改めの告白
僕は心地のよいベットの中で気持ち良く目を覚ます。そして、ふと自分の腕に違和感を感じる。
そこには、気持ち良さそうに眠っているジェアさんが僕の腕枕で気持ち良さそうに眠っていた。
当然ながら裸で。
そして、改めて思う。
ジェアさんヤってしまった。
取り敢えず、起きなければと思いジェアさんの肩を揺する。僕が肩を揺する度に「う~ん」と可愛らしく唸っているが、数回揺すると思いの外早く眠たそうに目を開ける。
「‥‥‥う~ん、おはようございます。あおいさぁん」
そう目を擦りながら体を起こす。すると、掛け布団に隠れていた豊かな胸が露になる。何度見てもありがたみのある光景だ。拝みたくなる。まぁ、そんなことをしたら軽蔑される可能性があるので拝まないが、心の中で拝ませて貰おう。
「おはよう、ジェアさん」
取り敢えず僕は朝らしい笑顔を心掛けて微笑む。すると、ジェアさんも微笑んでくれる。そこで目が覚めたらしく、腕を天井に突き上げて体を伸ばす。
「さて、今日もお仕事です。お互いに頑張りましょう!!」
「そうだな。お互いに頑張ろうか」
そう微笑み合いながら僕達は起床した。
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その後、お互いに起床した僕はジェアさんの部屋に来た格好で自分の部屋に戻った。自分が着替えている横でジェアさんが着替えているのを然り気無く見ていたのだが、やはり女性が服を着る姿というのは素晴らしい。綺麗な髪を纏めてポニーテールにするときなどは心躍り危うく一部分に血液が集中するところだった。
流石に朝っぱらからするほど盛ってはない。
盛りそうにはなったが。
まぁ、僕は欲を抑えながら自分の部屋に戻ったのだが、なんと表現すればいいのか分からない状況であった。
事実を簡潔に伝えるとすれば《アルジェントヴォルフが寝ている》という状況である。
が、しかしここに《裸で》を付け加えることになればこの状況も一変する。
「‥‥‥これは一体どういうことなんだ」
目の前の一糸まとわぬ姿の少女に一瞬だけ混乱してしまう。それもご丁寧にベットの掛け布団さえも体に掛かっておらず本当の意味で《一糸まとわぬ姿》なのだ。
「‥‥‥ここで何してたんだ」
まぁ、彼女の裸を見たとしても来るものは何もないけれど。
まぁ、このまま放置するのもあれだから適当に布団でもかけていればいいだろう。そう思い彼女が退けている布団を掛ける。
これでいいだろう思い、僕はそのまま着替える。この部屋にはヒューゼさんが貸してくれた数枚の服がありそこまで高いものではないので好きに扱っていいそうだ。
なんとも太っ腹である。
Tシャツ(のようなもの)を着てその上に革のジャケットを着る。そういえばこのジャケットに扱われている革は何の動物の革なのだろうか。生前の世界では安いものは人工的な革だったがここの世界ではそこまでの技術は無いだろう。だったら、必然的にこの革は動物の革となってしまうのだが、それだと生前の世界では結構高いものになってしまう。
そうだとしたら、この革のジャケットは高いものの内比較的に安いものという感じなんじゃないだろうか。だったら、好きに扱っていいと言われたとしても大事に扱うしかないじゃないか。
いや、別に安物でも僕は大事に扱うけれども。
そして、そのまま何の布かわ分からないが肌触りの良いズボンを穿いて部屋を出ようとする。
が、ふと違和感を感じて振り替える。
僕は服が何処かに引っ掛かるような違和感を感じたので、どうせ服の何処かが部屋の家具に引っ掛かったのだろうと思ったのだが‥‥‥そこには服の後ろを掴んでいるアルジェントヴォルフがいた。僕が掛けてあげた掛け布団で自分の体を隠しながら頬を赤く染めて、である。
「‥‥‥お前何してんだ」
思わず眉を潜めて言ってしまう。
「いや、の? なんというか言いにくいのだが、我の服を取って来て貰っていいかの?」
