『ランキング』から探す★
『夢の図書館』エントランス―――
一人の少女が『ランキング棚』を眺めていた。
「やっぱり、あまり変わらない……」
この人気作ばかりだが、内容がほとんど変わらない書架には、主が興味を示さない。
その為、私の仕事とは関係がないと思っていた……。
でも、最近この棚の近くには別の『ランキング棚』がある事に気がついたのだ。
「今日は、こっちの棚ね」
すぐ近くの書架へ移動しながら棚の上の案内板を眺めていく。
「こっちが『ジャンル別』……こっちが色々まとめた『総合』?」
「『月間』や『日間』なんてものもあるのね」
こちらの『ランキング棚』は、ジャンル別や月間など細かな分類で区切られていた。
エントランス前にある『ランキング棚』と違い、こちらの棚では入れ替わりが激しいようだ。
そんないくつかある書架の中で『日間』『ファンタジー』の前で立ち止まり、注意深く棚を眺めていく。
「やっぱり、ここかな?一番最新の人気作みたいだし……」
これから芽が出てくる物語なら主が興味を示すかもしれない。
そんな期待を胸にランキングの一番下から眺めていく。
ここからはいつもの単純な作業だ。
まず『タイトルを見る』……少しでも興味をそそれば、手に取り『あらすじ』を読んでみる。
この『あらすじ』が気に入れば、『最初の何話』を読んでみて、主が気に入りそうな物語であれば『魔法の栞』を差し込む。
これだけである。
『タイトル』で手に取るまでに9割は振るい落とされ、『あらすじ』でそこから9割は選択から外れ、『最初の数話』でさらに9割が棚に戻される。
紹介された物語でもなければ、ほぼ例外なくこの作業だ。
この無限に増え続ける『夢の図書館』では、悲しいことだけど「後から面白くなる!」なんて期待するのは夢幻という事だろう。
残念ながら時間と機会は有限なのだ。
そうして選別されたいくつかの本に『魔法の栞』を差し込むと主の元へ転送されていく。
最後の転送が終わったのを確認したら本を棚に戻し、内ポケットから懐中時計を取り出して時刻を確認した。どうやら結構長い時間探していたようだった。
「残りの棚は、また明日以降にしようかな」
一区切り付いたところで、今日のお仕事も終わり!っと歩き出したら、遠くでツーちゃんが忙しそうに飛び回っている姿が見えた。
「今日も頑張っているみたいね」
ツーちゃんはこちらに気がつきピヨピヨと囀る。
お仕事の邪魔をしてはいけないので、私は微笑みながら軽く手を振る。
「またねっ!」
ツーちゃんを見送った後、スカートを翻して再び歩きだす。
明日もよい物語に出会えるといいな。
そんな想いを胸にしながら……。
FIN.
『ペケさんは今日も探す』は、ここで終了です。
山も谷も落ちもなく、オリキャラのペケさんを動かす事と、
よい作品が見つからないジレンマを表現するためだけの作品でしたが、
読んでくれた方々には感謝しかありませんm(_ _)m