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異世界アサルトライフルマン  作者: 夏松秋蝉
ドラゴニュート編
25/33

25th shot

 森の中を警戒しながら歩く僕らに対して、それは唐突に表れた。

 全方位の木々の隙間から風の刃が飛んでくる。

 それに対して僕は即座にゾーンに入る。

 そして一つ一つどの刃がどこへ飛んで誰に当たるかを確認し、実害があると思われるザクトラス以外への刃を全て撃ち落とした。

 そうするとなんとなく魔力を辿ることが出来て、その魔力の先には耳が長い妙齢の女性がいた。


 数多ものゴーレム――前にダンジョンで見たものよりかは何周りか小さいが全体的なフォルムは同じ型――であったはずの割れた岩々。その上に立つ彼女の金色の髪は神秘的に風に流されていて、その神々しさすら感じる雰囲気はザクトラスに懸想しているエルフとほぼ一致した。

 彼女はニコリと微笑むとこちらに向かって口を開く。


「ごきげんよう。うちに何の用かしら?」


 それに対してザクトラスは眉間にしわを寄せ、全身から殺気を出して彼女を威嚇している。


「これはこれは。随分な歓迎、有難く頂戴したぜ」


 そんなビキビキと全身の筋肉から収縮させる音を鳴らす彼に手を置き、僕は彼女に声を掛けた。色々と探る為でもある。

 相棒を消し、レイピアも納刀して敵意が無いことをアピールするのをとっかかりとした。


「やア、エルフのお嬢さン。無粋なトカゲが失礼しタネ」


「なっ!? お前!!」


 ザクトラスの苛立ちも無視して僕は彼女に問いかける。


「人間は好きカナ? トカゲよりはマシカイ?」


「うーん、そうね。

 話が通じるだけ、あんなデカブツよりスマートなアナタの方が魅力的かしら」


「それは光栄ダネ。あのエルフ様に魅力的、なんて言わレテしまったラ恋にでも落ちテしまいそうダ」


「ふふふ、買い被り過ぎよ」


 エルフはまんざらでもないといった感じに笑う。ザクトラスが立ったまま器用に貧乏ゆすりを始めたが、まだ無視だ。


「さテ、僕たちはここデ違法取引をしていル商人がいルって聞いたんだガ、ご存じないカナ?」


「ああ、あれね。あいつら違法だったのね。

 ごめんなさいね、私人間の法には疎くて」


「いやイヤ、貴女なら仕方ナイ。

 それに、人間以下の猿から人の法律を聞くなんて無理難題、僕ぁ押し付けラレナイネ」


「ありがとう、私、貴方みたいな品のある殿方は人でも結構好きよ。

 後半にも賛同出来るし」


「と、言うことハ、案外そちら側の居心地は悪いのデハ?」


「確かに――そうね。あんまり好きじゃないわ」


 僕はその言葉を聞いて徐に片膝を地面に着き、彼女を見上げる。


「じゃあこちら側に来ナイカ?

 僕が命を賭ケテでもキミを守ロウ」


「あら、それもとっても魅力的ね。

 でも、ごめんな――」


 彼女が謝罪しようとした瞬間、僕は相棒を召喚し、彼女の顔面にフルオートでマガジンの中身を全て打ち込んだ。

 それぞれが凄まじい速さで飛ぶ鉄塊は、しかし彼女の纏う風によって軌道がそらされ、全弾明後日の方向へ飛ばされてしまう。


「あら、冷静(クール)な方と思っていたのだけれど。

 案外熱烈なラヴコールをするのね」


 そう言う彼女の顔にはもう微笑みは無かった。

 しかし、その顔は即座にザクトラスの背中によって僕の視界から遮られる。


「グルォォォォアアアアアアアア!!!!!」


 その後ろにシャルルが続く。

 ザクトラスは両手の斧を振り回して力任せにエルフの風の防壁を弾き飛ばそうとするのだが、エルフは防壁で防ぐのではなく、あくまで僕にやった通り気流で斬撃の振りを逸らして、開けた隙間に逃げ込んでいく。

