第12話 報告書
ギルドマスター応接間……
「おお、来たか!」
部屋に入るとそこには応接セットにギルドマスターのレト、副ギルドマスターのリッターと報告を終えたと思われるアイルが座っていた。
「パンツ!話聞いたよ!!全属性持ちって…武闘家じゃなかったの!?」
「んー?そー言えば武闘家って報告書にあったな…。」
レトがアイルの報告書を捲りながらそう呟く。
「えぇ…先ほど話した様に、ウェアウルフ襲撃の際、パンツが撃退した際には武闘家だと言っていたので…。」
あぁ…そう言えばそんな設定にしてたな…。ポリポリ…。
「いや、その、全属性持ちって事は俺もついさっき分かった事だし、山奥でずっと修行していたのでその…属性の事は全く知りませんでした…。」
「ふぅん。しかしこの報告書の内容、何度読み返しても俄かに信じられないな…。
冗談じゃないかと笑いそうになるレベルだ。
レベル上げの為、マゾン草原で野営している所にウェアウルフの野盗と思われる10体以上の集団に襲撃される。
その野盗集団をその場で仲間となったパンツと言う男と協力して6体のウェアウルフを討伐した…。
残りは逃亡…と。
パンツと言う男は素手でウェアウルフを討伐…この兄ちゃんが…?」
レトは報告書と俺を見比べながら胡乱な眼を俺に向けてくる。
「本当に間違いないのか?」
「はい。間違いありません。」
アイルは即座に返答する。
「この報告内容が本当なら、そのパンツ兄ちゃんは素手でウェアウルフを倒す力を持ち、魔法属性全6種類の適正を有する変態じゃねぇか。」
「まぁ変態なのは間違いないよね?ボソッ」
アイルが俺をみながら失礼な事を呟いたが、俺はあえて無視する事にした。
しかしパンツ+兄ちゃんの呼び方は誤解されそうだからやめて欲しいな…。
「まいったな…。これを本国に提出したらどうなるかな…。面倒臭くさい事になりそうだぜ…。」
レトはそう誰にでも言うでもなく独り言の様にそう呟く。
「何が面倒臭くなるのでしょうか?」
「ここに来る前にギルドの説明を受けたと思うが、モンスターのランクの説明も受けたよな?ウェアウルフはCランクのモンスターだ。」
うん。それは元冒険者の宿屋の主、ステファニーおっさんからも聞いている。
「Cランクのモンスターと単独で戦えるのは目安として白銀級からだ。そんなモンスターが10体だぞ?10体。単純に白銀級冒険者が10人必要になる討伐対象だ。」
ふむ、まぁそうだよね。
「それを…銀級冒険者10名とギルドに未登録の全裸男1名が素手で撃退とか…作り話と思われても仕方ねぇよ。しかも夜襲を受けてだぞ?」
全裸男!?今、全裸って言った?何でそんな事まで!?アイルの奴、そんな細かなシチュエーションの事まで報告書に書いてるのかよ!
俺は怒気が籠る眼でとアイルをチラリみやると「テヘッ」と舌を出してこちらを見上げてやがる。
クソッ…かわいいじゃねぇか…。
「その報告書と同時にだ。魔法属性全6種類の適正持ち…。魔法適正結果の情報と今回の討伐報告…。名前も一緒だし直ぐに同一人物だと疑われるだろうぜ。妙な名前だしな。」
妙な名前に解釈しているのはあなた達なんですけどね‥。いや、この隣りの獣耳娘が改変しているんだよな!
俺はまたふつふつと怒りが込み上げてきてアイルを見やると「テヘッ」と舌を出して自分にゲンコツするポーズを取ってこちらを見上げてやがる。
クソッ!クソッ!!…かわいいじゃねぇか…!
