第1話 転校生
ガラガラッと扉が開き、口元に傷のある強面の教師が入る。
「今日は転校生を紹介するぞ〜」
強面の教師がそう言うと同時にえ〜という声が聞こえた。
俺は耳を塞いだ。
知らない場所。知らない人間。
でも、ここなら普通に生きられると思った。
少しすると強面教師がちょいちょいと俺を呼ぶ仕草をした。
俺は深く息を吸って吐く。心臓が落ち着かない、握った拳に爪が刺さって痛い。
「…狭間白です。よろしくお願いします」
そう言って深々とお辞儀をした後顔を上げると空席の椅子と2人の少年が座っていた。
1番初めに思ったことが人数が少ない…になるなんて3秒前の俺は想像がつかないだろうなと思った。
「オレはレンだ!よろしくな!」
青みがかった緑のような髪の少年はそう言って俺に握手を求めた。
俺はよろしくとだけ言って握手をした。
「僕は白波夕。夕って呼んで、よろしくねぇ」
少年はそう言って萌え袖を口元に持っていく。
可愛らしい少年?少女?だ。
一限が終わると俺は2人に挟まれて椅子から立てなくなってしまった。
「ねえ、君は異形と戦ったことある?」
「能力はなんだよ!強いのか?」
etc.....
能力やら何やら知らない単語が飛び交っているのは置いておいて、異形という言葉にまず驚いた。
そして、レンは机に乗るな
「異形と…戦う?2人は戦ったことあるの?」
異形。いつからかこの世界に存在する悪。人間を殺し人間を食す人間に似た別の生物。
ニュースでも耳にする何気ない単語だが異形と戦う…?普通異形と出逢えば死だ。戦うなんて出切っこない…
「え…?はぁ…あの校長め、また説明しなかったな」
「校長…?」
「あぁ、なんでもない。こっちの話」
そう言って夕は変わらない笑顔を見せた。
「着いてきて、校長室に移動しながら説明してあげる」
夕は俺の服をグイグイと引っ張る。
青髪の少年は…と声をかけようと振り返るも既に運動場で走り回ってる少年を見つけて苦笑いした…
「この世界には異形が存在する。君も知ってるでしょ?」
夕はスタスタと歩きながら淡々と説明する。
「この学園は能力者育成所。高等教育学校に見せかけた政府の作った能力者教育機関だよ」
そう言って夕はカメラを取り出す。
「僕の能力は写真を撮って相手を固定させる。地味だけどサポート特化の能力だよ。君も何か能力があるからこの学園に呼ばれたんだと思うよ」
(地味…なのか?)
そう言ってカメラをしまい、こちらに振り向く。
「ジャジャーン!ここが校長室!校長先生暇してるから構ってあげてね!」
手を大きく広げたあと、夕はじゃ!と言って走り去った。
俺は追いかけようか迷ったが走る後ろ姿を見て追いつけないと悟り諦めた。
(あの可愛らしい体の何処にあんなに早く走る筋肉があるんだか…)
そう思いながら俺は校長室の扉を開ける。
「失礼しま」
「うわー!!!白くん!よく来たね!」
そう言って校長は俺に飛びついてくる
この髪も髭も生えていない人…この人が校長の『』だ
「いやぁ、よく来たね。ささ、上がって上がって。紅茶でいいかい?茶菓子は何がいいかな〜♪」
校長は鼻歌を歌いながら戸棚を開けて茶菓子を探す。この人は笑っている。
なのに、逆らってはいけない気がした。
「ありがとうございます…」
「じゃなくて!!」
そう俺が大きな声を出すと校長はこちらに振り向く。
「あの…この学校の説明とか一切されてないんですけど…!?」
「あー…忘れてた⭐︎」
校長はそう言ってテヘッという顔をする。
(ムカつく…!!)
「んじゃあ、紅茶を飲みながら説明するよ」
そう言って校長は茶菓子を机に置いて、話を始める。
「この世界には“異形”がいることは知ってるよね。この学校は政府が異形に対抗する手段として“能力者”を育成している場所だ。能力者は簡単に言うと特殊な力が扱える人。普通の人とあまり変わりのない子から才能のある子まで様々さ。安心して、一応高校だからね!授業はするよ」
そう言い終えると紅茶を啜る。
「…つまり、俺にも能力があるの?」
「ザッツライト」
そう言って校長はウインクをしながら手を銃のような形にする。
(な〜にがザッツライトだ)
そう思いながら内心イラついているがこの人は強い。俺の野生の感ってやつがそう言ってるから。
「君の能力は模倣。どうやらまだ能力が完全開花はしていないみたいだけど、授業を受けたらそのうちなるさ!」
「はぁ…適当ですね」
「真面目に不真面目ってやつさ」
校長はそう言って笑う。
俺は紅茶に視線を落とした。
湯気が揺れている。
能力者育成所、能力、模倣…
今日だけで、知らない言葉をいくつ聞いただろう。
……正直、まだ何も理解できていない。
でも、一つだけ分かることがあった。
この学校に来た瞬間から、俺の“普通”は終わったんだ。




