255 11番目の適格者(その10)
「うむ、あまりいい出来ではないな」
思わず言ってみた
<ギクッ>×9
サッカー部の面々が首を竦めていた
10m先の空き缶にシュートが当たらないからといって責める気はないぞ?
そこまで狭量ではない
もしもそう思われているとしたら問題だな
・・・泣いちゃうぞ?
事の起こりは野球部の面々にネット当てをさせたことだった
ボールを打って人間大のネットに当てるというなんの捻りもない練習
的が大きいから最初は
「え?なにこのお遊び?」
とこんな感じだった
ところが一度やってみると判るんだが結構難しい
そりゃそうだ
昭和から平成、とどめに令和と3つの時代を通してもそんな無謀なことをする人間は出てこなかったんだ
・・・いないよな?
みんな外して
<ガーン!>
ってショックを受けていたな
まともに打てたのはオレだけ
サッカー部のオレだけ
・・・野球部のやつらはへんな顔していた
なぜオレだけが的に当たるかというとメンタルコントロールのおかげだったりする
普通に投げられたボールくらい的に向かって打つのは誰でもできる
結構簡単なことだ
でも実際にはできていないのはなぜか?
変な風に力が入っているからである
上手くやろうだと考えるから変な風に力が入るんだよ
力を抜いて心を静かにすれば誰でもできる
空骸の糸だっけ?
アレと同じだよ
あるいは
「生きていると思うな!死んでいると思え!」
かな
・・・魔物は無茶を言ったものだ
とりあえずオレが手本を見せたおかげ?で野球部の面々は
「無茶だ!無理だ!無駄だ!」
と言えなくなった
そんなわけで渋々練習をしていた
でも何回もやっていればマグレで当たったりする
当たるとなぜだか嬉しいんだ
それでモチベーションが上がった
最後には
「ひゃっはー!(意訳)」
となっていた
・・・シンプルなモノほど心が魅かれるんだよな
テトリスしかり
マリオしかり
インベーダーゲームしかり
そんな訳で野球部では的当てがマイブームになった
内野外野問わずにネットを立てて当て(ようとし)ていた
・・・やる気があったとしても必ずしも的に当たる訳ではないんだよ
ここで問題が発生した
サッカー部のメンツから苦情が来たのだ
オレ達にも光を!、ではなく楽しませろ!
・・・人間の欲望に限りはないらしい
元ネタはサッカーゴールにシュートを当てるというやつだ
それを焼き直しただけ
もうすでにあんたらはやっているじゃん!
そう言ったのだがサッカー部の面々は
「ズルイ!」
の一択だった
・・・人の欲望に限りはないんだな
まあ野球部が隣で嬉々として練習していたからな
嫌でも目に入るから自分達も!となる気持ちは判らんでもない
・・・自分が被害に遭わないならば、だけどな
仕方がないからサッカー部に追加の試練を与えた
的をゴールポストからコーヒーの空き缶に変えてみた
・・・空き缶がたまたま行った職員室にあったんだ
この時代でも教師というのはサービス残業があるらしい
眠気覚ましに飲んでいるそうだ
御愁傷様?
そういえば夜中の10時すぎに学校に灯りがついていたとかよく聞くな
教師というのは本当に大変な職業だな
まあ先生の苦労はさておくとしよう
どうしようもないことに労力を割り振らないというのは社畜アルアルである
いわゆる
『自分の身体ファースト』
というやつだ
まあそんな訳で難度を数段上げてみた
予想通り空き缶には当たりませんでした(笑)
でもいくら10m先の空き缶にシュートボールが当たらないからといって怒ったりはしない
無茶からもしれない
無理かもしれない
でも無駄ではないからな
チャレンジすることに意義がある、だからな
だからそんなにビクビクしなくてもいいんだよ@オレ




