考察
※3/18日に改稿しました。ストーリーに響くぐらい修正したので改めて読み返して頂けると助かります。
アルジェントヴォルフは話終わって、暫しの静寂が訪れる。
レイさんとヒューゼさんは考え込んでしまっているのか、ヒューゼさんは顎に手を当てながら目を閉じ考察をし、レイさんの場合はいつの間にか取り出した資料を確認している。
しかし、僕もアルジェントヴォルフの話を聞いて、さすがに考え込んでしまう。
ますは、アルジェントヴォルフが語っていた腐敗した地帯の話だ。
アルジェントヴォルフの話では魔力がその地帯に流れておらず、そしてこの森の特性のおかげで魔力が通っていない地帯は全てのものが腐敗していた。
そこは、レイさんと僕が腐敗した地帯に調査した内容と全く変わらない。
僕たちが行った時には、魔力を調査するような魔法は使用してはいないが、全てが腐っていて鼻を摘みたくなるような腐臭が漂っているところは寸分狂わず同じである。
だが、肝心の問題は『黒い人型』である。
アルジェントヴォルフが闘った『黒い人型』は華奢な体格をしており、魔法を主に使用してきたらしいが、僕が闘った『黒い人型』はそれとは真逆であった。
僕の二倍ぐらいの巨体に、魔術などは発現しようとはせずに両手に持って僕たちに襲い掛かったものは棍棒だ。
もしかして、『黒い人型』には魔物にも種類があるように様々な種類があるのだろうか。
いや、それは考えにくいかもしれない。
すると、アルジェントヴォルフが突如僕の膝を枕にして寝始めてしまった。
なんとも自由奔放なのだろうか。
まぁ、子犬になつかれている感覚に似ているから悪い感じはしない
取り合えず、頭を優しく撫でると耳をぴくぴくと動かしながら気持ち良さそうにしている。
そうしてアルジェントヴォルフの頭を撫でて和んでいると、ヒューゼさんとレイさんが口を開いた。
「レイ君、資料の整理ご苦労様。それで、大体の状況は把握できたか?」
「はい。 大体は把握することができました」
向こう側エルフ二人の意見がどうやら固まったようだ。
しかし、レイさんのほうは少しだけ驚いているようにも見えなくも無い。
「アオイ殿。こちらの資料を見ていただきたい」
そうして、渡された二枚の羊皮紙。
そこにはエルフの女性と豚面の男性とも女性とも見分けがつかない写真の貼られた個人情報のようだった。
適当にその渡された文章に目を通す。
エルフの女性の顔写真が貼られているほうの羊皮紙を確認し、そして、豚面の顔写真が貼られているほうの羊皮紙も確認する。
豚面の顔写真の種族は『オーク』と呼ばれる種族だそうで、レイさんとの行動していたときに何回か状況説明の際に耳にした名前である。
そして、そこには多くの個人情報が書いてあって、僕にこれを渡した意図はなんなのだろうかと思いながら呼んでいたとき、
二枚共、上から二行目辺りに書かれている言葉に思わず注目した。
エルフの女性の羊皮紙には『一ヶ月前から失踪』と書かれており、オークのほうの羊皮紙には『ここ数日の間に行方不明』と書かれている。
そう、アルジェントヴォルフが『黒い人型』と敵対したときの時期と、僕たちが『黒い人型』と敵対したときの時期と一致していたのだ。
そして、僕の予想――いや、ヒューゼさん達の考えていることが正しければ『黒い人型』がアルジェントヴォルフのときとかなり違うことも理解できる。
が、これは流石に狼狽してしまうほどの発想だ。
それもさすがに決めつきすぎだと考えながらも、正しいかもしれないといっている自分がいる。
「これは‥‥‥一体どういうことなんです?」
僕は思わずヒューゼさんの方へ向いて質問した。
「数日前に婚約寸前の婦人が失踪したという知らせが届けられてね。私たちは一生懸命に捜索したんだが、一切手がかりは見つからずに夫人には悪いが『失踪』で処理された。それからここ数日最近には、『オークの集落』から狩に出て行った狩人の一人が帰ってこないという知らせが届いた。『オークの集落』では一目置かれている存在であり、その存在を打倒しうる危険な魔物が発生している可能性があるから充分に注意するようにという内容だった」
