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黒龍皇の血統  作者: 現野 イビツ
虹色の巫女と金眼の悪魔
9/26

第八話 閃雷VS火炎(後編)

やっと、10000PV突破しました! 皆さん、ありがとうございます!

沈黙に満ちたスタジアムの中央、僕とガオンは当初指定されていた位置に立ち、対峙していた。

「……よろしいのですか、クロー選手? ガオン選手? 試合時間は残り十分程しかありませんよ?」

「別にいいよ?」

「それでも……やらせてくれ!」

「……了承しました」

二人のその反応を見た審判が、ゆっくりと肯く。

「それでは、試合の準備はいいですか?」

「僕はいつでも」

「分かりました。……ガオン選手は?」

「俺は……試合前に、クローに聞きたいことがある」

「ん、何かな?」

その言葉を聞いた僕は、審判に目配せをした後、ガオンの方をゆっくりと見る。

ガオンは、僕の目を真っ直ぐに見つめながら質問をしてきた。

「……クロー。お前には“夢”ってあるか?」

「? 確かに“夢”はあるけど……それがどうかしたの?」

「……俺には。魔人たちを殲滅して、戦争を終わらせるって“夢”があった」

「……“あった”ってことは、今は違うんでしょ?」

「あぁ。クローが俺にいろいろと教えてくれたおかげで、その“夢”がついさっき潰れちまった」

「それは、ごめん」

「謝らなくていいさ、むしろ感謝してぇくらいなんだから。俺はお前のおかげで、自分がどれだけ無知だったのか、あの魔人の女子にどれだけ迷惑を掛けたのかが分かったからな。停学処分だって、甘んじて受けるつもりさ」

