10 この作品はTRPGをダシに女の子達がイチャイチャすることを目標としているので情報収集パートは全カットです
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七月五日昼
彦星チーム
GM:崎谷星那
PC:アカネ,ユウカ
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分断シナリオということで二手に別れ、私は残念ながら彦星ルートだ。
サイコロで負けたとはいえ織姫に会えないことが確定した。
メンバーはアカネとユウカ。
ユウカちゃんは次の日にアカリと一緒に織姫に会いに行く予定。
私は六日も彦星側だ。
「さて、悠夏ちゃん」
月と立花さん、そしてGMとして冨波さんが生徒会室から天文部室まで移動した。
GM同士は連絡を取り合うが、私達は駄目らしい。
結構徹底して分断する。
「ユウカとクルミの関係を幼馴染にした件についてひとこと」
「うぅ……。やっぱりハードル高いですよ」
金子さんと立花さんを分断して個別に思いを聞く機会を設ける。
それを自然にするための一手だ。
アカネもアカリも後衛だから、前衛と組むべき。
経験者が私と月だけだから、別れるべき。
そんな感じに理由をつけてこの組み合わせになった。
それはさておき
「それで、どうでした? 私とくーちゃん」
どうもこうも、仲のいい幼馴染だよ。
それ以上の感想を私に求めないで。
なんて、事情を知らなかったらそう言ってもよかった。
だけどなんて言おう。
もう両想いだから付き合っちゃえば、なんて不用意な発言はできない。
「そういえば理想聞いてなかったね。告白したい方?」
「え?」
「それとも……。させたい?」
「~~~~」
目を白黒させる後輩が可愛い。
まぁ告白させるといっても具体案がある訳じゃない。
「実績ある人がいうと迫力ありますね。普通、するの反対はされるですよ」
「いや、ただ待つって状況を変えたいんだよね。なら、されるなんて論外だよ。するかさせるか、もっと選択肢あるかもしれないけど私が思いつくのはこの辺」
月は何もしなくても勝手に告白してきたから実績と言われても困る。
でも立花さんも金子さんのことが好きなんだからこっちでいろいろ操作すれば似たような状況を作れるはずだ。
「え、っと。ちなみにさせる、とは?」
こちらの様子をチラチラとうかがいながら興味津々な様子で尋ねてくる。
何かアドバイスできそうなことあるかな。
月と過ごした日々――星那ちゃんに言わせると実績――を思い返す。
「大したことしなくて大丈夫だよ。好きって言葉を意図的に使うように意識するだけでもいい」
「告白してるじゃないですか!?」
「ん? いやいや、相手のことじゃなくてね。食べ物とか、音楽とか。それをスキンシップ取りながら『これ好き』って言ってみて」
月との想い出を振り返る。
今にしてみれば思わせぶりだったという行動で一番大きなものはこれだった。
時には隣に座ってもたれ掛かるくらいの距離感で、好きを囁く。
「できればその物自体を好きって言うより、雰囲気とか貴女と過ごす時間が好きって感じで言うの。もちろん目を合わせながらね」
少なくとも月にはこれが結構効いたみたい。
そういうのやめて、と言われるくらいには効果抜群だ。
「恋愛じゃなくても好きって言葉を多用するの。理論的には壁ドンとか顎クイとかと一緒かな。あそこまでいくとわざとらしくて逆効果だけど、ふとした瞬間にドキッとさせるの。手を握って好きって口にするだけで意識させることができると思うよ。あとは刷り込むくらい繰り返し」
「うわぁ……。そんなことしたんですか?」
星那ちゃんにドン引きされた。
そうだよね、私が悪い。
思い返してみればなかなかの悪女だ。
「手をにぎっ……。好き……。~~~~。無理です無理です無理です。そもそもスキンシップって難しくないですか?」
「え、さっきは自然にハイタッチしてたじゃん」
「ふぇっ。……言われてみればあれもスキンシップ? え? え!?」
金子さんが目に見えて狼狽えだした。
立花さんの方はハイタッチの時にそんな感じだったよ。
この二人、意識する部分がすれ違ってる。
「先輩どうしましょう。もうくーちゃんと自然にハイタッチできる気がしません」
「この先輩達付き合う前から距離感バグってるんで参考にしちゃいけません。健全な青少年が目にして良いコンテンツじゃないんですよ」
R-18指定された。
流石にショック。
「せめて振り出しに戻るためにゲームの方やっていきますか」
「うぅ~。すみません。お願いします」
気晴らしとなるかは分からないけど、ゲームをしていこう。
これ恋バナが題材のシナリオみたいだけど推理色強めな感じで集中すればまた普段通りに戻れるはずだ。
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七月五日夜
合流
GM:崎谷星那,冨波冬華
PC:アカネ,アカリ,クルミ,ユウカ
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生徒会室の扉が開き、月が私のところに飛び込んできた。
「茜~。会いたかったよ」
昼パートの情報収集を終え、リアルの私達も合流する。
二人掛けのソファに飛び込んでくる勢いのハグを受け入れる。
少し勢いに負けたけど月をきちんと隣に座らせることに成功。
そこに立花さんが口を挟んできた。
「先輩達ってスキンシップ激しいですよね」
「んー。女子高なら普通だよ。一年生だってあと半年もすればみんなするようになるよ」
この流れ絶対作って来た。
星那ちゃんはGM同士連絡取り合ってただろうから多分知らないの私だけ。
つまりアドリブで乗り切らないといけない。
無理難題じゃない?