「だって‥‥‥これじゃあ。」
そして、気が動転しながらも応える。
それは自分がいきなり殺されかけたときよりも激しい衝動だったかもしれない。
「あの『黒い人型』がその人達を取り込んだ――ということですか」
僕は唖然としてしまった。
「私は君たちが調査に行っている間に、ここ最近起こった様々なことを調べていたんだ。そして、ここ最近は行方不明者が続出している」
その後に「まだまだ証拠が足りない」という言葉をわざわざ付け足すヒューゼさん。
「故にこれは可能性の一つでしかない。だが、これでも幾つもある可能性のうち一番高い可能性なんだ。まだまだ調査というか『黒い人型』についての情報が圧倒的に足りない」
そして、次に新しい一枚の文字と魔方陣が書かれた羊皮紙を手渡された。
「‥‥‥これはなんですか?」
思わず聞いてしまうのだが、ヒューゼさんは何も言わない。
説明を受けるよりも読むほうが早いということを沈黙を以って言っているのだろう。
手渡された紙を見る。
『森の北東にある‘ドレイド草原‘に召喚術式を発見。既に数ヶ月経っており発現は出来ないがその書き込み具合と、見たことのない言語により非常に強力な種が放たれた可能性大。しかし、この付近に存在する‘ゴブリンの集落‘は襲撃されていない模様。警戒を怠るな』
という、端的な文章が刻まれていた。
そして、その下には書かれていた魔法陣が描かれている。
「次の調査はここに出向く必要がある。もちろん、私も随行しよう」
「これは、自分の目で直接見に行くんですか」
「あぁ、これでも私はこの里で一番の魔術師であると自負しているからね。そして、君には僕の護衛をよろしく頼みたい」
「はい。 わかりました」
そう返事をすると満足げに頷く
「それでは時間がもう遅くなっていることだし、解散にしよう」
そして、終わりの号令が掛かる。
号令が掛かっている最中に、レイさんも相当眠気を押し殺していたのだろうか。
欠伸を我慢したせいで目の端に涙がたまっている。
ちなみに、アルジェントヴォルフは既に僕の膝を枕にしてご就寝している。
そのせいだろうか。
号令を掛けるヒューゼさんは少しだけ苦笑してしまっていた。
それにしても――今晩、どうしようかな?
アルジェントヴォルフも僕の膝の上でご就寝しているし、動ける様子も無い。
レイさんもカクカクと頭を下げては上げて、という眠気との攻防を繰り広げている。
やはり、16歳の少女には疲れきった一日に違いない。
僕もちょっとしたどころではなく大冒険に違いないのだが、全く眠気が襲ってこないのだ。
そして、そんな状況に苦笑するヒューゼさん。
僕もつられて苦笑してしまう。
「今夜は泊まっていきなさい。レイ君も含めて‥‥‥って、もう寝てしまったか」
どうやら、レイさんも眠気には勝つことが出来ずにギブアップしてしまったらしく、背もたれに全体重を任せて目を瞑って無防備に寝てしまっている。
お世辞にも信頼できる大人二人だからと言って、男の前で無防備な姿を晒すというのはいかがなものではないだろうか。
「それで、どうするかい?」
そして、ヒューゼさんは僕に改めて質問してきた。
これから戻るとしてもかなりの時間を要するだろうし、それにこんなに気持ちよさげに寝ているアルジェントヴォルフを起こすことは忍びない。
「なんか今日はヒューゼさんに頼りっきりですね。 それでは甘えさせて泊まらして頂くとしましょうか」
そうして、レイさんを含む僕たち一行はヒューゼさんのお宅に泊まることになった。
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僕は背中にアルジェントヴォルフを背負い、小脇にレイさんを挟んで移動する。
アルジェントヴォルフを背負ったところで、レイさんはヒューゼさんに担がれて移動されるもんだと思っていたが、なぜか僕が担いで移動することになってしまった。
少々、乱暴な持ち方になってしまっているのだが、これもいたし方が無い。