「『いや、の?』 じゃねぇよ。アルジェントヴォルフがなんで僕の部屋にいるんだよ。しかも全裸で」
「これは‥‥‥!!‥‥‥の? あれだ、なんというか‥‥‥」
そう言いながら指と指をくっつける仕草をするアルジェントヴォルフ。なんとも可愛らしい仕草である。因みに器用に脇に布団を挟んで裸の体が露にならないようにである。
「‥‥‥はぁ、言いたくないなら別に言わなくていいぞ。僕の部屋で何か悪さをしたわけじゃないんだろ?」
本当は言って欲しいのだが、このまま硬直状態というのはなんとも好ましくない。僕はお腹が減っているのだ。ここは一旦場の状況を保留として、後で問い質せばいい。
「そ、そうか。ならば我は何も言わないぞ」
アルジェントヴォルフは何処か偉そうにそう言っているのだが、取り敢えず僕の服から手を離してほしい。
「‥‥‥はぁ、」
この訳の分からない状況に思わず深い溜め息をついてしまう。
「服を取りに行ってやるから手を離せ。お前の握力は強いんだから皺になったり破けたりしたら大変だろ?」
僕が言った言葉にはったしたのか手を離すアルジェントヴォルフ。
「‥‥‥すまない。手を掛けさせる」
そう思っているのならば、僕の部屋で無防備に裸で寝ることは止めてもらいたい。僕が子供に性的食指が動かない健全的な男だったらまだしも、そういう所謂という人種であれば襲われてしまうかもしれない。
‥‥‥もしかして、いや‥‥‥考えすぎかもしれない。
「取りに行ってやるから、何を取りにいけばいいのか言ってくれ」
「下着と着れる服ならばなんでもよい」
「分かった。じゃあ、ここで待っていてくれ。取ってきてやるから」
僕はそのまま扉を出て部屋を出て扉を閉めた。そのままアルジェントヴォルフの部屋に行こうとしたら‥‥‥
「おはようございます。青井さん」
レイさんがまるでタイミングを計ったかのように出てきた。
「‥‥‥おはよう。レイさん」
思わず苦笑いをするしかなかった。
というか、なんでレイさんもここにいるのか。
確か、彼女は昨日ちゃんと自分の家に帰ったはずなのだが‥‥‥。
いや、彼女もきっと何か別の用事があってここに来ているのだろう。そうに違いない。まさか、ここで僕とジェアさんをからかう要員が増える訳がない。
ここでもしも、レイさんが『昨日はお楽しみでしたね』なんて言うはずがない。
「昨日の夜はハッスルしていましたね。あんなに清楚なジェアさんがあんな淫らな声を出すなんて」
予想の斜め上をいくおやじ臭がする台詞を吐いたレイさん。美人な美貌と心を見通すことのできないポーカーフェイスの心は思いの外おっさんだった。
「‥‥‥レイさん」
「何でしょうか?」
「君、昨日は家に帰ったよね」
「そうですね」
「まさかとは思うけど、帰ったのは建前でここに改めて泊まる準備をしていた、なんてことは?」
「ないですね‥‥‥とは言い難いですね」
「‥‥‥もしかしてだとは思うけど‥‥‥何か変な目的を持って泊まった、ということはないよな?」
「いえいえ。私はそんな邪な目的を持っているわけないじゃないですか」
「‥‥‥僕が《邪な目的》なんていつ言ったんだ?」
するといかにもわざとらしい感じに口に手を当てて腹が立つの何の。
「あー、ばれてしまいましたか。仕方がないですね。正直に言ってしまうとここは壁が薄いですからね。まぁ、ここから先は流石に私の口では言えませんけど」
いやいや、相当踏み込んだところまで言っていると思うのだけれど気のせいだろうか。
「‥‥‥僕はアルジェントヴォルフの服を取りに行かなきゃいけないから」
すると、またもや手を口に当てて驚くリアクションをした。今度は無表情ながらに本当に驚いていることが分かる。
一体、何のことに驚いているのだろうか?
「ッハ、青井さん。‥‥‥もしかして、あんなに夜ハッスルしたと言うのに、まさか狼の幼児体型にも手を出したんですか‥‥‥?」
「お前は何を言っているんだ」
‥‥‥コイツは僕どんなものだろ認識しているんだ。狼か? 僕は性的な意味で狼なのか?
