第113話 前途1
「おい、鳥。一つ確認じゃ。貴様、何故このダンジョンにおるのだ?」
救出したノーマルグリフォンの『カン』さんを睨みつけマナがそう尋ねる。
マナがこのスライムダンジョンを見つけたから良かったものの……
俺達3人(パンツ、カロリー、プリン)だけじゃ発見できなかったぞ。
「そうよぉぉおん!!カンちゃんたら何でこんな所に入っちゃったのぉぉおおん!?」
「………実は配達途中に荷物を落としてしちまったんス。」
「ええぇぇええん!?荷物は無事だったのぉぉおおん!?」
「そりゃ勿論無事ですよ。地面に落ちるスレスレで荷物は回収出来たんスけど、そこでおいらは見ちまったんス……。」
「見ちまった?何を?」
「そりゃまるまると肥えた『リクアザーラッシー』ッスよぉ!!丁度昼時で腹が減っている時にあんな美味そうな奴を見せられたら狩るしかないっしょ!!」
「…………りくあざー……らっしー?カロリーさん、リクアザーラッシーって何ですか?」
「リクアザーラッシーはね、陸に適応したアザーラッシーさ。」
「…………。
……………………
へ~……なるほどぉ……そうなんだぁ…………
ってなるかぁ!!」
カロリー解説委員に更に尋ねると、丸太状の胴体に鳥が羽ばたく様な長いヒレ状の前脚がついており、元々は水中を泳ぐ為のヒレが、陸上に適応する内に、そのヒレが進化して鋭い爪状になり獲物を捕獲する様に進化したアザーラッシーらしい。
様は地球で言う所のアザラシっぽい。名前もほぼそのままだし……。
しかしこのアザーラッシーと言う魔獣は中々お目に掛からないレアな魔獣だそうで、生息地や繁殖地も解明されていないとの事。
「アザーラッシーちゃんの素材は高く売れるのよねぇぇえええんん!食ってヨシ!売ってヨシ!安全ヨシ!!」
プリンちゃんがどこかで見た事がある猫の安全確認している様なジェスチャーでそう叫ぶ。
ライオン顔だから似合ってるじゃねぇか……。
兎に角、グリフォンは種族としてそのアザーラッシーの脂が乗った肉が大好物らしく、狩って焼肉にして食うのが極上の食事らしい。
その肉を焼いて食うと噛んだ瞬間に旨味のある油が口中に溢れ出してそれはもう天国に昇る程の絶品らしい。
中にはアザーラッシーを求めて世界を彷徨うグリフォンや商隊もいる程だとか。
そんな事言われたら俺も食いたくなるじゃないか……。
しかもカンさんが目撃したリクアザーラッシーは、体長が20mを超える程の大きさだったらしい。
20mて……大体、中型の旅客機ぐらいあるんじゃ……。こわっ。
地球のゾウアザラシは6mを超える個体も居たみたいだしこの異世界ならそれぐらいの巨大なアザラシがいてもおかしくないのか?
