233 サッカ―部を作ろう(その4)
「あ、オレ部の立ち上げには参加しないから」
木下は上杉に言った
勝手に話を進められても困るからな
「なぜだっ!?」
小川から大声で怒鳴られた
元気だね
ナニか良い事あったのかい?
思わず言いそうになった
「だってオレやる意味ないもの」
きちんと理由を言ったのだが誰にも理解して貰えなかった
小川、上杉、斎藤、吉田、三橋
が「こいつ何言っているんだ?」って顔をした
今ない物を一から作るというのは大変だ
でもそれをやるということは経験を積むということだ
でもオレがいたら経験できないっしょ?
オレは『一人でできるもん』だからな
オレ的には判り易く説明したつもりなんだが誰にも理解して貰えなかった
・・・オールドタイプに囲まれたニュータイプというのはこんなものなのかと思ったね
そりゃ性格歪むわな
「あんなに非常識な人間はねえよ!」とかアニメを見ていて思った自分を殴ってやりたい
閑話休題
オレは学校と交渉してサッカー部を作れる自信がある
いやどんな手を使ってでも作る自信がある
・・・社畜というのは不可能を可能にする魔法師なんだよ(フッ)
だからキミ達少年少女のせっかくの成長の機会を奪うようなことはしないよ
そう言ったんだが誰も理解してくれなかった
人類同士が理解しあえるようになるまであと(宇宙世紀)0079年くらいかかるから仕方がないというものだ
いくら昭和だといっても高校になったらたぶんあるはず、サッカー部
大学でも以下同文だ
会社にだって趣味のサッカー部くらいはあるだろう
早い話、これからの人生ではサッカー部はすでにある状態だ
ところが現在の中学だとサッカー部はない
となると一から立ち上げることになるわけだ
そんな人としてもサッカー選手としても成長をする機会を奪ってはいけない
いつ作るの
いまでしょ!
そういうことだ
サッカーマンたるもの紳士たれ、だ
ちなみに紳士というのは『すべきことをする』人間だ
『したいことをする』人間のことではない
だからせっかくのチャンスを奪うようなことはしない
いやしてはいけない
ほらオレいらない子だよな?
懇切丁寧に言ってみたんだがみんなポカンとしていたな
悲しい現実に泣きたくなるぞ!
・・・これが本当の『冷たい方程式』だな
いやね、社畜をしているとね
できるようになるんですよ
企画立案と予算取りと実行と結果出し
PDCAってやつさね
やって仕事を片付けないと家に帰れないんだよ!(涙)
いや真面目な話
社畜なんて獣神将の命令に絶対服従の獣化兵と同じだからな!
みんな就職すると判ると思うぞ!
そして一緒に不幸になろう!
こほん
失礼
つい上司への怨みがさく裂しちゃったよ
もうすでに出来るオレがやっても経験値が全然入りませんって
だからみんながレベルアップするのに使ってね
そう言う訳
『若い時の苦労は勝手でもしろ』ってやつだよね
もっとも人生生きているだけで苦労がついてくるので買わなくてもいいんだけどね
むしろ『逃げるのは恥だが役に立つ』ってことを叫びながら全力で逃げるのが人として正しい選択だったりする
・・・それがわかるのは人生の大半を社畜として過ごした40台になってからなんだけどな