「ッハ、じゃねーから。‥‥‥はぁ、僕は何故かアルジェントヴォルフが僕の部屋で真っ裸で寝ていたから服を取りに行ってやるだけだ」
「そうですか。なんで狼の女の子は青井さんの部屋にいたんですか?」
「僕も知らねぇーよ、‥‥‥ってレイさんが服を取りに行って貰っていいか?」
「いきなり何ですか?」
少し怪訝そうに尋ねるレイさん。
「いや、アルジェントヴォルフだって女の子だろ? 僕って一応男じゃないか? だったらなるべく女の子の方が恥ずかしくないだろう。それも下着が入っているのなら尚更だと思うわけだ」
「うん‥‥‥まぁいいですけど」
「ありがとうな」
思わず苦笑してしまう僕。
そうして、レイさんはアルジェントヴォルフの部屋に入り数分で服を選び持ってきた。その際に僕は扉の前で待っていたのだが、ごそごそと布が擦れる音というのは何となく心誘うな、と変態的な思考を感じながら待っていた。
レイさんが選んできた服はフリルとリボンが一杯ついたワンピースにピンクのショーツだ。
ブラは無かった。そういえば、この世界にはブラという品物はあるのだろうか? ブラというのは胸を隠すのは勿論胸が垂れるのを防いでくれ等と言われるが‥‥‥まぁ、女の子に聞くなんて野暮なことはしない。
その後、レイさんは用事があるようなのでそのまま僕に服を渡して小走りで行ってしまった。お礼を言おうと思ったのだが‥‥‥まぁ、いいさ。後で会ったら礼を言わせて貰おう。
僕はレイさんが選んでくれた服をもって自分の部屋に戻る。そこにはベットの上で布団で体を包んでいるアルジェントヴォルフがいた。まぁ、当然のことなのだが。
「‥‥‥取ってきてくれてありがとう」
と、頬を赤くしながら言うアルジェントヴォルフ。なんか最近、アルジェントヴォルフと顔を合わせるとき毎回、赤面している気がする。
それはアルジェントヴォルフが僕にした告白が関係しているのだろう。
っていうか、意識しているに違いない。
これは放っておけば僕たちの関係に支障を来しかねない。
「なぁ、少しだけ話をしないか? 着替えながら聞き流してくれても別に構わない」
そう言いながら僕はアルジェントヴォルフが座っているベットに有無を言わさず腰掛ける。そしてアルジェントヴォルフの前に取ってきた服を置いて僕はアルジェントヴォルフを背に向く。
「僕はな、お前の告白が嬉しかったんだ」
「な‥‥‥何をいきなそんなことを言っておるのだ!?」
いきなりの言葉に思わず声がひっくり返ったアルジェントヴォルフ。当然、彼女に背を向けているのでアルジェントヴォルフの様子は見えないが、きっとパニックなっているに決まっている。
そんなことを考えると思わず笑ってしまう僕。
「たぶんわかっていると思うが、僕は色んな女性と付き合ってきた。だけど、《愛している》なんて言われたのは初めてなんだぜ」
「そ、そうなのか?」
「そうさ。付き合ったことのある女性はいつだってそういう関係になる前にどっかに行っちゃうからな。肉体関係を構築するのは簡単なのに、なんで絆の問題になるとこうも上手くいかないのか‥‥‥僕には何か分からないんだ」
不適切な表現だと分かっているが、肉体関係になることなんて結構簡単なものだ。だが、絆はそうではない。中途半端に、それも肉体関係で結ばれた絆なんて無いものと同じだ。故に、本当の絆、《愛》と置き換えても言いかもしれない。それが必要なのだ。
だが、それはなかなか難しいものだ。
「‥‥‥我は其方と本気で結ばれたいと思っておるぞ」
僕の痛々しい告白に慰めるように言うアルジェントヴォルフ。きっと僕に同情してくれているのだろう。そして、彼女はきっと僕のことを本当に愛してくれているのだろう。
そのことがしみじみと分かり‥‥‥心から嬉しかった。
「だったら、気負いする必要なんてないんだよ。なんか、さっきから僕に会う度に顔を赤くしているけど‥‥‥そんな緊張なんてしなくてもいいのさ?」
