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253 11番目の適格者(その8)

「声をだせや、ごらあっ!」


そう言って野球部の面々を怒鳴った木下おれは悪くない(はずだ)


・・・まあ若干某主夫が入っていたような気がするけどな






ああ、現状を説明しよう


今は野球部とサッカー部合同の親睦試合中だ





青春マンガ定番の勝った方が負けた方に何かを要求するというやつではない


スポーツにそんなものを持ちこむのは紳士サッカーマンのすることではないからな


ノーモア賭け事!


・・・未来では政治家ばかなおとなが率先して賭け事を推奨しているんだから嘆かわしい







まあそんな尊敬できない大人はさておこう


バカな大人と関わるとバカがうつるからな






なんでサッカー部が野球をしているかというとトレーニングだ


左右逆にしての『あべこべ野球』をしてみた




ピッチャーは左投げ


バッターは左打ち


守備は左手で捕球


パス、もとい送球は左投げ


そういうルールだ




・・・決して冗談でやっているわけではないからな





野球ばかりしていると身体が野球の動きしかしないだろ?


サッカーならサッカーの、だ





野球やサッカーに最適化していると言えば聞こえは良い


だが悪く言うなら型にはまった動きしかしないのである


早い話、利き手側の半身しか使ってないっていうやつだ






そういえば


この場合シオマネキなんだよね


などとほとんどの人間が判らないネタを嬉々と書いているマンガ家がいたな


あの状況と同じだと思えば判り易いかもしれん


・・・いやこの場合マニアック過ぎて逆に判り難い?








話を戻そう




片方に重点を置くというのは野球の場合は許される


だが近代サッカーの場合致命的だ


高度になればなるほどわずかな差が致命的になるんだ




両足でシュートできるならそれだけ戦術が増える


という訳だ





え?


自分は両足が使える?




大抵の人間はそう言うだろう


まあ足でボール蹴るだけだからな


でもそういう人間ほど逆足でシュートするとゴールに入らないんだよ





・・・若さゆえの過ちというのはほんと困ったもである






野球部からバット借りて左打ちしてみ?


へろへろになるはずだ




あるいは左投げでキャッチボールしてみ?


以下同文だ




野球に例えた方が判りやすいとおもったので引用してみた


暇があったらサッカーバージョンを考えてみてくれ


さぞウンウンと肯くことだろう






右足だけでもダメなのです


左足だけでもダメなのです


両方が必要なのです


そういうことだ







あべこべの練習試合というのはオレが野球部のバットを借りて素振りしていたのが発端だ


左打ちの素振りと右打ちの素振りを交互にしていたんだよ


人間というのは利き手利き足があって、どうしても左右の動きに偏りが生じてしまう


それを矯正するためにやっていたわけである





これが結構効くんだ


一度試してみるといい


逆側の身体のコントロールがどれだけダメダメか判るから





サッカーというのは両足で蹴れるならばそれだけ戦術が広がる


でもサッカーすることで両足利きにするというのは難しいんだ





だからサッカー以外のスポーツでトレーニングをすることにした


・・・この辺は練習メニューを決める時にちゃんと宣言していたから後出しではないぜ?





野球の素振りというのは結構効果があるのを知る人間は少ない


なにせ素振りというのは全身運動だ




握る、振る、腰を廻す、足で踏ん張る


すべてができないと上手く振れない


だから利き手側でない方で振るとヘロヘロになる






一度でダメなら二度


二度でもダメなら三度


それでもダメなら10回、20回、いえできるまでやるのです


そういうこと




・・・結構大変だった


アク○ルドライバーが欲しいくらいじゃわい?




まあ身体は子供ちゅうがくせい、頭脳は大人の元社畜のオレは素振りだけでも楽しめる


なにせできないことができるようになるというだけで脳内麻薬が大量に発生するからな




でも中学生にそれをやれというのはさすがに酷である


だから数回素振りさせた後、試合形式でやらせることにした





サッカー部と野球部合わせると41名(←ここ笑う所)


1チーム9名×2=18名


グランドを2分割して2試合すると36名


主審と副審各一名づつで合計40名





あまったオレ?


一人左打ちの素振りだよ!


責任者というのは辛いな・・・





まあそんな訳で始まった練習試合


もうボロボロだったな






なにせピッチャーが投げてもキャッチャーに届かないんだ


届いてもバッターが打てない


まるで幼稚園児の野球だった





仕方が無いので魔法カード『ハーフガイアプロジェクト』を発動した


要はすべての距離を半分


ようやくピッチャーの球が届くようになった





まあ左打ちなので打てないとか


捕球と送球が利き手でないので一塁に届かないとか


トラブルは続出した




・・・ふっ、まだまだだね










試合は


「うわっできねー」


という困惑の声が連発する中進んで言った




利き腕でないことから自分のプレーに気をとられる人間多数


そのため全然声が出ていなかった






人間、困難に直面した時に本性が出る


野球もサッカーチームプレーだ


だからオレが怒っても当然だ






チームワークを必要とする競技はお互いの意思疎通が大事だ


だから頻繁に声掛けが必要だ






例えば捕球した選手に


「セカンド!」


とか声をかければそれだけランナーを差せるだろう?


周りを見ながら球を獲るよりも役割を分担した方が効率が良いのだから当然だ


人類は群体であることを選んだ使徒だからできるはずだよな






野球の話をしているがこれはサッカーのスキルの焼き直しだ





サッカーは連携プレーで成り立っている


出来るようにまで早くて半年、長くて一年だ


どんなに高額で移籍してきたプロの選手でもそれくらいかかるそうだ


そのためには高度なコミュニケーションが必要になる





できないと点がとれないため一流選手でも公式試合には出れないというのが欧州サッカー界での常識だ


・・・知らないのは日本のフアンだけなのは関係者アルアルだ






そんなわけでやって当然のことをやっていないから木下おれが野球部に怒るのも当然である




てめえチームプレーをなめるな


そういうことである

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