それにギガパイさん(ギガントパイソン)も同じぐらいの体長だったしな……。
「流石に俺一人で真正面からやりあっても厳しいかと思ったんで、奴が油断する巣穴まで後を付けてたんス。そしたらこのスライムダンジョンに入って行ったんスけど……。」
「やだぁぁああん!!そんなおっきいのがここに入ったのぉぉおおん?おっきぃぃいいくて入らなぁぁあいんじゃなぁぁぁああなあい?」
プリンちゃんが言うと何故か卑猥な事を言っている様に聞こえてしまうのは気のせいだ。うん。
「それが何事もなく入ったんスけど、見失っちまったんスよ。諦めて戻ろうとしたら入り口が無くなって出れなくなっちまったんス……。
そんな時にそこの骨が出てきて、今は外は危険なので暫くここに居た方が良いと言われ厄介になってたんスよ。」
「外が危険て……何かあったのぉぉおおん?」
「いやぁ、それは分からないんスけど、俺も配達が残ってるから出て行こうとすると、そこに転がってるスケルトンに必至に止められたんスよねぇ。」
「でもさぁぁああん?ここら一帯にアザーラッシーなんていない筈よぉぉおん?ホントにいたのぉぉおぉおん?」
「いましたって!!間違いなく丸々肥え太った過去一にデカくて美味そうな奴が!!!」
「………それはもしかしたら………ピンポンツリーイミテーションだったんじゃね?」
「「「!?」」」
カロリーがそう言うと、このダンジョンにいた欲望を幻視させるモンスターであるピンポンツリーイミテーションがいた事を全員が思い出す。
「きっとそうねぇえぇぇん。カンちゃん、騙されちゃったのよぉぉおおおん。」
「え!!マジすか!?このダンジョンにピンポンツリーイミテーションがいたんスか!?」
「いたわよぉぉおん!でもこの、あ・た・し が、倒したからもう大丈夫よぉぉぉおぉおん。あんなチンケな魔獣に引っかかるなんて…………カンちゃんもまだまだねぇぇぇん。お・ば・か・さ・ん!!ウフッ!!」
胸を張り、ピンポンツリーイミテーションを倒した事をクネクネしながらウィンクして自慢気に話すプリンちゃん。
「おめぇも思いっっきり引っかかって、真っ先に抱き着いてたじゃねぇか。」
「うるさぁいわねぇぇぇん!!黙ってれば分らないんだからあんたは余計な事言うんじゃないわよぉぉぉおおんん!!!」
ドヤ顔で語っていたプリンちゃんに、カロリーさんがツッコミを入れると、珍しくプリンちゃんがカロリーさんをグルグルと追いまわす。
この二人が揃うと、ホント騒がしいな。
さてと………
「これ……どうします?」
俺はまだ気絶して屍状態のライアさんを指し示し意見を求める。
「倒しとくか。」
そう発言したのはカロリーさんだ。
つい先ほどまで追い掛け回されていたプリンちゃんには魔石ライトを浴びせ目潰して黙らせた様だ。
プリンちゃんは目を押さえ悶絶しゴロゴロと転げまわっている。
カロリーさんは最初にライアさん(骨)と遭遇してから一貫してその危険性を指摘していたしな。
「ならんぞ。」
それに異を唱えたのはマナだった。
「そやつはもう、我の配下。群れ一員なのじゃ。」
何かそんな事言ってたな……。
『下僕にして下さい!』とか何とか。
あれ、有効だったんだ。
「マナちゃん………こいつは非常に危険な魔物だよ。野放しにする訳にはいかない。」
「野放しなどせぬ。先ほども言ったが、こ奴は我の配下となったのだ。好き勝手にはさせぬ。」
「マナちゃんの事は信じたい………けどね。でももしこのスケルトンが万が一、マナちゃんの意思に反して勝手な行動を始めたら……。」
幾ら意思の疎通が出来る魔物とは言え、カロリーさんから見ても己の力を遥かに凌駕する魔物だ。
ましてマナが言うにはライアさんだけでも国一つ滅ぼす事も簡単と言わしめる程の力を持っているらしい。
「仕方ないよねぇ……」
しかばね状態だったライアが目を覚まし、ムクリと立ち上がると全員に背を向ける。
どうやら今のやり取りを途中から聞いていたらしい。
「こんな怪しい骨の言う事なんか………信じてくれる筈……ないよねぇ……。(コツン…。)」
何、イジけてんだ。
後ろ手に組んで石を蹴るな。
「おい骨。本当に我の下僕となりたいのか?」
「………そりゃ……憧れのマーナガルム様のお傍で生態をけんきゅ……………お力になりたいと思っていますよ……。」
おい。今、本音が漏れてたぞ。
魔獣研究家として神獣を間近で観察研究するのが目的だろ。
「ではお主の処遇は我が決めてよいのじゃな?」
「はいぃぃいい!!オナシャァァぁぁあス!!!」
するとマナは少し考えるとパンツに向き直る。
「主よ……。こやつも『主』の下僕として貰えぬか?」
「え?俺がライアさんをテイムすんの!?」
何故そうなる!?