「そう言う訳だが、パンツ兄ちゃん…。魔法属性については俺も目の前で確認したからいいとして、問題は素手でウェアウルフを倒したって事だ。」
「え?何が問題なのでしょうか?」
俺は当然、疑問を口にする。
「さっき話したと思うが、ウェアウルフはCランクのモンスターだ。白銀級冒険者単独と同等だって先に話したよな?」
「はい。」
ならばそれでいいのではないか?俺は白銀級の力を持っているって判断で。
「しかしそれは白銀級がフル装備で挑んだ場合だ。冒険者の連中にも色んな奴がいるが、戦士に特化した奴もいれば戦士と魔法を使う魔法戦士って奴もいる。
当然、兄ちゃんみたいに武道家もいるが基本的に人族の武道家で大成する奴なんかいねぇ。リーチも短けぇし攻撃力も武器を振り回した方が高いのは明白だ。
マジックアイテムを使ってやっと戦える様になる程度だ。
だから武道家で冒険者なんてやってる奴はほぼ皆無だ。」
「はぁ…。」
「しかしお前はそれをやりやがった。しかも全裸でな!」
イヤ、全裸は強調しなくていいと思う…。
「そこでだ。お前の実力を知りたいんだ。」
「俺の実力を知る?それはどうやって知るんですか?またあの玉みたいな測定器で判定するのでしょうか?」
「んな便利なもんねぇよ。」
え!?ないの?魔法属性の測定が出来るなら強さを測定する玉があっていいじゃないか。
スカウ○ー的なものとかないの?便利な魔法でさ?
「簡単だ…。俺と少し手合せしようぜ。」
「え!?そんな、いきなりギルド長と手合せって無理ですよ…!」
「どうしたんだ?アイル、そんなに慌てて。」
「あのギルマスはクリソベリル級なの!」
「くりそつ便利級?…それはどのランクだったっけ?」
そう言うと、アイルは俺の耳に顔を近づけ耳打ちする。
ビクッ…いやん耳は弱いの…。とふざけたら頬っぺたをつねられた。
「あのねぇ…白銀級でも化け物だって話はしたと思うけど、その1個上の階級…!
普通の冒険者なんて一瞬でのされてしまうし下手したら…死…。(コソコソ)」
「ひぇ…何でそんな化け物がいきなり俺なんかに手合せを申し込んでくるんだよ…!(コソコソ)」
「知らないわよ!あんたが全属性持ちとか変な事するからでしょ!?変態!!(コソコソ)」
「変態って言うなよ。そもそも属性云々は俺が好き好んで出来る事じゃないし(コソコソ)
「この報告書通りならパンツ兄ちゃん、お前はマジもんの変態だ…ニヤリ」
ギルマスは報告書を机にパタリと投げ嬉しそうに笑う。
……。
俺とアイルは見つめ合う。
そしてその潤んだ瞳でお互い見つめ合いキ…なんて事にはならない。
お互いの目は点。そう点になっていた。
「アイル…。どんな報告書を提出したらこんな事になるんだい?ピクピク」
「し、知らないわよー!!そんな事言われたって―!!」
アイルは知らない!と言いながらぷいと顔を背ける。
「でも、何故そんな事を確認する必要があるんですか?他の冒険者にも同様な事をされてるのでしょうか?」
当然、俺は食ってかかる。いきなりアイルが言う様な化け物と戦って実力を証明しろなんて理不尽だ!
「いや?しないぜ?確認したいのはおめぇの強さだ。この報告書通りの戦闘力があるかどうかのな。
こんな報告書を本国にそのまま流した日には俺の頭がどうかしたのかと疑われて下手したら首になっちまうかもしれねぇ。
だからお前の力を確認したいんだよ。しかも今まで何処のギルドにも所属した事がないポッと出の奴が出て来たら尚更だ。
不正をしてるんじゃないかとな。
さっさと実力を示して白銀級まで上り詰めたらどこぞの国に任官しようとする腹積もり…なんて奴も過去にはいたからな。」
確かに言われてみると正論ではある…。
「さぁ、闘技場があるからそっちに行ってやろうぜ(ギラん)…。」
レトはそういうと目を輝かせる。
俺、どうなっちゃうの?
筋肉だるまバカマスターとの手合せ…どうなる!?