 そこでシャルルは横から跳ねて跳び突きを放つのだがそれもあえなくスウェーバックで回避される。

 その二人の隙間を縫ってクロエが矢を射るが、彼女も結果は僕と同じだ。


 故に僕は一人の時に準備しておいた秘密兵器を扱うべく、相棒を消した。

 そして現れたウィンドウから、銃身タブを開き、20mmを選択する。弾薬は20*110mm榴弾だ。20mm口径ライフルとは端的に言えば対戦車ライフルである。その初速度は凄まじく、いくら気流を操ったところで軌道は逸らせないだろう。さらに銃口タブから上位サブレッサ――消音ではなくマズルフラッシュの向きを制御することによる視界の確保と前方への排ガスを利用することにより反動を吸収することが目的の部品――を選択し、そしてオプションタブから反動軽減Ⅱを選択する。更に銃身タブからロングバレルを選択すれば完成だ。

 それから召喚した相棒は、オーク退治に見せた化け物振りを遥かに凌駕するものだった。

 もうすでにアサルトライフルではない。その口径の太さと弾倉の幅は見る者を圧倒させる。

 それをエルフに向けてから、一呼吸、ゆっくりと息をする。

 ――確実に忘れてはいけないのは、僕は銃の指導を全く受けていないド素人であるということだ。

 反動の殺し方も、打ち方も狙い方も、全て我流。故に下手に20mmを撃てば反動を抑えきれず死ぬだろう。すでにこれは銃ではなく砲なのだから。

 僕は一段と重くなった相棒を担ぎ、片膝をついて構える。


 そこで僕の方をようやくみたエルフが驚愕する。そして、もうザクトラスの猛攻もシャルルの奇襲も無視してなりふり構わずこちらに最大出力であろう風の弾を発射して来た。そうすれば回避し、僕の持つ得体のしれない魔道具は使えないと判断したのだろう。

 しかし、僕は避けない。僕はゾーンに入ると、懐から銅貨10枚をスロットに入れ、ボタンを押し弾薬を装填する。

 そしてゆっくりとエルフの彼女に銃口を向けると、息をゆっくりと吸い込み、それから止めた。


『ザクトラス、シャルル。退け』


 テレパスで一言二言端的に伝えた後、耳鳴りの鳴る中僕はタグ付きの彼女に向けて、相棒に体を任せて、引き金を引いた。

 片膝をついている筈なのに反動でズザザザザと僕の体は後退していくが、その飛ぶ弾丸は風弾を貫通し、そのままエルフへ飛んでいく。

 彼女の手が光っていることからして全力で軌道を逸らそうとしているのだろうが、甘い。少しして魔法によって回避することが不可能と察した彼女は限界まで体を捻って回避しようとし、そして弾と自分の間に風を集中させて盾にしているらしかった。

 しかし彼女の肩に弾丸は着弾し、そして炸裂した。弾薬は榴弾にしていたから、この爆発は魔法でも魔術でも何でもないただの熱量だ。故に魔法魔術的な回避は不可能。


 彼女の体は吹っ飛ばされ、そして近くの木に叩き付けられた。が、彼女の体の至る所は焼け焦げ、着弾した肩から腕は生えていなかった。爆発で吹き飛んだのだろう。

 そこに間髪いれずにザクトラスが斧を投擲し、彼女の胴体に直撃したところで戦闘は終わった。女性の体が二つに分かれるという無残な結果を残して。


『こちら、ザクトラス。敵性エルフの殺害に成功。報告を頼む』


 ザクトラスの意識上の声はいやに頭に残った。

口径:5.56

弾薬:NATO弾

銃身:ロング

   バヨネット

銃口:

銃倉:複列

照準:可変倍率サイト

その他:反動軽減


口径:20mm

弾薬:20*110mm榴弾

銃身:ロング

銃口:上位サブレッサ

銃倉:複々列

照準:可変倍率サイト

その他:反動軽減Ⅱ

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