「嘘言わないでください。そんなことする人……クラスに五人くらいですよ。毎回じゃないんだったらもっといますけど」
星那ちゃんのそれはフォローなのか。
地味にハグの慣性でウサ耳カチューシャがずれたから位置を修正。
「あ、ごめんね。これでヨシっと。結局外してないんだね、そのウサ耳」
月に調整してもらって完了。
私からも金子さんにお手本とか見せた方が良いかな。
「好き」
ここで一瞬だけ音を止める。
「だからね、こういうの」
固まってしまった月を抱きしめ、背中をポンポンと叩いて再起動。
ここまでわざとらしいのは今までなかったから仕方ない。
でも私達の方はこんな感じの会話をしたって伝えるチャンスだった。
「茜もコスプレ気に入っちゃった?」
「調子に乗らない」
月の背中から手を放し、右手の人差し指でおでこをちょんと押す。
ただ、この程度で離れてくれないのは知ってる。
スイッチ入れちゃったの私だ。
「ぁ、ぁぅ。ぇっ。ゆーちゃん!!」
立花さんが金子さんの隣に座り、おそらく月の真似をしようとしたんだろうけど残念ながら音量がバグったスピーカーみたいになっていた。
そして恥ずかしそうに頬を染めて両手を広げ……ようとして失敗する。
その意図を察し(てしまっ)た金子さんが連鎖するように固まる。
……やり過ぎたかもしれない。
私の所為じゃないと良いな。
「……」
「……」
「はいっ。ハグ禁止! 先輩達も離れて。私がGMのうちはえっちなのは禁止です!!」
幼馴染'sが動けずにいると星那ちゃんから助け舟がきた。
ただハグはえっちじゃないよ。
「二人も先輩に当てられて変な空気になってますよ。一年生には刺激が強過ぎるんです。ほら座って」
「あハハ、ごめんね、ゆーちゃん」
「ううん」
二人とも少し寂しそうだけど、あんまり待つのは不自然だからゲーム進行を理由に区切らせてもらう。
ここで終わりかと思ったけど、金子さんは一歩踏み込んだ。
「あっと、くーちゃん。おかえり」
片手を上げてハイタッチを求める。
トン、と音が鳴るか鳴らないかくらいのスピードで掌がぶつかった。
「うん、ただいま」
二人は手を合わせたまま笑い合う。
良かった。
普通に始められそうだ。
「あ、あの。別にハグが嫌とかじゃなくて、単に恥ずかしかったというか」
「うん。私も。私達もいつか気負わずにできるかな」
「ッ!?」
「あ、違うの! いや、違わないんだけど! えと、えっと。あの!」
「あ、うん。分かってるよ。女子高だとみんなそうらしいし、アタシ達もいつか普通にハグするのかな!? かな!?」
見事に混乱している。
こういうのを眺めてニヤニヤするのは星那ちゃんの専売特許だと思ってたけど気持ち分かっちゃったかもしれない。
後輩ってやっぱり可愛いなぁ。
「いや先輩達もベクトル違えどこんなもんですよ」
星那ちゃんも昔は可愛かったのになぁ。
その後も幼馴染'sの受難は続く。
本人達は普通に過ごそうとして、でも残念ながら意識して普通をするのは普通の人には無理だ。
何が言いたいかと言うと、動きが少々大袈裟になり、普段使わない筋肉が変な風に伸縮し、逆に普段動かす筋肉が緊張して動かない。
それが重なってますます愉快な……えっと、不運なことになっていく。
プチッ
誰かのブラのホックが外れた音が聞こえた。
「ね、ねぇゆーちゃん。ちょっと」
立花さんの焦った声と合わせて何があったのか悟る。
「あー。ホック外れちゃった?」
「大きな声出さないでよ」
「ごめんごめん」
「いいから早くつけて」
「はーい」
今は金子さんが平常で、立花さんがパニックになっている番。