「‥‥‥我はそんなに分りやすい表情をしておったか?」
「あぁ、かなりな。僕がエルフの里がここに来る道中と同じくらいバレバレだったぞ」
「そうだったか‥‥‥少しだけ恥ずかしいな」
「それにしても今更だろ? この間なんか僕の胸で声を上げて泣いたじゃないか。僕たちは醜態を晒した仲じゃないか。‥‥‥だろ?」
「そうか? ‥‥‥いや、そうだな!!」
そう勢い良く言ったアルジェントヴォルフは勢い良く立ち上がる。僕が話している間に着替え終わっていたそうで、フリルが付いている可愛らしいワンピースのスカートがハタハタと揺れていた。それと同時に先程まではしゅんとしていた尻尾もブンブン千切れんばかりに振っている。
アルジェントヴォルフは元に戻った。いや、それ以上に何処か付き物が落ちたように僕は感じた。先程までとは一味も二味の違う。勿論良い意味で。
「我はそなたが大好きだ。そなたが誰を愛そうとも誰と寝ようとも我はそなたをずっと愛す。だが、きっと我に振り向かせてみせようぞ。我はしつこいのであるからな」
と、僕に向かって宣言する。
それは僕に対しての挑戦状だ。
絶対に惚れさせてやる、という強気な宣言だ。
「そうか、そりゃ大変だな」
そう言いながら僕は思わず笑ってしまった。生前では有り得ないほど心の底から。別におかしくて笑ったわけではない。
心から嬉しいと思えたんだ。
「何を笑っておるのだ!!」
するろ僕が笑っているのが不服なのだろうか、相変わらず可愛らしく怒るアルジェントヴォルフ。確かに、告白されてから笑われるのは不快かもしれないが、嬉しくて嬉しくて笑いが止まらないのだ。
そして、やっと笑いが落ち着き横腹が痛くなった。
「いやぁ、笑った笑った」
すると、頬を膨らませてかなりあざとい表情をするアルジェントヴォルフ。ご立腹のようだ。
だが、僕は思わず膨らませた頬を指で付く。すると当然ながら口からスー、という音が出てそのまま普通の表情になる。
「何をするのだ!!我は怒っているのだぞ!!」
今にも殴りかからん勢いで僕に問い詰めるが、如何せん最初のような印象を持っていないので、可愛い少女がプンプンと怒っているようにしか見えない。
でも、確かに笑ったのはいけなかったかもしれない。ここは素直に謝罪しよう。
「すまん。悪気があったわけじゃあないんだ。嬉しくてついつい笑ってしまったんだよ。本当にこんな不甲斐ない僕のことを好きと言ってくれているんだ、と思うと頬が緩んじゃってね」
「そ、そうか。それならば良いのだ」
一瞬だけ照れてだらしない表情になっていたのだが、直ぐに真面目な表情になる。ん? 何だろう。僕に何か言いたいことでもあるのだろうか。真面目な表情なのに顔が若干赤いことも気になる。
「あ、青井」
真剣な眼差しでこちらを見ながら呼び掛けてくるアルジェントヴォルフ。
「あ、あぁ、何だ?」
いきなり真剣な表情をして呼び掛けてくるので思わず生返事をしてしまった。
「その、な、我そなたの《初めて》を1つ奪ってしまったわけじゃが、これでは我の気が済まない。だから、我にも大切な《初めて》のものを、その、‥‥‥貰ってくれ」
そういった瞬間に両方の肩に手を掛けられた。
「−−え? 一体何を‥‥‥」
そして、そのまま
唇と唇が重なり
--キスをした。
「‥‥‥な」
思わず唇を押さえてしまう。
彼女のキスは唇と唇がぶつかる程度のキスであったが‥‥‥まさか初めてというのは。
「我の《ファーストキス》を其方にくれてやった。これであおいこだ」
アルジェントヴォルフは恥ずかしげに笑いながらそう言った。
はい、こんばんわ。中々に執筆活動が進ません。
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