第72話 ギルド解体職員
「プォプォオオオオオォオオオオオオオォオオオオオオオ!!!!」
…………!!!!!!
「「「ウルサッ!!」」」
俺はギルドの解体倉庫の入り口にあるラッパの様な呼び鈴アイテムの魔石に魔力を流すと手の平サイズのラッパとは思えない程の途轍もない音量が辺りに鳴り響く。
「ちょ……パンツさん!魔力流しすぎですぅ!!」
ここに案内してくれたギルド受付嬢のミリィさんが耳を抑え呻きながら注意してくる。
だってこんな大音量が鳴るとは思わなかったんだよ……。
魔力を適当に流したのがいけなかったのか?
「おめぇえかぁぁぁ!!!さっきクソ煩いラッパ吹かした奴ぁあああ!!ああぁあん!!!」
すると倉庫の奥から猛ダッシュでこちらに走って来る男が見えた。
「おめぇえうるせぇえんだよ!!どんだけ魔力を込めたらあんな馬鹿でかい音を慣らせるってんだよぉおおお!!!普通に鳴らせば聞こえるっつーんだよぉおお!!!近所迷惑だろうぉがぁぁl!!ああぁん!!?」
俺が魔力を込めすぎたせいなのかラッパが想定外の大きさで鳴り、倉庫内だけではなく、外にまで鳴り響いた様だ。
ラッパ鳴らしただけでそんなに怒らなくても……。
しかし想定外とは言え、やり過ぎたのは俺なので素直に謝っておこう。
「驚かせてしまった様で申し訳ありませんでした。以後、気を付けます。」
俺は頭を下げて謝罪する。
「お、おぉおおん!!………って、わかりゃ―良いんだけどよー。魔獣の解体は繊細な作業なんだぜ!?気を付けろよぉ?」
「ゼダンさん。怒り過ぎじゃないですかぁ?この子、まだ新人さんなんだから優しくして下さいよぉ?」
「あぁあん?新人だぁ?新人の冒険者なんて毎日わんさか登録されてるだろうが。何を今更言ってんだよぉ!それに丁度、モンスターから魔導石を取り出す大事な所だったんだぜ!びっくりして危うく魔導石に傷をつける所だったぜ!!傷一つで価値が下がるんだからよぉ!!!」
へ~そうなのか。
以前、ミリィさんに教えて貰った時に、魔石、魔導石を加工して宝飾品の様にする事もあるので高値で取引されているって言ってたな。
俺も見つけた時には傷をつけない様に気を付けよう。
…………傷付けたとしても、光魔法でチョイチョイと修正しちゃおうかな。ぐへへ。
「あのねぇ、ゼダンさん?この子……パンツさんはギルドに登録してまだ1ヶ月にも満たないのに既に金級の冒険者なんですよ!?」
「はぁ?何だそりゃ?どんな不正をしたらそんな事になんだよぉ!!前もそんな奴いたよなぁ!別の街で素材を盗んでここで売りさばいてランク上げた奴がよぉ!おめぇら、ちゃんと丁寧な仕事してんのかぁ!?あぁぁあん?」
180cmぐらいのゼダンと呼ばれる30台後半と思われる解体職員の厳ついおっさんは、キラリと光る頭皮……つまりハゲ頭を煌めかせ、ギルド制服の袖を捲り上げて右手にはこちらもキラリと光る立派な30cm~40cm程のナイフを持ったままミリィさんに顔を近づけて凄んでいる。
怖い……グラサンでもしてたら完全にあっち系のお方だ……。
でも……羨ましい。
ミリィさんみたいなカワイイ子にあんな自然に顔を近づけられるなんて……。
と言うか、こっちの人、基本的にパーソナルスペースが近いんだよなぁ。
「あ、あの事件は既に解決済ですぅ!それにパンツさんはちゃんと冒険者登録もウチでやりましたし、その際にはギルマスと副ギルマスだって立ち会ってるんですからね!!」
「はぁ?新人冒険者登録に何であいつらが立ち会うんだよ?益々怪しいじゃねぇか?あぁああん?」
するとゼダンのおっさんは今度は俺に顔を近づけて頭から足先まで顔を上下に動かして俺を値踏みする。
「あぁああん?あぁああん?あぁああん?」
「あぁ」で俺の顔をみて、「ああん?」で俺の足元を見ることを繰り返している。
これ完全に恐喝or絡まれている図だ。
『ゆっくりしていっ亭』に初めて訪れた際にもステフおっさんにやられたんだけど、この世界のおっさんはこれをやらないと行けない決まりでもあるのか?
