第59話 話さないと殺される部屋はこちらですか?
「ここは……。」
俺たちがやってきたのはThe貴族とでも言わんばかりの部屋。
壁などは綺麗な白で覆われており、机とソファの下には高そうな絨毯が引かれている。
それに、棚の中に飾られてあるコップは観賞用だよね……。
俺にとって縁もゆかりも無い部屋に連れてこられた。
ムイのお父さんはそんなものに目をくらますまソファに向かって歩き出す。
しかも、ムイも同様に……。
王族となれば、これぐらいでは驚きの1つも無いって事か……。
「いつまでもそんなところに立ってないで、早く来い。色々話してもらうぞ。」
「はっはい!!」
俺は慌ててソファの所までやってくるのだが、ムイは座っておらず近くに立っているだけ。
ということは、ムイのお父さん側か反対側かを選べと……。
「んん!!」
こっちに座らせていただきます!!
俺はすぐにムイのお父さんと向かい合わせになるように座ったのだが、続いてムイがやってきてなんとも言えない構図に……。
もはや、娘さんをくださいとでも言う構図だろ……。
それに、何となくムイが腰をかけてからというものの、どす黒いオーラのようなものがチラチラと見え怖いし……。
もう、どうすれば良かったの!!
「はぁ。今はそれに突っ込むのはやめとくが、金輪際位置を考えて座れよ。説明してもらう前に、今回のこと軽く話さねぇとな。 まずはここは元領主亭。元と付いてるのはあいつは死んだからだ。そして、町中が魔物だらけになったのも、その領主のせいってわけだ。しまいには、自身も魔物になろうとする本当に救いようのない馬鹿だ……。」
怒り口調だが、その顔はすごい悲しそうにしている。
「それなら、領主の息子たちはー?」
「問題ない。生きてるが、見つかったのは牢屋の中でやせ細っていて見るに堪えない状態。これから病気にかかってないか調べた後に元の体型に少しずつ戻していくが、あの子たちもただではすまないだろうな。父親があんなことをしでかしたんだからな。」
ムイのお父さんは腕を組みながら悲しそうに、いや寂しそうにいい、徐々に声のトーンが落ちていった。
下手すればムイと年齢も近いかもしれないし、娘同様に可愛がることもあるかもしれないって考えると心が痛い……。
さすがにそれはきついよ……。
「そもそもの原因だが、あのバカ自分の妻を蘇らせると、魔族にそそのかされてそのまま手を貸したそうだ……。あいつは愛妻家だったからな……。んん!! 俺からは以上だ……。」
涙声になりながら伝えてくれ、最後は無理やりやりきったが、ムイのお父さんの心はヒビが入ったまま……。
自分の友が知らないところでそんなことするなんて、信じられないだろうし、知ったところで怒りよりも悲しいと思う。
それを、俺たちに伝えてくれたこと、心から感謝しないとな……。
「それよりも、武蔵とか言ったか? お前の話を聞かせろ。少しは原物から聞いたが、そこも踏まえてな。」
今までが嘘だったかのように切り返し、前かがみになりながら俺を睨んでくる。
俺も悲しくなり涙が落ちそうだったが、一瞬にして引っ込まれ今では恐怖の空間としか考えられない……。
どこまで話すべきか。
原物さんには全て話したが、ムイのお父さんは……?
ちょっと待って?! 原物さんって聞いたって言いました?!
「原物さんが?! ってことは……。どこまで、いやあえて濁す。でも、憧れの冒険者だったら……。」
俺はブツブツと小声で原物がどのように伝えたのか考えていたのだが、ムイのお父さんはその時間が嫌だったみたいで、貧乏譲りを始めた……。
「それで、原物はなんて言ったのー?」
「もう、ミライおじさんって呼ばなくなったんだな。 まっそんなことはどうでもいいか。 あいつが元いた国と同じ所からやってきたって言ってたな……。なんでもその国から来るものは神から少しプレゼントを与えて貰えるとかバカ話を付け加えて。あんな嘘を着くような奴だったか? 」
俺の耳には「嘘をつくような奴」など耳に入っておらず、原物が全て言ったものかと思い、心拍数が上がっている。
どうする?
どうする?
さすがに全部言わないとか?
