第64話 男は……。
「もぉおおお~!起きろろぉおぉぉおお!!」
甲高い声が辺りに響き渡ると、俺の布団の上にドスンと何かが落ちて来た。
「グエッ!!おもぉぅぅぅういいい!!」
俺は咄嗟にそれをはねのける。
「わわぁあわわあわァァッ!」
え?悲鳴が聞こえたぞ?
布団から顔を出し、声がした方を確認するとそこにはパンツ丸出しのソフィちゃんが倒れていた。
何度呼んでも起きない俺に業を煮やしたのか、ソフィちゃんが俺の布団の上にダイブしたみたいだ。
「痛いよぉお。お兄ちゃん!!」
「ご、ゴメンゴメン……痛い所とかない?」
「うん、大丈夫!………お兄ちゃん?」
「ん?何?」
「見た?」
「見た?………って何を?」
「………私の……パンツ……。」
……。
………………。
パンツって、俺の事じゃないよね?
やっぱりそっちのパンツだよね?
これはどう答えるのが正解なんだ。
俺の記憶で遊んでいた美少女ゲームの選択肢が突然やって来た……。
想定される選択肢を……。
選択肢①
「うん!見たよ!!カワイイおぱんつだったね!ニッコリ」
「お兄ちゃんのへんたぁぁああぃいいい!!」
ボコー
GAME OVER……
選択肢②
「いや、見てないよ?ニッコリ」
「お兄ちゃんのうそつきぃいいいいい!!」
ボコー
GAME OVER……
選択肢③
「うん!見たよ!でも、もっとカワイイおぱんつを今度一緒に買いに行こうか!!ニッコリ(サムズアップ)」
「お兄ちゃんのいんぐりもんぐりぃいいい!!!!」
ボコー
GAME OVER……
いかん!!①、③の選択肢が被ってるしどちらにしてもGAME OVERだ!!
どーすればいいんだ!?見た?見てない?買いに行く?見た?見てない?買いに行く?何が正解だ!?
「へへへ~お兄ちゃん、残念でしたぁ~。これは見られても平気なパンツなのでしたぁ~。」
そう言いながらソフィちゃんはローブをたくし上げてパンツ?じゃないらしいブルマ見たいな黒のパンツを見せてくる。
俺の記憶の世界でもあったなぁ。
女の子のスカートが捲れてパンツが見えた!!と思ったら、『残念でしたぁ~これ見せパンだから大丈夫なんですぅー!』とか……。
男からしたら、見せパンも普通のパンツも変わりないんだけどなぁ……。
むしろ水着とかもほぼ下着だろあれ。
女性の皆さん、イヤらしい目で見てしまいすみませんでした。
そして有難う御座います。
ありがたやありがたや。
と思ってる間もソフィちゃんはパンツさんにパンツではないパンツを見せ続けている。
ここは大人として、ちゃんと注意してやらねばいかんな。
ソフィちゃんは俺が戸惑っている様が面白い様だ。
「ソフィちゃん。本物のパンツじゃなくても男の人の前でそんな事したらダメだよ?」
「えー?何でぇ?」
「何でって……男は狼なんだよ?」
「狼?男の人ってみんなウェアウルフなの!?お父さんも!?」
「ソフィちゃん。狼ってのは例えだからね……。ソフィちゃんみたいなカワイイ子がそんなはしたない事をしたら男は嬉し………じゃなくて、ソフィちゃんを攫っちゃったりするかもしれないんだから男の前……と言うか、外ではやっちゃダメだよ!!」
「私、攫われちゃうの?」
「そうだよ。」
「じゃあ、私、お兄ちゃんに攫われちゃうの?」
「そうそう………ってそうじゃなくて!」
ソフィちゃんはエルフ特有の長い耳先まで赤くしてモジモジしている。
と言うか、ソフィちゃん。そろそろローブを下ろして。
恥ずかしそうにローブで顔を隠しているけど、見せパン、モロ見えですよ。
ガチャ
「パンツー。そろそろ起き………」
「「「あ……」」」
…………
………………
「こんのぉおおおロリコン変態やろぉおおおおおおおおぉぉぉ!!」
「いや!これはちがっ!!誤解ぃーーーーーー」
ぼこーーーーーーーん!!!!
