第74話 壊れかけるキリ
キリが隣にいるだけで注目の的になってしまう。
元女神のキリはこの世のものとは思えないほど美しいので、それは気になる存在。
だが、そんな隣にいる俺は「なんであんなやつが」とか言われてるんだろうな……。などとつい考えてしまう……。
「あなた様、落ち込むことはありません。もしも悪口を言うような方々がいらっしゃいましたら、私がこの手で消し去ります。」
「……。」
キリは笑顔で伝えてくれるが、目が本気だ。
キリは多分俺がこうして欲しい。と望めばそれを必ず実行するだろう。
変なことは言わないが、口を滑らさないように気をつけないと……。
それにしても、あんなに担架を切って「キリなんて」と言っていたが、隣にいるとドキドキするしチラチラと顔を見てしまう。
キリと目が合った時の笑ってくれるあの顔が忘れられなくなる……。
ええい!!
あれは俺を騙すための手段だ!! 騙されるな!!
だが、周りからの羨ましがられる目線はそこまで長く続くことはなかった……。
「ひぃ!! おっ。お前は……。お前は!!」
「「?」」
キリと2人して振り返るとそこには冒険者らしく、金属製の鎧を所々身につけている男性冒険者。
髭も生やして40代ぐらいだろうか。
そんな彼が俺のことは一切見ず、キリのことを見て怯えている。
「おっ。俺は知ってるんだからな!! おっ。お前の……。お前の部下がギルマスを殺そうとしたことを!!」
小さな声だった彼は最後勇気を振り絞ったように民衆に聞こえるように言う。
淡々と言っていれば信じなかっただろう。
だが彼の青く冷や汗が出てる顔。声のトーン。呼吸のあらさ。それが物語っていたので民衆も信じ始めキリのことを異様な眼差しを向ける。
「せっかくのいい気分が台無しですね……。せっかく私の武蔵がいい意味で注目されていいましたのに……。はぁ。少し騒がしくなってしまいましたし、少し人数でも減らしますか。では、あなたから。」
キリに指を刺された先程の冒険者はあまりの恐怖でその場で座り込んでしまい、必死に逃げようとしても体が動かず気持ち悪い動きになっている。
キリは彼に向かって歩いていき、どんどん距離は縮まる。
そして、キリの指が彼に当たった……。
「どうやって殺しましょうか。そうですね、迷ってしまいます。あなた様はご希望ありませんか?」
「ひっ。ひぃ!!」
「きっキリ……。本当に辞めて。そんなことで殺さないで!!」
「さすがあなた様、お優しい。ですが、いけません。しっかりと教育をしないといけませんからね。」
周りの民衆もキリに恐怖を感じているものの、目を奪われそこに立ち尽くしてしまう。
体を乗っ取られたという訳では無いが目が彼女を見てしまう。
そして、離さない!!
俺もキリに話しかけられる前まではキリに飲み込まれ思考が動かなかった……。
「やっぱりこういう時はどうすればいいのか分かりません。あなた様ごめんなさい。」
そう謝りながら、キリがデコピンすると冒険者の肉片が当たりに飛び散った。
近くにいる方の服、顔、髪、地面にも血と肉片が付き悲鳴が上がる。
その悲鳴でやっと自分の意思を取り戻した民衆は慌てて逃げて行くがキリはそんな姿を見て退屈そうにため息を着いた。
「やはり人間はつまらないですね。あなた様もそう思われますよね?」
「キリ、さすがにあれは……。」
「あなた様。この世に生まれるということは死ぬということです。いつ死ぬのかそれは運命で決められています。それが今だった。ただそれだけです。そこまで考えることはありません。それとあなた様に特別なプレゼントもあります。」
そういいながらキリは肉片を握りしめると手が少し光ってそして肉片を捨てた。
そして俺の方に近づいてくるのだが、汚れてるはずの手が、汚れすらも感じ取れず綺麗になっている。
そして俺のほっぺに手を当てるながら、何やらよく分からない呪文を唱えた。
「あなた様ステータスを見てください。」
「すっ。ステータス……。」
今の俺は殺されないようにただ従うしかなく、ステータスを急いで確認する。
だが、そこには見た事のないスキルが……。
攻撃 144
防御 128
魔力 80/80
俊敏 116
運 48
スキル
水魔法(レベル1) 火魔法(レベル1) 防御魔法(レベル4) 収納魔法(レベル∞) マップ(レベル2) 身体強化(レベル1) 私のナイト(レベル1) 自宅警備員(6級)
防御魔法なんて存在しなかった。
それにいきなりレベル4……。
これがキリの力……。
だが、前に言ってたのは転生者、転移者は体とスキルが芯から結びつかないからスキルが奪えたはず。
さっきの冒険者はどっちかだったのか?