「もう、言うしか……。」
「その態度ってことは……。事実なのか。 はぁ。めんどくさいになってきたな……。それと、先程から目が泳いでいるが、お前に残された選択肢は言う意外にないからな。もちろん話した内容は他言無用だ。ムイもいいな」
「もちろんー。」
「ってことだ、話せるよな!!」
その瞬間、どす黒いオーラがムイのお父さんの背後から溢れ出てくる。
見た瞬間、恐怖、寒気を感じ唾を飲み込むことさえ忘れてしまう……。
「やりすぎたか……。はぁ。さっさと喋れ!!」
「じっ実は……。」
そこから俺は元いた世界で死んだこと。この世界に転移したことなど色々話した。
そして、何故神と親しいのかも
「うっ嘘はついてねぇみたいだな……。ってことは……。はぁ。原物もその口か……。」
「えっ。原物さんも話したのでは?!」
「そこまでは話してない。この世界のどこかの国としか言ってなかったし、嘘だと思ってたからな。それが実在、いや、この世界すらないんじゃ……。はぁ。こんなこと抱えるんじゃなかった……。俺たち人間にはどうこうできる問題を超えている。」
ムイのお父さんは俺が話し出すとどす黒いオーラは辞め、今では頭を抱えている。
「はぁ。このことは絶対に誰にも話すなよ。死んでもだ。少しでも漏れたら、お前を神の使徒として崇める連中がいくらでも湧いてくる。そんなことになってみ、今までの冒険なんて無理だ。どこに行っても、煽てられ、息苦しい生活が続くだけ。兄様以上にな。はぁ。兄様にも黙らないとな、さすがにこれはな……。はぁ。」
「すみません……。」
「謝ることはない。神に呼ばれたんだ、それはしょうがないし、この世界がそうさせたとでも思うべきことだ。それで、お前は2種の神の使徒という特殊な例になったんだな……。この先色々あると思うけど、頑張れよ。それと、ムイを必ず守れ。命を捨ててもな!! はぁ。なんてやつと会ったんだよ、俺は……。はぁ。」
本当にめんどくさそうな顔をしているし、ちょくちょく頭をボリボリかいている……。
俺ってやっぱり異質な存在なんだよな……。
それなのにゴブリンで死にそうになるとか、意味わかんねぇ。
「武蔵ー。」
「?」
「私は何があっても武蔵の味方だから、困ったことがあったらすぐにいってー。世界が敵に回ってま武蔵のこと助けるからー。」
「あっありがとう……。」
「はぁ。ムイはお前のことしか考えられなくなっちまったな……。これを恨みてぇが、神を恨むのと同じだからな……。はぁ。しょうがないのかもな……。」
諦めモードに突入したムイのお父さん。
だが、この後再度目を正気にさせるのである。
「あっ。だから、武蔵のスキルは変わってるのー? 神様から直接貰ったからー。」
「そんなところだね……。」
「ちょっと待て、それはどういうスキルだ?」
俺がスキル説明を始めるとため息が増え、しまいには「もうないよな、ないよな!!」と何度も確認されてしまう……。
特別な存在ってことは理解できたが、実際に弱いし、使い所もね……。
本当に神に愛されてるのか?
「それと、そのスキル、ペラペラ話すなよ。わかるやつには多分分かるかもしれないからな。お前みたいな特殊スキルだが、たしか場所によっては呪いと言われたり、逆に称えられるところもあるんだよな……。とりあえずだ、お前はレベルを上げてムイを助けることだけを考えるんだ。いいな。」
「……。はい。」(やっと終わった!!)
「はぁ。それじゃあ、話し合いはここまでだな。今日話したことは他言無用、絶対な!! いいな。」
「「はい」」
「送っていくか……。」
またテレポートで俺とムイは先程の宿屋の近くまでやってきた。
軽い挨拶を交わしたあとにムイのお父さんはそのまま帰っていったので、俺たちも宿屋に向かうが……。
「あっ。ムイ、武蔵!! 急にどこかに行ったから心配した。私だけではもし魔物が来た時対処しきれない!!」
そう、色々ありすぎて一緒に戦ったユイのことをすっかり忘れていたのである。
今回ばかしは許して!!
「ごっごめん!! すっかり忘れてた」
「武蔵、酷い……」
「ごめん、ユイー。お父様と少しお話してたー。とりあえず、もう終わったって。今日はゆっくりして、寝よー。」
「族長ならしょうがない。戻ろっか。」
俺たちが宿屋に入るが、1階にゴブリンの死骸が少しありら冒険者が数人いた。
俺たちが取り逃したゴブリンをやってくれたと思うが、もっと前線に来てやってくれてもよくね?
「はぁ。とりあえず、戻ろっか。」
「「うん」」
部屋に戻るが、外には俺たちが部屋を出た時と同じ光景があった。
シアが震え、シアに抱きつくリア……。
「おかえり……。シアは多分数日経てば大丈夫になると思うから、それまではこの街に滞在しよう。」
「うん……。」
だが、なんか聞いてはいけないように感じ、誰も何も話さずそのまま就寝した。
リアはシアを抱きながら一緒に寝ていたが、本当にシアに何があったというのか?
でも、聞くのもな……。
俺もムイ以外には話してないし……。
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