第34話 昇格
「こいつと先にドラゴンに倒されたギガントパイソンは番だった可能性が高いですね。」
「うむ。と言う事はこの周辺に他の個体のギガントパイソンはいなくなったと言う事か。」
「はい。恐らくですが……。」
「結局ドラゴンの痕跡は確認出来ず……か。」
「既にこの地にいない可能性もあります。ドラゴンの飛行能力であれば1日もあれば違う国への移動も容易い事ですので……。」
「そうだな。」
御付騎士のアルボレートとラシュリーはお互いの意見を交換しあう。
「レト、リッター。我々はこの事を王都へ報告しようと思う。ギルドはこの死骸の処分を頼めないだろうか。このまま放置すると他のモンスターが寄って来てしまうからな。報奨金も王国から出す。」
「分かりました。閣下。ではギルドで処分致します。」
「よろしく頼んだぞ。お前達も分かっていると思うが、ドラゴンがまだこの地域にいる可能性も否定出来ない。我々の駐屯騎士団も周囲警戒を厳にする様に指示はするが、ギルドの協力もお願いする。」
「はっ!」
そうして俺たちは街への帰路に着いた。
街の入り口で騎士団とは別れ、ギルマス達と『太陽の風』の4人、俺達3人は一旦、ギルドへ戻る事にした。
「今回の報告書は俺が作成するからお前たちはこれで帰っていいぞ。」
「マジ?良かったぁ。報告書の作成が一番めんどくさいんだよなぁ。」
ギルマスのレトが報告書免除の旨伝えると、シェールが安堵の表情でそう呟く。
「おい。勘違いするな。2体目は俺達が報告するが、1体目はおまえ達が報告書作れよ?」
「えええぇ!めんどくせぇぇ!!」
「ならギガントパイソンの鱗と肉の換金はしないからな。」
「そ、そんなあぁ……。」
シェールはションボリして俯いてしまった。
他の3人はシェールを慰めている。
どうやら報告書作成はリーダーの役割らしいな。頑張れリーダー(仮)。
本当の『リーダー』に戻れるその日まで!!
そう言えば、ギガパイさんの鱗とか勝手に剥ぎ取ってるけど問題ないのか?
少し気になった小心者の俺は聞いてみる。
「ギルマス。ギガパイの鱗とか肉とか剥ぎ取ってますけど換金しちゃっていいんですか?」
「ん?1体目の方なら別にかまわんぞ。第一発見者はおまえ達とあいつら(太陽の風)だしな。2体目は全てギルドで解体して他に卸す予定だ。」
……2体目、あいつら(太陽の風)勝手に鱗剥がしてたけどいいのかな……。
「それに俺達も討伐報酬は王国から頂くし。心配すんな。それにあんな大物2体なんて街に持ち込めないからな。解体するにしてもウチの解体職員総出で出向かなきゃいかんし大仕事だぜ。」
ギルドはまだまだ忙しらしいな。
お疲れ様です。
「アイル、俺達も宿に帰ろうか。」
「ん~ちょっと待って、キラーアントの討伐報酬の為の報告書作るから待ってて。先に帰っててもいいけど?」
報告書の作成か……。今後、俺も作る事があるかもしれない……って俺、字が読めないし書けないんだった。(苦笑)自動翻訳とかしてくれないかなぁ……。
(天の声:翻訳機能を認識……更新しました。)
ん!?久しぶりに聞こえたぞ!天の声!!
翻訳機能を認識?……って事は……。
試しにギルドの依頼掲示板を覗いてみると、文字が読めた……。
何なんだ。この機能。今更ではあるけど便利だけど怖い。
このチート能力、どこまで出来るのかまだまだ未知数だ。
「アイル、俺も付き合うよ。報告書の作り方とか教えてくれないか?」
「え?でもパンツは字が読めないんじゃなかったっけ?」
「ん~……。何となく?読める様に?なったから?問題ない?って言うか?」
「だから何で頭を一々傾けながら疑問形で答えるのよ。ホントに読める様になったの?何で?」
…………。
………………。
「………シュギョウシタカラ。」
「あっ、もういいわ。」
「え?」
「パンツの事だから少しの事じゃ驚かないわ。」
何か、アイル……半ば諦めみたいな……俺に対して達観してる感じだな。
俺としては深く追求されなくてありがたいけど。
そして俺はアイルに報告書の作成方法を教わりながらキラーアント討伐の報告書を提出してギルドを後にし宿へと帰る。
換金は報告書が受理された後に支払われるらしい。
「帰りましたぁ~。」
俺たちがルク・スエルに帰った来たのはその日の夕刻だった。
アイルが元気よく宿の扉を開けるとステフのおっさんがカウンターで宿泊客の応対をしている所だった。
「おっ!今日は無事に帰って来たか。」
俺たちが宿の待合室にいると客の応対が終わったステフおっさんが飲み物を持ってこちらにやってきた。
勿論、酒じゃないですよ?
