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彼が最強と呼ばれる所以!!  作者: 犬ちゃん
第一章 森の民達
43/50

男の責任

少しだけ甘い時間を過ごした後は、レイさん・ジェアさん・ヒューゼさん・アルジェントヴォルフの4人で朝食を食べた。

メニューは見慣れない魚を串で指した丸焼き、丸いパン、鮮やかな色のサラダという感じでありなんとも美味しそうだ。


今回で朝食は2日目であるが、最初の日はどきどきしたものだ。


なんたってエルフの里で最初に食べたのが市場で買ったあの食欲が失せるような外見の魚だったからである。

まぁ、普通に美味しかったけれど、進んで食べたいかと聞かれれば声を張ってNOと答える。

それぐらい衝撃的な外見だったのだ。

イナゴは食べれると聞いた時と同じ気分になったのは内緒だ。


だけど、昨日の朝食は普通に美味しく食べれた。


そして、今日の朝食も美味しい。

串刺しの魚は紺色で、尾は鋭い。

口には鋭い牙が生えており、なんとも凶暴な見た目であるが、市場で買った魚よりはるかましである。


どうやって食べればいいかジェアさんに聞いたところ、まずは魚の尾を折るらしい。

この尾は麻痺性の毒を持っているらしく、食べると危険らしい。

そして、口の歯茎らしきところを解し、骨を取り出すと鋭くとがった牙が綺麗に取れた。


ジェアさんに感謝しつつ、一口食べたところ、これもまた美味しい。


身は引き締まっており、程良い味加減の塩味が中々に美味だ。

別に僕はご飯派では無いのだが、これはご飯が愛おしくなる味だった。


丸いパンは米粉パンみたいにもちもちで中々に美味しい。

瓶に入ったヤギの乳で作ったらしい自家製のバターを塗るのだが、このバターもなんとも癖が無く良い味だ。

米粉パンは生前、週一でスーパーに買いに行っていた程好きで、このパンはなんとも僕のつぼを押してくれる。


最後に、カラフルなサラダだが、これは様々な色が実る一つの種類の野菜を使ったサラダらしい。

食感は水水しく、シャッキとしていて、レタスに近いかもしれない。

今度から普通にレタスと呼ぼうか。


それとは別にしてドレッシングとかも欲しいな。

無いものはねだらないけれども、醤油とかふりかけとかそういうものがあれば異世界の食卓は素晴らしいものになるんだけどなぁ。


機会があれば適当に作れるものを作ろう。


食事は全体的に見ても美味しく、良い朝食だった。


何よりも話をしながら朝食を楽しく摂る、という行為はなんと楽しいことか。


久しぶりの感覚にふと泣きそうになったが、ちゃんととどまった。

ここまでは涙もろくはなかったはずなんだがな。

年をとると感傷的になるって本当だったのか。

まぁ、肉体的には若返っているんだが。


だが、やはり文化によって食事というものは違ってくるようなもので、皿などはあるがスプーン・フォーク等のものが一切なく手掴みであった。

ここはインドか、なんてこの世界ではだれも分からない突込みを脳内でしつつ、郷に入っては郷に従えと言われているので僕も手で食べる。

パンと串刺しの魚は比較的手で食べるのに苦労はしない。

パンは普通に手で食っていたし、串刺しの魚は串の両端を持って豪快にかぶりつけばいいが、問題は野菜だ。


なれない感触が手の中に広がり少しだけ気持ち悪い。


ヒューゼさんたちやアルジェントヴォルフはこれが普通なのであろうか、豪華に鷲掴みして食べている。

いや、ジェアさんとレイさんは少しづつ食べているが、アルジェントヴォルフとヒューゼさんは大きな口を開けてがぶがぶと食っていた。

この食べ方に慣れていない僕にとっては美しい外見をした人々がサラダを鷲掴みで食べている、というなんともシュールな光景である。

取り合えず、僕はフォークとスプーンを後で自作しようと誓いながらジェアさんやレイさんと同じようにちびちび食べた。


そして、朝食を食べた後にも違いがあった。


いや、これは違いというか日本独特のあれだった


