔法を使う個体も確認されている。
「しかもこんなに綺麗な状態で……どうやって倒したんだ!?」
「えっとねぇ~、お兄ちゃんが『属性付与』してくれたこれ(杖)で簡単に倒せたよぉ~!」
「な!?なにぃいい!!『属性付与』だとぉ!?おい!優男!!おまえそんな事まで出来るのか!?」
「え、えぇ……まぁ。」
あちゃー。ゼダンちゃん。ソフィちゃんの一言、『属性付与』に食いついちゃった……。
「そ、それで、そのソフィちゃんの杖にはどんな属性付与を!?クリープタイガーを簡単に討伐出来る程の属性付与なんて聞いた事ないですよ!」
ミリィさんまで食いついて来た。
また面倒な事になりそうだ……。
「あー、え~と……『泥沼魔法』ですよ。」
「……え?お兄ちゃん、違うよぉ!底無……むっぐぐぐぐ……」
俺はソフィちゃんの口を咄嗟に塞ぎ、ゼダンおっさんとミリィさんに背を向けて耳元で囁くとエルフ特有の耳がピクピクと動く。
「ソフィちゃん!本当の事を言っちゃダメだよ。」
「え~?何でぇ?」
「第5位階の魔法を付与したなんてギルドに知れたら絶対、めんどくさい事になる……筈!」
「う~ん……でもぉ……。」
「今度王都につれて言ってあげるからさ!ね!?俺の事はなるべく言わない様にして?お願い!!」
「……お兄ちゃんのお願いなら……。うん。わかったぁ。」
ソフィちゃんは本当の事を言えずに少し不満気だが、聞き分けてくれた様だ。
ゴメンねソフィちゃん。今度かわいいコスプレ衣装もプレゼントするからね!
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