「おう、どうだった?調査の方は?」
ステフおっさんがトレーに乗せた白湯を俺たちに配りながら聞いてくる。
「凄かったよぉ!!リッターさんがかっこよかったぁ!!大きくなったら私もリッターさんみたいな剣士になりたい!!」
「……?リッターって副ギルマスの事だろ?何があったんだ?」
ソフィちゃんが開口一番に興奮気味に話す為、ステフおっさんは要領を得ない表情でアイルと俺を交互に見て説明を求める。
「えっとね。調査に行った先でまたギガントパイソンが現れたの。しかもユニーク種(突然変異)の奴が。」
「……!?何?」
アイルのその一言でステフのおっさんの表情が強張る。
「で、大丈夫だったのか!?」
「大丈夫だったからこうしているんじゃない。(笑)」
「あ……まぁ、そうだが、怪我とかなかったのか?そいつは倒したのか?」
ステフおっさんはまだ心配顔のままソフィちゃんの頭を撫でながらそう話す。
「うん!!怪我もしてないしギガントパイソンはギルマスとリッターさんが倒したよぉ~!!」
「ほぅ、あいつらが倒したのか。金緑石級が二人いれば余裕か。」
「でも最終的に止めを刺したのは騎士団長様だったけどねぇ。」
「騎士団長?」
「そ!オースフィギス王国騎士団団長のラシュリー様と一緒に調査したんだよ!凄くない!?自慢できるよ!!」
「……成程、そういう事だったのか。それならギガントパイソンなんぞ余裕で倒せたろ?」
「騎士団長の事、知ってるの?素手でギガパイの頭をパカーン!!って粉砕よぉ!!」
アイルが身振り手振りで説明してる。アイルもどうやらギガントパイソンの事を『ギガパイ』と呼ぶ事にしたらしい。
「リッターさんの方が凄かったよ!!」
「あ~確かに。リッターさんもカッコよかったよね!」
ソフィちゃんはすっかりリッターさん派閥だな。アイルもそれに同意する。
俺もですぞ?ムフフ。
「でも結局、ドラゴンの痕跡も見つからなくて有耶無耶になりそう……。ね?パンツさん?」
「え?そ、そうだね。結局、ドラゴンは見つからなかったな。」
意味深な視線を俺に向けてくるアイルさん。
俺がやらかしたからってそんな悪戯っぽい笑みを浮かべながら見ないでほしい。
「ドラゴンは居なかったのか……。そうか。それなら良かったな。居たら俺がボコボコにしてやったのになぁ!!ガハハハハハッ!!」
「アハハハハ!そうだね!おじさんなら倒しちゃいそう!(笑)」
ボスッ!
ステフおっさんが二の腕に力こぶを作りながら冗談を飛ばすとアイルがステフおっさんのシックスパックの腹部にパンチを叩きこみなが楽しげに返す。
ステフおっさんなら本当に倒しちゃいそう……(笑)
翌日、キラーアントとギガパイさんの鱗と肉の換金の為、再びギルドを訪れると、結局、1匹目のギガントパイソン殺害・外壁破壊事件の首謀者は居る筈のないドラゴン(仮)さんの仕業と言う事で解決する事になったとギルド受付嬢Aミリィさんが教えてくれた。
どうやらバレずに済んだみたい。良かった良かった。
「あっ!アイルちゃん!ちょっとギルマスが呼んでるから時間作れない?パンツさんも一緒に。」
「え?ギルマスが?」
俺とアイルは顔を見合わせる。
「ええ。大丈夫だけど、何だろ?」
「アイル、何かやらかしたのか?」
「何もしてないわよ!やらかしたのはパンツでしょ!?あ~あ、言っちゃおーかなぁ?外壁壊したのはパンツさんですよぉ~って。」
「ごめんなさい!アイル様!!」
クッ……弱みを握られてしまった。不覚……。
ギルマス応接室4階
俺達3人はミリィさんに連れられてギルマスの応接室へ移動する。
「すまないな。いきなり呼びつけてしまって。」
「いえ、構いませんけど、どうしたんですか?」
「キラーアントの報告書を読まして貰ったが、その、パンツ兄ちゃんがキラーアントを一撃で倒したとかホントなのか?」
「はい。……ってギルマス!私の報告書出す度に確認するって私を信用してないからですか!?」
「いや、そう言う訳じゃないんだが、信じられない報告書なもんでな……。一応、確認の為だ。」
ギルマスのレトはアイルに詰め寄られてタジタジになっている。
俺なら直ぐにチューするのに。成功した事はないけど。
