第八話 開示
二回戦、開始。
卓の中央から、ジャラジャラと無機質な音を立てて新しい牌山がせり上がってきた。
私の席は北家(子)。
先ほどと同じように、彼女らは余裕の表情を浮かべている。
配牌が完了し、私が自分の十三枚を確認しようと手を伸ばした、その時だった。
まずは親(東家)である下家のジュリが、第一ツモを引き寄せると同時に手牌をパタンと表へ倒した。
「――ダブル・オープンリーチ!!」
続く南家の対面レイナ、西家の上家ミレイも、流れるような手つきで山から牌を引き、次々と手牌を開示していく。
「――ダブル・オープンリーチ!!」
「――ダブル・オープンリーチ!!」
三人の娘たちが不気味なほど同じ動作で、第一ツモと同時にリーチを宣言したのだ。
他家全員に見えるように、完全に『開示』された三十九枚の手牌。
さらに彼女たちは、宣言とともに千点棒(リーチ棒)を一本ずつ卓の中央へと放り投げた。
「……は?」
背後で私の父が素っ頓狂な声を上げる。
開かれた三人の手牌を見て、私は微かに目を細めた。
そこにあったのは、またしても常軌を逸した異常な光景だった。
彼女たちの手牌にはそれぞれ、萬子、筒子、索子で染め上げられた暗刻(同じ牌三枚のセット)が四つ、不気味なほど整然と並べられていた。
テンパイの形は三者とも全く同じ。役満――『四暗刻単騎待ち』。
しかも、その単騎で待っている最後の一枚は、すべて何の模様も描かれていない真っ白な字牌、『白』だった。
「ヒャハハハ! 見なさいよこの美しい手牌!」
レイナが、狂ったように笑い声を上げる。
「一回戦であんたは字牌ばかり引かされたわよね? 当然、今回もあんたが『白』を引くようにこの卓のプログラムはセットされてるわ!」
ミレイが、ねっとりとした声で続く。
「白を切れば、私達のトリプルロンで即死よ。3人からの役満の直撃で、あんたの借金は天文学的な数字になるわね」
最後にジュリが、勝ち誇ったように言い放った。
「かと言って、白を切れずに手牌に抱え込んで流局になれば、今度こそあんたはノーテン。私達は全員テンパイだから、罰符の支払いで確実に私達の勝ち。お前の単独最下位よ!」
彼女たちはわざと手牌を晒すことで、私に「絶対に助からない絶望」を味わわせようという腹なのだ。
捨てればトリプルロンで即死。
抱え込めばノーテン罰符で一人負け。
第一局と同じように、いやそれ以上に、物理的にもルールの面でも完全に逃げ道を塞がれた絶対的な死地。
「さあ、どうする? 泣いて命乞いでもしてみる?」
四方から下劣なヤジと嘲笑が飛んでくる。
その圧倒的な圧力の中、私は卓の中央に置かれた三本のリーチ棒と、見せつけるように晒された三つの『四暗刻』を、ただ静かに見つめていた。