「そう、それはとても良かった」

ガオンの言葉を聞いた僕は、にっこりと彼に笑いかける。

それを見たガオンも、ぎこちなく僕に笑みを返してくれた。

その様子を見た審判が、ガオンに聞く。

「それでは、ガオン選手。準備はよろしいですか」

「あぁ。……いや、最後に一つだけ、クローに質問させてくれ」

「……了承しました」

審判の了承を得たガオンは、僕に最後の質問をした。

「その、クロー。差し支えがなければでいいんだが……お前の“夢”を教えてくれないか?」

当初の印象とは全く逆の、控えめなその問いに、しかし僕は曖昧な笑みで返す。

「んー……秘密ってことで」

「そうか……それじゃ仕方ない。この話はこれまでだ」

その言葉を聞いた僕は、一瞬残念そうな表情をした後、苦笑してそう言う。

そして──、

「なら、改めて──“火炎の支配者フレイム・マスター”ガオン・鋼鱗こうりん・リザードマン、神刃 クロー殿に勝負を挑む!」

彼が取ったのは、引き抜いた長剣を肩に乗せながら胸に手を当てる。レッドテイル王国の最敬礼。

それを見た僕は、苦笑しながら心の中で考える。

ガオンはここまでしてくれているし、観客をずっと僕の話に付き合わせたんだ。

だから……久々に“二つ名”を名乗って相手に答えるのも、悪くないだろう、と。

僕は、自然体で立ったまま相手を指差すと、少し恰好をつけながら言った。


「──“閃雷ライトニング”神刃 クロー、喜んでお相手仕る!」


直後、沈黙を保っていた観客席から爆発的に歓声が上がる。

それを見た二人は、揃って審判にアイコンタクトを送る。

それに気付いた審判は、一回大きく肯いた後、大声で言った。

「それでは……試合再開っ!!」




『燃やし尽くせ、“火炎波フレイムウェーブ”!』

『“雷光靴サンダーブーツ”、スタート!』

審判の掛け声と同時、二人は揃って魔法を発動していた。

僕は、迫り来る火炎の波を“雷光靴サンダーブーツ”を使って避ける。

もちろん、ガオンにとってこれは二度破られた攻撃。これで終わりではない。

『燃やし尽くせ、“豪炎球ブレイズシュート”!』

ガオンは、上空にいる僕に向かって直径1メートルの火炎球を打ち出してくる。

流石の僕も、“雷光靴サンダーブーツ”の効果では空中での回避が不能と思っての判断だろう。

その判断は決して間違っていなく、むしろ正解以外の何者でもない。

が──、

『“絶攻雷ストライクボルテクス”、スタート!』

僕の右手の魔法陣から出現した雷の巨槍ランスが、こちらに向かってくる火炎球を打ち落とす。

着地。

直後、息つくも暇なくガオンが魔法陣を展開させる。

『燃やし尽くせ、“火炎波フレイムウェーブ”!』

再び地面から沸き上がる炎の波。

どうやら、空中にジャンプした所を狙う作戦を、続行するつもりらしい。

「だったら……」

僕は、迫り来る“火炎波フレイムウェーブ”を見据えながら、その場にしゃがみ込む。

「なっ!?」

流石にこの行動は予期していなかったのか、ガオンが驚いて声を出す。

しかし、僕はそれを無視してじっとしゃがみ続ける。

そして、ついに“火炎波フレイムウェーブ”が僕を呑み込もうとした瞬間――、

『“絶攻雷ストライクボルテクス”、スタート!』

――右手の魔法陣から現れた雷が眼前の炎の壁にぶつかり、その衝撃で、そこに人一人・・・が余裕で通れる大穴を開けた。

穴越しに、ガオンの驚愕の表情が見える。

そう。

この魔法は相手の逃げ道を塞ぐ強力な魔法だが、同時に、相手の行動の目隠しになるデメリットがある。

だからこそ、今のように突拍子もない行動を取ると、相手は即座に反応が出来ない。

僕は、ガオンが硬直している隙を見逃すワケもなく、クラウチングスタートの要領で穴から飛び出す。

『も、燃やし尽くせ、“火炎連弾フレアバレッド”!』

一瞬の後、正気に戻ったガオンが咄嗟に、用意していた魔法を発現させる。

それは、三十発にもなる、ソフトボール大の火炎球。

それを見た僕は、背中に冷や汗が流れるのを感じる。

あんなの……方向転換が難しい空中だったら、“絶攻雷ストライクボルテクス”でも迎撃しきれずに、まともに喰らっていた。

……が、地上であるここなら話は違う。

「よっ、と!」

僕は地面を強く蹴って、大きく右に跳ぶ。

雷光靴サンダーブーツ”で跳躍力を上げていたおかげで、難無く“火炎連弾フレアバレッド”の回避に成功した。

「くっ!」

「行くよっ!」

僕は、顔をしかめるガオンにそう言うと、フィールドを強く蹴って、彼我の距離を一気に詰める。

「くそっ! それなら……」

ガオンは魔法陣の展開が間に合わないと悟ったのか、腰に差していた長剣を引き抜き、正眼に構える。

けど……この試合で、その剣の出番はないよ。

僕は、心の中でガオンにそう言うと、右手に魔法陣を展開させる。

それは、回避用の“雷光靴サンダーブーツ”でもなく、攻防兼用の“絶攻雷ストライクボルテクス”でもない、僕の二つ名の由来となった最後の“切り札”――、


『――“烈煌閃雷ライトニングフラッシュ”、スタート!』


その言葉とともに魔法陣から現れたのは、ソフトボール大の雷の球。

――その正体は、閃光弾・・・

「ぐっ、うわぁぁあ!」

その強烈な光に目を焼かれたガオンが、苦痛で悲鳴を上げる。

そして僕はその隙に、“雷光靴サンダーブーツ”を纏った足で、ガオンの手から剣を蹴り飛ばし、腰から引き抜いたナイフを彼の喉にそっと当てる。

三度、観客席に満ちる沈黙。

「あ、う……」

時間が経ち、ガオンの視力も徐々に戻ってくる。

だが、彼は視力を完全に取り戻すと同時に、自分の喉にナイフが当たってることが分かったようで

「……そうか」

と、ただ一言だけ悲しげに呟いた。

そして、それを見た僕は――

「……気が変わったよ」

「え?」

「教えてあげるよ、僕の“夢”」

「っ!?」

――ガオンに微笑みながら言った。


「僕の“夢”は、純人・亜人と魔人間の戦争を早く終わらせて、“ファンタジア”をもう一度、三種族が仲良く暮らせる平和な世界にすることだよ」


「へ……?」

その言葉を聞いたガオンは――、

「……ぷっ、アハハハッ!」

――突然、大声で笑い始めた。

「アハッ、やっぱり僕の“夢”って変?」

「変、って言うより面白いな。少なくとも、俺はこんな大口叩くやつを、初めて見た」

僕が少し苦笑しながらそう聞くと、ガオンは笑いながらそう答える。

そして――、

「けど……」

「けど?」


「けど、お前なら実現しても不思議じゃない、って思ってる」


「そう……ありがとう!」

その言葉を聞いた僕は、ガオンの首からナイフを話し、代わりに手を差し延べる。

「! ……いいのか?」

「もちろん」

僕のその言葉を聞いたガオンは怖ず怖ずと、しかししっかりと僕の手を握り返してくる。

それを見た審判が叫んだ。


「――勝者、神刃 クロー!!!」


次の瞬間、この日最大の歓声が、観客席から上がった。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

前書きでも申し上げましたが、先日10000PVを突破しました!

これらは、全て皆さんのおかげです。

本当にありがとうございました!

感想、アドバイス等、いつでもお待ちしています。


それでは、次回“試合の後に(仮題)”をお楽しみに。

以上、現野 イビツでした。

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