第十九話 蝙蝠襲来(6)
部活での執筆が忙しかったので、久々の投稿。
皆様、お待たせしました。
今回で、合成獣編が終わります。
「ここからは、本気の勝負だ!」
俺は合成獣にそう宣言すると同時、一気に床を蹴って駆け出す。
「ガッ、ギャウッ!?」
「──それは、もう見切った」
俺の突進に焦ったのか、合成獣が無茶苦茶に翼撃を放ってきた。
が、俺は右手に握った“迅雷剣”を数回振るい、それら全てを難無く薙ぎ払う。
そして――、
『“雷光靴”、スタート』
足に雷光を纏って、天井まで跳び上がると――
『――“絶攻雷”、スタート!』
――“絶攻雷”が起こす爆発で威力を上げた蹴り(・・)を、合成獣の胸元に全力で叩き込んだ。
「――――――ッッッ!?」
合成獣はその真紅の目を見開き、苦悶の表情を浮かべながら、武器庫の壁に再び叩き付けられる。
『“閃雷壁”、スタート』
それを見た俺は、時間を稼ぐ為に素早く合成獣の眼前に雷の壁を発現させる。
ただ、この“閃雷壁”は、確かに時間稼ぎが目的だが、発現したのは彩那達が呼んで来るであろう風紀委員や先生達を待つ為に発現したワケではない。
俺が時間稼ぎをするのは、“考え事”をするため。
(……さて、と)
“閃雷壁”が合成獣の姿を完全に隠したのを確認した俺は、魔力を温存するために一度“迅雷剣”を解除した後、直ぐさま計算を開始する。
(……一番手っ取り早く合成獣を倒すには、“魔喰剣”と“黒”を使えばいいんだけど。けど、魔喰剣を抜くと、残留魔力まで喰われるからなぁ……)
残留魔力とは、魔法を使った後にその場に残る魔力のことだ。
普通、空中に残った魔力は、近くにある石や草等に吸収されたり、他の魔法を使うのに再利用されるかするので、ごく僅かしか残留魔力は確認されない。
が、その僅かに残った魔力から、その場の状況をある程度判断することが出来るので、事件などがあった後は、この残留魔力を調査することが多い。
だから、その残留魔力を全て吸収をしてしまう俺の愛剣――魔喰剣を使うワケにはいかないのだ。
……だって、残留魔力が一切ない戦場なんて奇怪なモノが見付かったら、後が面倒になるのは目に見えているし。
何より、アパにバレたら無茶苦茶煩く小言を言われそうだ。
けど……、
(……だからと言って、“黒”を連発するワケにもいかないよなぁ……。残留魔力を調べられたら困るし、何より犯人が見てるかも知れないし)
そう……知られるワケにはいかないのだ。
俺、“黒”属性が使えるという事実を。
相手方にその正体が分かるとも思えないが、それでも万が一の時の為に、堂々と使用することが出来ない。
けど……その条件があるからこそ、使う魔法は決まった。
(残留魔力のことを考えると、使える黒属性魔法は一発だけ。その一発さえ隠し通せば良いんだ。だから……っ!)
『……“解除”ッ!』
「ギャウッ!?」
今までずっと体当たりを続けていた壁が突然消えたせいか、合成獣が間の抜けた声を出す。
そして、それと同時に大勢を崩したという好機を、俺は見逃さない。
『“絶攻雷”、スタート!』
「ギャワッ!?」
三度、“絶攻雷”を使って、合成獣を壁に叩き付ける。
そして、追撃。
『“サンダーダーツ”、スタート!』
その言葉と共に空中に幾つもの魔法陣が展開されると、そこから約三十本近い雷の針が飛び出し、一斉に合成獣に襲い掛かる。
……が、合成獣もただやられているワケではない。
合成獣は俺に怨嗟の篭った視線をぶつけると、胸にある蝿の頭で詠唱を始める。
『……蠢け、“錆朽騒音”!』
その言葉と共に蝿頭から出た光が、向かってくる針を全て朽ちさせ虚空に溶かした。
「………………ふーん」
それを見た俺は、僅かばかり眉を動かす。
雷を朽ちさせる魔法なんて初めて見たモノだから、少なからず驚きを覚える。
それでも――、
『蠢け、“錆朽騒音(ラスターノイズ”!』
再び蝿頭から、今度は俺に向かって光線が飛び出して来た。
が、それを見た僕は、特に動じることもなく、ゆっくりと呟く。
「それには、確かに驚くよ。けど――」
それでも――、
「――それでも、俺の脅威にはなりえない」
呟くと同時に、右手を上げて詠唱。
『“天雷完翔閃”……スタート!!』
直後、俺の手に展開した魔法陣から、数時間前に使った“天雷翔閃”より二回り以上太い光条が発現し、“錆朽騒音”を一瞬で掻き消した。
「――――――ッッッッッ!!!??」
今まで最高の驚愕の表情を浮かべる合成獣。
勿論、こんな素人でも分かるような好機を、わざわざ見逃す手なんて無い。
「――――――ハッ!」
短く、しかし鋭く息を吐くと、発現を続行していた“雷光靴”の力で、大きく跳び上がり――、
『“烈煌閃雷”、スタート!!!』
直後、俺の右手から溢れ出した暴力的な雷光が、合成獣の顔面に炸裂する。
しかも、それに驚いたのか、外から驚愕の気配が伝わってきた。
どうやら、そこに犯人がいたらしい。
が、すぐにその気配が無くなったコトを考えると、すぐにその場から離れたのだろう。
(……あーあ。逃げられたか)
そう心の中で呟くものの、人目を無くすという第一目標は達成出来たので、それは気にしないことにする。
「……さて、と」
残る問題は、後一つ。
この合成獣をどうするかだが……。
「……これでも俺……僕は、非殺生を人生の目標にしてるから」
そう言いながら、僕は床に転がる合成獣に近付くと、ゆっくりとしゃがみながら、囁き掛けた。
「だから……少しだけ、ガマンしてね」
その言葉と共に、僕は合成獣を撫でるように触れ、誰にも聞こえないように、小声で詠唱した。
『……染め上げろ、“漆黒反唱”』
……と言うワケで、合成獣編終了です。
クローの使った黒属性の魔法については、後々説明があります。
と言っても、十七話位で軽くネタバレしてますけど。
後、合成獣編は終わりましたが、物語内の一日はまだ終了してないので悪しからず。
……次の次の話位は、日常パートに行きたいなぁ……。
まぁ、それは置いといて、久々の次回予告!
次回、“夢”をお楽しみに!
以上、現野 イビツでした。