「ちょっとぉ!ゼダンさん!新人さんを苛めないで下さい!パンツさんは普通じゃないんです!!」
「はぁ?普通じゃないって、どういうこった?」
「ゼダンさんも噂聞いた事あるんじゃないですか?6属性全てに魔法適正があってギルマスとも戦闘訓練で互角にやりあった新人冒険者がうちのギルドに登録されたって……。」
「……あぁ。聞いたぞ。直接レト本人からな。あいつが酔っぱらってる時に聞いたから眉唾もんだと思ってたが……レトの奴が言ってた期待の新人がこんな優男の兄ちゃんだってのか!?信じらんねぇな!」
そう言うと再び俺を睨み付ける。
ギルマス……俺が口止めをお願いする前に、随分と噂を拡散してくれたみたいだな。
そうそう。信じなくていいですよ。
俺はこれ以上、目立ちたくないしこんな風に絡まれる事もゴメンなんだから!
女神様からも余り目立つなって言われているし。
それよりも俺の事はどうでもいいから、兎に角ここへ来た本来の話に戻そう。
「俺の事はどうでもいいですけど……それよりもモンスターの買取査定をお願いしたいのですが、宜しいですか?」
「あぁああん?査定?おめぇが狩ったのか?」
「いえ、俺じゃなくて、この子達が狩ったんです。」
「この子?」
俺は隣でお手々を繋いでいるソフィちゃんの方へ視線を移す。
それにつられてハゲヤ〇ザ……ゼダンと呼ばれる解体職員の視線も移動する。
「…………何だ!ソフィじゃねぇか!!居たのかよ!!いつから居た!?」
「最初から居たよぉ!!もおぉ~!!」
ゼダンはソフィちゃんを見つけるとにこやかに話しかける。
視界に入っていなかった事にソフィちゃんは少し御立腹の様子だ。
だってソフィちゃん、机の高さと同じ身長130cmぐらいしかないもんね。
きっとこれから成長するよ!身長だけじゃなくて色んな所も一緒にね!!
「ソフィがいるって事は、アイルもいるのか?」
「お姉ちゃんはお母さんと買い物中だよぉ。今はお兄ちゃんと私で図書館に行って来たんだぁ。」
「お兄ちゃん?おめぇ達に兄貴が居たのか?初耳だぞ?その肝心の兄貴はどこにいるんだよ?」
するとソフィちゃんは俺を見上げてお手々をブンブン降ってくる。
「まさか、この優男が兄貴だってのか!?」
「そーだよぉ!!ね!お兄ちゃん!!」
ソフィちゃんは可愛らしい満面の笑顔で俺を見る。
「あ!?いえ!その、本当の兄って訳じゃないんですよ!?」
「えぇ~!?もうお兄ちゃんはソフィの中では本当のお兄ちゃんだよぉお!!」
ソフィちゃん……!?何て嬉しい事を!!
こんなやらかし気味の俺の事を兄と慕ってくれるなんて……。
俺はソフィちゃんに慕われている事に感激して涙ぐむ。
元いた世界で兄妹なんていなかったし……。
あぁ!なってやるとも!兄ちゃんでも父さんでも調整者にでもなってやるさぁ!!
「はい!!私がソフィちゃんのお兄ちゃんです!!」
「は?おめぇ、今さっき本当の兄じゃないって……。」
「いえ!今なりました!!ついさっき今しがた本当のお兄ちゃんになりました!!」
「おい、ミリィ。こいつ頭大丈夫か?」
「え?えぇ……大丈夫の筈……ですけど……。」
俺の突然の豹変ぶりに戸惑いの表情を見せるゼダンとミリィさん。
何だ二人とも失礼だなぁ。
俺はお兄ちゃんとしてソフィたんを守って行く事をここに誓います!!
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