第42話 メリッサ村
メリッサ村への帰路の道中、初日にブラッド・ボアと遭遇した以外の4日間、特にモンスターや盗賊などの連中と会う事もなく無事に俺達はメリッサ村に帰り着いた。
俺達はメリッサ村に入り暫く進むと十字路に差しかかる。
「よし。依頼完了だな。世話になったな!パンツ兄ちゃん、お嬢ちゃん達!」
「いえ、シェール、エチルさん、カバールさん、ジン、こちらこそこの5日間の護衛、本当に助かりました。有難う御座いました。」
「な~に、別に良いって事よ。兄ちゃんと嬢ちゃん達は俺達の命の恩人だ!
気にする事ねぇよ今度会う時は兄ちゃん達がピンチの時に俺たちが颯爽と助けに現れる時だな!!そん時は俺たちも白金級に上がってもう少しマシになってるだろうぜ!」
ジンがシェールの肩に肘を掛け、ウィンクしながら陽気にそう答える。
「で、4人はこれからどうするの?」
「取りあえず、今日はここで1泊して装備品を補給してから明日マゾン草原に行こうかと思ってる。この村で今日はのんびりするよ。この村で美味いも食ってな!」
アイルが今後、4人の動向について尋ねるとシェールが答える。
このメリッサ村、『村』なので寂れているイメージを持たれるかもしれないが、
この村はマゾン草原から一番近い村であり、マゾン草原でモンスター討伐金、経験値目当ての冒険者達がここで最後の補給物資や武器類の整備の為に訪れるのでかなり活況な村で栄えているのだ。
「俺達は王都ギルドに所属しているから、もし寄る事があればギルドにも寄ってくれ。改めてお礼させて貰うからまた会おうぜ!」
そうして俺達はお互いに握手を交わし再び会う事を誓いそこで別れる。
太陽の風の4人と別れた俺達はアイルとソフィ実家へ馬車を進めていく。
気さくで面白い連中だったな。
またどこかで会えるといいな。
「お~!アイルじゃないか!無事に帰って来たか!良かった!!」
声をかけて来たのはこの村でアイルとパーティを組んでいた『ゲイブル』さんだ。
「うん!ただいま!当然、無事に帰ってきましたよ!!フッフッフ……。」
アイルは不敵に笑みを浮かべ大きな胸を突出し右手首の金色のプレートをこれでもかと言う程見せびらかしている。
「……?お?それ、まさか……」
「フッフッフ……そう。そうよ!!」
「……おまえ、またおっぱいデカくなったんじゃねぇか!?食い過ぎだろ!!」
「ちっがーーーーう!!見るとこ違うでしょ!こっち!!」
「痛い、痛い!アイル痛いって!目が!メガァァァァ!!!」
アイルはぷんすかしながら手首のギルドプレートをゲイブルの目に擦り付けている。
それじゃ逆に見えないだろ……。
「わーてっるよ!遂に金級に昇格したのか。ソフィもか?」
「そうだよぉ~!へへへ~。ほらほら~。」
ソフィちゃんも首に下げている金色のプレートをヒラヒラさせている。
「そうか。これでおまえ達も一人前の冒険者だな。俺達がいないと森で迷っていたアイル達が金級かぁ。」
「む……ま、まぁ確かに今回はパンツのお蔭だったのは認めるけどさ……。」
「パンツ、良くアイル達を守ってくれたな。同じ村民として礼を言う。
やはり君を一緒にいかせて良かったよ。」
「いえ、俺も色んな経験させて頂いたので良い旅でした。こちらこそ有難う御座いました。」
「ほんと、今までの旅と違って内容の濃い旅だったわね。ソフィ?」
「うん!お姉ちゃん!ソフィも楽しかったぁ!また行こうね!お姉ちゃん!お兄ちゃん!」
アイルは少しお疲れ気味だがソフィちゃんは元気一杯。
ホント、子供は元気だなぁ。
しかしアイルが言う様に、今回の旅の目的はウェアウルフの換金だけで終わる筈が俺のギルド登録から初依頼。そこから唐突なキラーアント討伐、太陽の風の救出劇にステフおっさんやギルマス、騎士団との出会いもあったり、初めて魔法を使える様になったりギガパイさん討伐したり、グリフォン便見に行ったり中々の面白い旅だった。
ゲイブルと別れた俺達はアイルとソフィちゃんの実家へ帰り付く。
「「たっだいまぁ!!」」
「アイル!ソフィ!おかえり!!無事で良かったよぉ!!」
玄関を開け家の中に入ると、そこにはアイル達の育ての母親の『コフィ』さんが出迎るやいなや、涙を流しながらアイルとソフィちゃんを強く抱きしめた。
「良かった。ホント良かった。無事だったんだねぇ……。」
「むぐぐ……おかぁさーん、いたぁーい。」
「え?ど、どうしたの?お母さん。」
「だって昨日来た商人連中が『ギガント・パイソンとドラゴンの戦いがあって、
ルク・スエルの街半分が吹き飛んだ!』とか言ってたからさぁ……。
心配だったんだよぉ。」
「「「えぇぇぇぇえ!?」」」
俺たち3人は同時に素頓狂な声を上げる。
コフィさんの安堵の仕方が尋常じゃない事を怪訝に思ったアイルが尋ねると、
俺達が向かった先の街、ルク・スエルの半分が無くなったと言う噂がこの村に出回っているらしい。
とんでもないデマだな。
アイルがその情報は間違いである事を説明するとコフィさんも胸を撫で下ろして安心していた。
「ルク・スエルにはステフ達もいるだろ?心配だったんだよ。全く、また商人どもがまた話を盛ってたのかい……。しょうがない連中だよ。」
商人連中は世界を巡っている為、商品を見て貰う掴みの話のネタとして各地で起きた事件、事故、ロマンスの類の話で人々を惹きつける術を持っているらしく、今回の騒動もかなり話を盛られて広められた様だ。
本当の所、ギガパイさんが街の周辺をうろちょろお散歩していたら俺が適当に放った魔法が不幸?にも偶然当った事で亡くなってしまい、ルク・スエルの外壁も壊してしまったのだが……。
それにあのギガパイさん……番だと言ってたからもしかしたら新婚さんだったかもしれない……。ギガパイパイさん……ごめんなさい……。
バタン!!