早朝目覚めの一撃をアイル様から頂き、俺の1日が始まった。
早朝の誤解をソフィちゃんに解いて貰い、俺達は昨夜、光・土魔法で属性付与した武器の効果確認をする為に、村からほど近い草原にやってきた。
ここはランクFの比較的弱いモンスターが出没するらしく、腕鳴らしで訪れる駆け出し冒険者も多いと朝食中にガガンさんから教えて貰っていたのだ。
『腕慣らしにもならないわよ?きっと。』とアイルは不満そうだったが、『早く行こう!!』とソフィちゃんは兎に角、新しいおもちゃ(杖)の効果を試したくてウズウズしていた。
ソフィちゃんは朝食もソコソコに玄関前で待機している。
まるでゲートが開く前の競走馬みたいだ。
朝食を終えた後、ガガンさんと一緒に出勤して、村の中心部で別れた後、俺達3人は村を南下してこの草原まで歩いて来た。
遠目に村の入り口が確認出来る。
恐らく1km程歩いただろうか。
「村からこんな近い所でモンスターが出るのか?」
「モンスターと言っても、ほぼ普通の動物よ?野良の兎とか猫とか犬とか鳥が魔力を持ってしまってモンスター化した様な奴。」
アイルは退屈そうにそう話す。
アイル的には余程、相手にならないモンスター達らしい。
ランクDのモンスターを倒すぐらいだから当然と言えば当然か。
「でも鳥さんとか兎さんとか美味しいよね~!」
「そうね。昨日の夕食で食べた鳥もここで取れた鳥だよ?」
「え?そうだったの!?」
昨夜の夕食は、鳥の胸肉の塩胡椒炒めだった。
俺が買ってきた胡椒を使って久々にファミレスに出て来るグリルチキンに近い物が出てきたのだ。油が乗っていて非常に十三……ジューシーで美味しかったなぁ……。
「へー。しかしモンスターも色々いるんだなぁ。」
「お父さんも言ってたけど、ここはランクFの弱いモンスターばかりだけど、でも偶に、ほんとーに偶に、滅多にないんだけど稀に、マゾン草原から移動して来た高ランクのモンスターが出て来る事もあるから油断は禁物だけどね。」
………。
それ言っちゃいけない奴じゃない?
フラグびんびんに立てるね。アイルさん。
「ここら辺では大体、4、5種類のモンスターが出るんだぁ!ほら!あれもそうだよ!」
ソフィちゃんが指さす先に兎が1匹、ぴょんぴょんと言うか、ドスンドスンと跳ねていた。
その額には1~2m程度の角が生えている。
俺の知っている世界の動物で言えば、大きさはライオンぐらいの大きさの兎だからデカいな。でもモッフモフだ。
しかしあんな角で一突きされたら普通の人間なら間違いなくあの世行きだろう。
あれがランクF(最弱モンスター)ってんだからこの世界は恐ろしいな。
※角兎
ランクF魔獣。体高1.5m~3m程度。体重1.0t~4.0t程度
特徴的な角(1m~2mほど)で刺突攻撃を仕掛けて来るモンスター。
敏捷性に優れており見かけは鈍重そうに見えるが、戦闘時には水魔法第2位階魔法の身体強化魔法を自身に掛けて敏捷性、攻撃力を上げる個体もいる。
「じゃぁ、ソフィ。あの角兎で試そうか。ソフィの『泥沼魔法』を試すには丁度いいかもしれないよ?」
「うん!分かったぁ!じゃぁ行って来るー!!」
ソフィはそう答えると、トテトテと角兎に向かって走って行った。
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