そう、「ごちそうさま」である。


どうやら、エルフは食べ物を食べ終わったら数秒間黙ってお祈りをするらしい。

そんなことを知らないで一人だけ「ごちそうさまでした」なんて言ってしまい、場の雰囲気をぶち壊してしまったのは言うまでも無いだろう。


思わずため息をつかずにはいられなかった。


========

SIDE:the third person


青井は朝食を食べた後、自室に篭って本でも読もうと思ったのだが、ヒューゼに呼び止められた。


「青井殿、明日の《ドレイド草原》の調査のことで昼辺りにミーティングを行うことになった。時間になったらレイ君を君の部屋に寄越すから、それまでゆっくりしていなさい」


「はい、分かりました」


そう言って自室に戻ろうとした青井だったが、暇潰しのものはないことに気が付く。

アルジェントヴォルフから貸してもらった本は昨日で読み終わってしまったのだ。

元々、速く本を読むコツというものを掴んでしまった青井であるがゆえの悩みだ。


それに、今度は魔法関連ではなく物語をみたいと青井は思っていた。

彼はこの世界に転生してから本といえば魔法関連のものしか読んでいないので、違う本を読みたくなるのも当たり前だろう。

ヒューゼであれば、博識そうな感じが、学になり尚且つ面白そうな物語を知っていそうだ、と思った。


青井はそう思いヒューゼに声を掛ける。


「ヒューゼさん」


立ち止まって振り返るヒューゼ。


「何かな? 青井殿」


「なんか面白い本があったら貸して欲しいんですけど」


「あぁ、そんなことか。いいよ、別に」


と、万人に受けそうな爽やかな笑顔をしながらそう言うヒューゼ。


「それじゃあ、君はどんなジャンルが好みなのか教えてくれないか?」


「僕が好きなジャンルですか。‥‥‥特にないですけど、今読みたいものと言えば勇者の物語的なものを読んでみたいですね」


「そうか、じゃあ私の部屋から数冊持ってくるから好きなのを読めばいいよ」


なんともいい人なのだろうか、と青井は感じる。

最初はそこまでよく思っていなかったのだが、ここ数日で信用できる人だと改めて感じる青井。


青井が知る由もないのだが、本を取りに行っているヒューゼも似たようなことを考えていた。

ヒューゼは青井のことを勤勉な優等生と感じていたのだ。


それもそのはずだろう。


青井はこの屋敷に付いてから二日間エルフの里をうろつく事もせずに、ただひたすら魔法の本を齧り付くように見ていたのだから。

故にヒューゼは彼のことを気に入っていた。

ヒューゼという男は頑張っている若者を見ていると応援したくなる性分なのだ。


数分後、ヒューゼが分厚い本を何冊か持ってきた。

ドンっと大きな音を起てて机の上に本を置くと、本び被っていた埃が舞う。


その様子からどれだけ本が放置されていたか把握出来た青井は、苦笑いを浮かべる。

ヒューゼもここまで埃が溜まっているとは思わなかったのか、思わず埃を吸ってしまい咳き込む。


「ゴホッゴホッ!! すまないね。久々に出したから予想外に埃が積もってて。ゴホッゴホッ!!」


咳き込みながら謝罪をするヒューゼ。


そして、大きな音を起ててヒューゼが咳き込んだせいだろうか、ドタドタと慌ただしい音を立てながら走ってくる小さな人影が1つ。


ジェアである。


「どうかしましたか!?」


慌ただしくドンドンと音を立てながら走ってくるジェア。

その慌しさに思わず何度目かの苦笑してしまうのだが、ジェアは埃が舞っているこの状況に目眩がしたのか、思わずこめかみを抑えた。


だが、そこからの立ち直りは早く、青井とヒューゼに換気をするから窓を開けろと指示を出す。


断る理由もないし、非を感じている男2人は素直に従い、窓を開ける。


大分、空気が綺麗になってきたところで、ジェアによる説教がヒューゼを待ち構えていた。

ジェアの説教を聴いていると、所々に「ヒューゼ様は片付けが出来ないんだから」とか「普段しないことをするからこういうことになるんです」とか散々な言われっぷりであった。