でも、原物みたいな化け物ではなかっただろう。
そんな人がいれば、絶対に声がかかるはず……。
一体……。
「あなた様。そこまで私が譲渡したスキルに考えてくれるなんて……。嬉しいです!! 私が譲渡したスキル。いわば私のことを考えてるも同然!! あのゴミから取り出して本当に良かったです!! 先程の者は転移者でも転生者でもありません。最後に汚い肉片を触りになったでしょ? あれでスキルを奪ったんです。死んで時間が経っていない者からも盗めるのです。」
「そんなことが……。」
「はい。ですので、私に盗めないスキルなんて存在しません。あっ。すみません。よくよく考えたらゴミが所有してたスキルなんて要りませんよね。私ったらあなた様がこんなにも考えてくれるので舞い上がってしまいました!! ……。」
「?」
あんなにも嬉しそうだったキリだが、何故か急に真顔になり俺のことを見てくる。
そしてその静けさはどんどん俺を恐怖への道に引きずり込んでゆき、鼓動がどんどん早くなっていく。
「きっ。キリ……。」
「あなた様、すみません。この、私のナイトと言うスキル。とても気に入らないスキルだとおもいましてね。ですが、取れないんですよ。はぁ。あの女神はこの私のことを見て嘲笑っていることでしょう。もうこれは自分のモノとでも首輪をつけたも同然。いや、外れないのですから刺青、タトゥーですらあります。この上ない屈辱。この私の所有物にこんな落書きを……。」
「きっ。キリ……。」
「そうです!! 私も特別なスキルを与えればいいんです。あんなクソみたいなスキルではなく、あなた様がこの世で1番喜ぶスキルを。それが私とあなた様の架け橋。誰にも止められない。誰にも。絶対に私のもの。絶対に私の!!」
キリはニヒヒ。と笑いながら両手をほっぺに当ててきて謎の呪文みたいなものを発する。
俺はただただキリの目が怖かった。
真っ暗でどこも見透かされてそう。
そして、歯止めが効かないというか、執着心が凄すぎる……。
「あなた様スキルを見てください。」
攻撃 144
防御 128
魔力 80/80
俊敏 116
運 48
スキル
水魔法(レベル1) 火魔法(レベル1) 収納魔法(レベル∞) マップ(レベル2) 身体強化(レベル1) 私のナイト(レベル1) 私のフィアンセ(レベル1) 自宅警備員(6級)
「効果知りたいですよね。ですよね。もちろんスキル欄に手を添えればすぐに説明が出ますが、ここはあえて私から説明します。これは、私以外と結ばれない運命的なスキルです。ありえませんが、仮に私以外と結ばれた場合、結ばれた女は死にます。いいですか? あなた様は私しか見てはいけないのです。レベルが1という点も気になると思いますが、やはり思い出を多く作り少しずつ進展していき、いずれひとつになりたいのであえてこうしました。そして、レベルが上がれば上がるほど、私との絆が強くなるので戦闘面でと強くなるということです。絆がどのようにして強くなるかはあなた様の妄想にお任せ致します。」
「このスキルは取れたりしな」
最後まで言うことはなかった。
ただただキリが俺のことを真剣に見ているのだが、後ろから感じるオーラというか。そういう感じのものがどんどんどす黒くなっていき怖くなった。
「あなた様。もうひとつ言い忘れてました。このスキルがなにかの影響によりスキル欄から消えた時、私は死にます。世界的に見れば嬉しいことかもしれませんが、これでは私を思っているあなた様が可愛そうではありませんか? ですので、私が死ぬとあなた様も死にます。これで幸せですよね? もちろん死んだ場合のことも考えておりますが、それは秘密です。」
「……。」
「そんなに怖い顔しないでください。ただ私を愛してくれれば問題ないじゃないですか? ダメですか? こんなにも私はあなた様のことを愛しているのに!!」
「……。」
「残念ですが、邪魔がやって来ました……。アバトは少し出かけているので、他の奴隷を……。いえ。あなた様、私の活躍見たくないですか?」
目が真っ黒で何を考えているのか分からないキリは覗き込むように俺にそう聞いてくる。
俺が何も言う前に笑いながら「やっぱりそうですよね。」と言い俺の前に立ち塞ぐ。
そしてやってきた人物は……。
原物さん?!
「特別に私直々に遊んであげましょう。あなた様のお友達ですので殺しはしません。安心してくださいね。」
「武蔵、大丈夫か!!」
そういいながら、キリに両手剣の刃を向ける原物。
ほぼ真正面から見る原物が剣を持っている姿だったが、直視できなかった。
キリとか違う別のオーラがぷんぷんと出ている……。
「光栄に思いなさい。私がお相手してあげます。」
「チッ。相手にしたくねぇ顔だな!!」