そして隣からやらかす気配。
「茜、私のブラも外れちゃった」
「月今スポブラだよね。外れようがないじゃん」
なんでこれ羨ましがることができるのか。
ホック外れるの普通に嫌だよ。
「なんで茜先輩が月先輩のブラ知ってるんですか?」
あー。
昨日月の家にお泊りして、今朝寝ぼけて幼児退行した月の着替えを手伝ったからなんだけど、これ月の名誉にかかわることだから言えないなぁ。
かと言って適当な言い訳も思いつかない。
「ヒント。茜の今日の髪型気合入ってると思わない?」
今日はなんとかハーフアップ、みたいな名前の髪型にされた。
月は隠す気ないらしい。
言い淀んだ私が馬鹿みたいだ。
昨日は月の部屋に泊まってそのまま月の家で身支度させてもらった。
なんなら今日は自分の家に帰ってない。
だからいつも教室でやっているより時間があったし(月が)気合を入れて凝った髪型にセットしてくれた。
「先輩のどすけべ」
星那ちゃんは普段私が自分の髪型をそこまで気にしてないことを知っている。
私の髪型は九割方月によるものだ。
それに、私も月も普段は時間に余裕を持って行動する方だけど、今日に限っては二人揃って集合時間ギリギリに到着した。
星那ちゃんが想像しただろうことと事実におそらくそれほど差はない。
「もうそれでいいや」
実際否定できるほど的外れな状況でもなかった。
あれ? 私随分と月に毒されてる?
というかもともと(恋愛的な意味で)好きでもないのに押し倒されても拒否しないんだからどすけべを否定する要素がない。
月の自制がなかったらどうなっていたんだろう。
「大丈夫だよ。茜はえっちじゃないよ。えっちなのは妄想力たくましい星那の方だから」
月がフォローしてくれてるけど、正直かなりえっちな月にフォローされても心は荒んだまま。
そして受け入れる私も同罪だ。
「そうだよね。なんだかんだ私月を受け入れ過ぎてたかもしれない」
「いやいやいや、恋人は甘えが赦される関係よね」
「今後は歯磨きくらい自分ですること」
「そんな!」
この世の終わりのような声を出すけど、どっちかがお泊りしてない時は普通に自分でやってるんだから非難される謂れはない。
「パジャマのボタンがほつれても自分で直すこと」
「それはごめん」
月は素直に謝った。
あれ私のお節介だったのか。
「お風呂上りのドライヤーは?」
「一人だと手が届きにくいしやるよ。代わりに私のもお願い。あー。でも私の方が髪長いから不公平か」
「全然大丈夫。あ、なら私の方が早く乾くし私からお願いしても良い?」
「うん。提案してるみたいだけど結局今まで通りだね」
「同じくお風呂上りのストレッチもするよね」
「ストレッチこそ二人でしかできないじゃん」
「目薬もお願いしたい」
「月は目薬苦手だもんね。分かった」
「お化粧は?」
「鏡見ながらだと難しいこともあるし良いよ。私も髪型は月に頼りっぱなしだし」
こう考えると私も月に甘えちゃってる。
いやいやまだセーフのはず。
「まぁ付き合い始めてすぐのカップルならそんなもんじゃないですか?」
星那ちゃんのOK判定も出た。
大丈夫そうだ。
「正直もう戻れないとこまで行っちゃってるんで気にしたら負けですよ」
「これ勝ち負けの問題だったの?」
ちなみに立花さんはもう立ち直っていた。
興味津々な様子でこちらを見ている。
代わりに今度は金子さんの方が顔を真っ赤にしていた。
くーちゃんはなんで平気なの? って顔をしてるけどさっきまでは立花さんがそうなっていたんだよ。
「勝った」
「はいはい。そろそろ情報収集の結果共有していこうよ。織姫について教えて」