説教は10分間にも続いた。

青井としては一昨日、ヒューゼがジェアにてきぱきと指示を出していた光景を思い出し、その光景と今の光景を比べて思わず笑ってしまう。

ジェアは説教が終わると、ヒューゼに細かい塵などを掃くので箒を持ってきてくれと、ヒューゼをぱしりに使うという青井にとっては度肝を抜かれた。


そうして、青井とジェアは2人きりになる。


「ジェアさんとヒューゼさんって主従関係なのに仲が随分といいんだな」


思わず笑顔でそういった。

これは先程の説教を含めての会話を見て感じたことだった。

ヒューゼは説教されている時も苦笑いを浮かべていたが、そこには悪感情など一切無いように感じた。

ジェアも同じような感じだ。


「そうですか?」


そういうジェアはどことなく嬉しそうにしている。


「あぁ。だって仕えている人にあんな態度、普通はとらないぜ?」


「確かに‥‥‥そうかもしれませんね」


先程までは明るい表情をしていたジェアの表情に少しだけ翳りが見えた。

青井はその表情を見て、エルフの里に来た初日の住宅街で見た奴隷のこと《何故か》頭を過ぎった。


その奴隷は男だった。

彼は上半身裸で座っていた。

鞭を打たれたらしき跡が蛇のように体中に刻まれており、首には無骨な首輪があった。

ズボンらしきものは履いていたのだが、それは大よそズボンと言えるレベルではない。

そんな彼は痩けた頬をしており、目が見えているのか不思議なぐらいな虚ろな瞳で空を見ていた。


そして、青井はそれが人生に絶望しきった顔であることを分かっていた。


それは他ならぬ青井自身が生前、就寝する際に押し寄せてくる孤独感と絶望感で塗れた時の表情にそっくりであったからだ。


「‥‥‥ヒューゼ様は、優しいんですよ。こんな奴隷の私すら同列に扱って下さってるんですから」


ジェアは少しだけ掠れた声で言った。


その掠れた原因が、埃で喉がやられたのか、はたまた違う理由なのか青井には分らなかった。


そうして、気まずい雰囲気が場の空気を支配したその時。


「箒を持って来たぞ!!」


そう言いながら登場したのは箒を取りに行っていたヒューゼだった。

だが、直後に焦ったような雰囲気を醸し出した。

何かと思えば、ちりとりを忘れてしまったらしい。


「そ、それじゃあ、私がちりとりを取りに行きます」


と、ジェアは言った途端に有無を言わさず部屋から出てしまった。

きっと、気まずさゆえの行動だったのだろう。

顔を青くしながら走っていくのを横目にちらりと見てしまった青井。


だが、それよりも青井は気になることがあった。


「ヒューゼさん。あんた、場の空気を読んで部屋に入ってきたな」


そう言いながらヒューゼに人の数倍凶悪な睨みを効かせる青井。

普通の人であれば、恐怖に包まれるほどの鋭く凶悪な目つきなのだが、ヒューゼはなんとも無さそうだ。


「‥‥‥やっぱりバレしまっていたか」


ヒューゼはそう言いながら緊張感無さげに後頭部を掻く。


ジェアが気が付いたかはともかく、青井はヒューゼらしき気配をドアの向こう側に感じた。


だが、気配がするだけで動かないところを見るとどうやらこちらの話を聞いているらしいかった。


それに、先ほどのちりとりを忘れたというのもわざとであるということも青井は理解していた。

青井とジェアの気まずい空気が漂う中、その場から脱出したいと思っているジェアには絶好の機会であった。

ヒューゼはそれを理解して、わざとちりとりを忘れたのだ。


二人で話すために。


「まぁ、そんな怖い顔はしないでくれよ。逆に私が空気を読んだから部屋に戻らなかったんだよ。あのタイミングが丁度良かったんだよ」


と、いきなり真剣な表情をしながら言うヒューゼ。


「‥‥‥君は《奴隷》というものを知っているかね?」


ヒューゼは青井にそう問い掛けた。

先程までとはうって代わり、その表情は何か厳しかった。


青井はこの世界の常識に疎い。

それ故に、この世界で言う《奴隷》というものは詳しく分からないが、住宅街の男の奴隷を見る限りまともではないという認識ではあった。