「まぁ、しかしパンツ兄ちゃんだし不思議でもないか……。魔法全属性持ちでランクC魔獣のウェアウルフを素手で討伐するぐらいだしな。ランクDのキラーアント討伐なんて朝飯前か。」
「しかし殆どはソフィちゃんの魔法で止めを刺した様なものですけどね。」
そう、ソフィちゃんの広範囲炎突風魔法でランクD魔獣のキラーアント20匹以上を一網打尽にして倒してしまったんだからな。
俺なんて4~5匹倒した程度だ。アイルも2匹討伐していたし。
「ま、そうなんだが……異例ではあるが俺はパンツ兄ちゃんを飛び級で金級に昇格させたいと思っている。」
「「「え!?」」」
俺達3人同時に声を上げてしまった。
それもそうだ。まだギルドに登録してから1週間も経っていないのに貝殻級から金級昇格なんて驚くのも無理もない。
「実力的にも実績的にも申し分ない。むしろ貝殻級で活動される方がおかしな事になっちまう。ギルドの評価にも疑いが向けられちまうしな。俺は白金級でもいいと言ったんだが、リッターに止められてな。」
「流石にギルド登録されて1週間も経たない冒険者をいきなり白金級認定してしまうと癒着や賄賂の疑いを王都ギルドや事情を知らない他の冒険者達から指摘されかねませんからね。私も本当は筋肉バカ……ギルマスと同じ意見ではあるのですが、パンツさん、すみません。」
「いえいえ!どんでもない!金級に昇格して頂けるなんてありがたいですよ。」
「お兄ちゃん!凄い!!」
「やったわね!パンツ!!流石!私のパーティ仲間なだけあるわ!!」
アイルとソフィちゃんも喜色満面で喜んでくれてるみたいだ。
妬みとか嫉みとかないのかな?
「アイル、ソフィちゃん、いいの?」
「「え?何が?」」
「俺が1週間も経たずに金級なんかになっちゃって。アイルとソフィちゃんは1年以上、銀級で頑張ってつい先日、やっと金級にあがったばかりなのに……。」
「そんな事を気にしてるの?全然、問題ないわよ!それに私達が金級に上がれたのもパンツのお蔭みたいなもんだし……。むしろ感謝してるよ。」
ソフィちゃんも頷いている。
ええ子や!!やっぱりアイルとソフィちゃんええ子過ぎる!!
俺は感極まって溜まらず2人に抱き着いてしまう。
「え!ちょっ……と!!」
「むぎゅぅ……。」
「ありがとう……!アイルとソフィちゃんが居なかったら今こうして一緒にギルドで活動なんて出来てなかった。ほんと……二人には感謝してる!ありがとう!」
「………。分かったからちょっと離して……。恥ずかしいじゃない……///。」
アイルは顔お真っ赤にして俺を引き剥がそうとする。
ソフィちゃんは小さな手で抱き着き返している。
「おまえら、そう言うのは俺達がいない所でやってくんねぇか?」
レトがニヤニヤ笑いながらそう冷かして来る。
「////いや、ギルマス!!そんなんじゃないから!!」
アイルは俺は引き剥がすと視線を外す様にそっぽを向いてしまった。
ソフィちゃんはまだ俺の腰の辺りに抱き着いている。
「へへぇ。お兄ちゃん!これからもソフィと一緒に冒険してくれるんだよね!?」
「あぁ!当たりまえじゃないか!こちらこそ宜しく頼むよ!ソフィちゃん!」
俺はソフィちゃんを抱え上げる。
「チュッ」
「……!?」
ソフィちゃんはいきなり俺の頬にキスをして再び俺に抱き着く。
アイルは驚愕の表情で固まってしまった。
「…………ええぇ!!」
「パンツお兄ちゃん、これかも宜しくお願いします。///」
子供の無邪気さはホントに……ソフィちゃんたら、おませさんだなぁ。
ははははッ……はっ!!殺気!!
「ぷあぁぁぁんつぅぅうううう……。」
「え?え?俺!?」
「こんの、ぶあぁぁぁかかぁぁあぁぁぁっぁ!!」
ボコーッ!!
「おごぉおおおおぉぉ!!」
俺はアイルのコークスクリューパンチをまともに食らい回転しながらギルマスの部屋の窓を突き破り外に吹っ飛んで行った。
「あのさぁ、君たち……一応、ここギルドマスターの応接室って事忘れてない?」
レトが呆れ気味にそう呟いた。
ブクマ登録、ありがとうございます!!
今後とも誤字・脱字・評価・ブクマ等して下さるととても嬉しいです!
感想などいただければ作品の方向性の参考にもなりますのでよろしくお願いします。