けたたましい音を立てて玄関の扉が開くと、そこにはアイル達の育てのもう一人の親、ガガン村長が立っていた。
「アイル!ソフィ!無事だったか!!」
「「お父さん!!」」
ガガン村長もコフィさんと同様に2人を強く抱擁してお互いの無事を確認しあっている。
家族っていいね。
俺の記憶の世界で、俺はこれ程心配された事があっただろうか……。
両親が他界した後、兄妹もいない俺は親戚とも親交が無くなり殆ど1人で生活し、それが普通の生活だったし何とも思っていなかったが……、こうやって目の前で見せつけられると家族がいる事が少し羨ましいな。
俺がそう1人で佇んでいると、ガガン村長がこちらにやって来る。
「パンツ君。娘たちをよく守ってくれたね。本当に有難う!」
ガバッ!
「ヒッ!」
ガガン村長はそういうや俺にまで抱擁して来た。
まさか抱き着かれるなんて想定していなっかったので変な声だしちまった……。
………。
……………。
……………………。
そろそろ離してほしい。
長くない?
「あの……ガガンさん?そろそろ……。」
「ん?あぁあ!すまんすまん!パンツ君、結構イイ身体してるな!!」
え!?
こっちの世界はそっちも有りなのか!?
二刀流が当然の世界なのか!?やだぁ!!
俺は咄嗟にガガンさんから離れて腕を交差させて身体を守る。
「お父さん!多分パンツが勘違いしてるよ……。」
「ん?あぁ!そう言う意味じゃないぞ!!見た目と違って意外と鍛えられとるなって事だぞ!ワシもそっちの気はないわい!!」
顔を赤くしてツッコミいれてるアイルもカワイイね!
ガガン村長が少し恥じらってるのが気になるけど……。
「でも、お父さん、まだ仕事中じゃないの?」
「お前たちの馬車を見たって聞いての、居ても経ってもいられなくて帰って来た!詳しい話はまた夜聞かせてくれい。儂はまだ村長の仕事が残ってるからのぅ。」
そう言い残してガガン村長は村の中心部に帰って行った。
その後、俺達は晩飯の時間まで旅の疲れを癒す為にそれぞれの部屋に戻る事にした。
ありがたい事に俺は以前、使わせて貰った客室をそのまま使わせて頂けるとの事。
ほんと、助かります。
しかしこのままアイルの実家を拠点にする訳にもいかないし、元おっさんはおっさんらしく独り立ちせねばいかんな……。
ギルドの調査隊に参加する事になればルク・スエルを拠点にする事になるのかな?
そうこうしている内に夜になり、ガガン村長が帰宅すると、俺がこの村で最初来た時に連れてこられたログハウスの集会所に皆集まりどうやらここで旅の報告ついでに宴会が開かれる様だ。
「はい!みんなが酔っぱらう前に!これがウェアウルフの討伐金!!」
「こ、こんなに!?いいのかい?」
「いいんだよ!」
「で、でも肝心のお前達の取り分が一番少ないじゃないか……。」
宴会が始まる前に、アイルがウェアウルフの討伐金をゲイブル達と遺族に渡して回っていたのだが、遺族への分配金は大目に渡していたのだ。
「私達は大丈夫よ!」
「大丈夫よぉ!」
「何たって私達は………金級冒険者だしね!!これからバンバン稼いでやるんだから!!」
「だからぁ!!」
アイルとソフィちゃんがフンスと鼻を鳴らしながら腕組みしてふんぞり返っている。
集会所に集まった村人達が『おおおぉ~!』と感嘆の声を上げている。
その声を聴くとアイルが更に踏ん反り返り、今にも一人バックドロップしそうな勢いだ。ソフィちゃんもアイルの真似をして踏ん反り返っている。
……ソフィちゃん。お姉ちゃんのダメな所は真似しなくていいんだよ?
そしてアイルから今回の旅の報告と言う名の飲み会が開始される。
街に着く前に盗賊を撃退した事、俺がステフおっさんに絡まれた事、キラーアントに襲われている冒険者を救った事、ギガパイさんとの戦闘やら王国騎士団団長と一緒に調査に向かった事などアイルが身振り手振りで話している。
王国騎士団団長のラシュリー様の話になると更に盛り上がる。
ラシュリー様、やっぱり人気あるんだな。
「アイル、調査隊の事、いつ話すんだ?」
「明日の朝にしようと思ってる。今日は皆楽しそうだしね。」
そうしてその夜は更けていった。
そろそろ第一章完結出来そうです。
思いのほか長編作品になっておりますがお付き合い頂きましてありがとう御座います!
また重ねてブクマ登録、ありがとうございます!!
今後とも誤字・脱字・評価・ブクマ等して下さるととても嬉しいです!
感想など頂ければ作品の方向性の参考にもなりますのでよろしくお願いします。