そのことをヒューゼに正直に話すと、青井の意見に同意しつつ《奴隷》について詳しく教えてくれた。


《奴隷》というのは大きく分けて3種類に分けられる。


戦争の勝者が捕虜や被征服民族を奴隷とする《戦争奴隷》


借金を返済出来なかった者の末路の《借金奴隷》


罪を犯したものがなる《罪人奴隷》


《戦争奴隷》は被征服民であるが故に、思うが侭に蹂躙される。

男は殺されるか、鉱山や農業に従事させられ、女子供は奴隷商に流され個人に売られる。

当然、女子供であるが故に力は無く、彼らは性奴隷として扱われる。


《借金奴隷》はその国が管理し、公共事業などの強制労働人員になる。

だが、ある程度人権が保たれており、低賃金だが給料も支払われ、借金を返済するまで奴隷という身分から開放されない。

それゆえ、《借金奴隷》は詳しく分けると《奴隷》ではない。


そして、最後に《罪人奴隷》だが、これは犯罪の重さに比例する。

例えば、万引き、食い逃げ等の軽犯罪は留置所で数日拘束されるだけで済む。

だが、これ以上の犯罪。

人攫いや殺人、強盗を犯すと《罪人奴隷》となってしまう。

《罪人奴隷》は《戦争奴隷》と同じく解放されることはない。

いや、組織がらみであれば《罪人奴隷》の落ちた自分を組織に買ってもらう、という手段に出ることは出来るが基本的にそんなことはない。


《奴隷》というのは人権は無い。

つまりは、代えが効く消耗品と同じだ。

《壊れた》ならばまた買いなおせばいい。

そもそも、《奴隷》は《物》なのだからそれは《生き物》ではない。


「そして、ジェアは《罪人奴隷》なんだ」


最後にそう言ってヒューゼは説明を終えた。


青井はそのヒューゼの言葉にジェアが青井に愛の告白したときに言ったある言葉を思い出す。

『私は元々、盗賊としてそれなりに名を馳せていました』という言葉だ。


「《罪人奴隷》と言っても彼女は国に捕まったわけじゃない」


青井は怪訝な表情をする。

それがどういう意味か良くわからなかった。


「と、いうと?」




「ジェアは私たちエルフを奴隷として売りさばこうとしたところを我らエルフによって捕まえられて、《罪人奴隷》になったんだ。建前上はね」



青井は一瞬、ヒューゼの言葉を理解することが出来なかった。

だが、その言葉の意味を咀嚼し、そしてやっと意味を把握することが出来た。


信じられなかった。


口をあんぐりと開けたまま呆然としている青井。


「驚くのは無理もない。今のジェアからは想像出来ないから」


優しい口調で青井を諭す。


だが、次の瞬間にまるで射止めるような鋭い視線で青井を睨む。


「だからと言って、君はジェアの想い人だ。そんな君だからこそジェアのことを話す。理解しているかな?」


ヒューゼは低く唸るようにそう言った。

その重くのしかかる様な言葉に我に返る青井。


青井の心の中はまだまだ状況を把握できていなかったのだが、だからと言ってここで引くほど女々しいつもりは無い。


覚悟を決めた青井はヒューゼの射止める視線を真正面から睨み返し、重々しく口を開く。


「詳しく教えてださい」


暫く睨み合っていた青井とヒューゼであったが、青井の覚悟が分かったのかヒューゼは普段の顔付きに戻る。


そして、ゆっくりとジェアの過去について話始めた。



念の為に書いておきますが、最初の食事の描写は青井の一人称視点で、その次は三人称です。

わざわざ英語にしたのは、感じだと少しだけダサく感じるからです。


っていうか、なんで三人称にしたんだ、て思う人はいるかもしれませんが、最近読んだほんの影響です。

あの銀行マンのドラマの原作の人が書いた物語が余りにも面白かったです。

心理描写や状況描写などが良く出来ており、三人称の良い点を目にしてしまった僕は三人称を書かざる負えなかったんです。


というわけで、読んで頂きありがとうございます。

ご意見や感想などじゃんじゃんと送って下さい。待っています。



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