恨むならばヒューゼさんを恨むがいいさ。
そして、そんな自分は今、泊めてもらう部屋に向かっているのだが、中々に広い屋敷であることが窺える。
アルジェントヴォルフの洋館は空間魔法を使用しており、それ故に洋館の見た目以上に中身は広いのだが、このヒューゼさんの館は普通に広い。
流石、権力者とでも言ったところだろうか。
生前の僕が住んでいたのは、都会にあるワンルームマンションだったが、それと比べるのはおこがましいだろう。
無駄に装飾の凝った手摺がある階段を上り、廊下を進む。
廊下は地面には真っ赤な絨毯が引いてあり絨毯の隅にはやはり金色の刺繍が施されている。
壁には光を放つランタンがあり、暖色系の光を放っている。
そして、それが汚れのない真っ白な壁と高級感溢れるレッドカーペットと合わさり良い雰囲気を醸し出していた。
そして、一つの扉の前に到着する。
扉は木で出来ており装飾の類は無いのだが、一目見ただけでかなり良質な木を使用していると分かる扉だった。
「ここはレイ君の部屋」
そうやって僕たちの立っている前の扉を指す。
「そして、右の部屋はその子の部屋で、左の部屋はアオイ殿の部屋だな」
そうして、レイさんの部屋を中心として部屋を指差して伝えるヒューゼさん。
「はい、わかりました」
そうして、中央の部屋に入る。
部屋の内装は化粧台とテーブルとそれを囲うように四つの椅子が並べてある。
その奥には見るからにふかふかそうなベットが置いてある。
取り合えず、ベットの方まで進み小脇に挟んでいたレイさんをベットの上におろす。
下ろした際に少しだけ身を捩ったが、起きるまではいかなかったようで僕はそのままレイさんの扉を後にして、次にアルジェントヴォルフに割り振られた部屋に入る。
内装は別にレイさんの部屋と変わらなかった。
そしてレイさん同様にベットに近付き、ベットにアルジェントヴォルフを下ろそうとする。
しかし、ベットに横たわらせた際に服の裾を掴んできて中々に離そうとしなかった。
だが、そんな様子を見て少しだけ可愛いと感じてしまう僕はなんと甘いことなのだろう。
だが、親の気分を感じることは決して悪くは無いことなのだろう。
僕はなんとなく、銀髪のふわふわとした頭を撫でると、気持ち良さそうに口元をむにゃむにゃとさせて寝返りをうつ。
すると、裾から手を離してくれた。
「おやすみ」
僕は小さい声でアルジェントヴォルフを起こさないように言いながら、部屋を出て静かに扉を閉める。
僕もこのまま自分の部屋に行きたいところなのだが、さすがにこの服で部屋に上がると汚れを撒き散らすのと同じ行為だろう。
故に体の汚れを落としたい。
体の汚れを落とすには風呂のようなものが一番なのだが――あるだろうか?
取り合えず聞いてみよう。
「ヒューゼさん。ここに風呂ってあるんですか?」
「あぁ、あるよ。 僕も君のその汚れを見て、流石にその格好で寝させるわけには行かないと思っていたんだ。付いてきなさい」
そう言って来た道を戻るヒューゼさん。
どうやら、一階に風呂があるらしい。
しかし、この世界に風呂というものがあって安心した。
僕の知っている風呂かどうかはさすがに有り得ないかもしれないのだが、ヒューゼさんの言動からは体の汚れを落とす場所という感じなので、僕のさっぱりしたいという欲求は解消されるだろう。
そう思い来た道を戻る。
そして、風呂の前に到着したのだが、ここで見るとは思わなかった飾りに思わず狼狽してしまう。
「こ、これってなんですか?」
おそるおそる尋ねる。
「これって、――あぁ、普通は分からないな。これは『暖簾』って言ってフウリックが提案したものだ」
あぁ、そうか。
たぶん、この家の和洋折衷を具現化したような屋敷は、フウリックさんの趣味全開の家なのだろうと把握することが出来る。
目の前にある暖簾だってそうだし、ここの靴を脱ぐという行為だってそうだ。
所々に日本色が濃厚なのは故郷を懐かしんだのだろう。
それにしても一般家庭に風呂の前に暖簾を掛けるという習慣はあるだろうか。
少なくとも僕は知らない。
多分、暖簾はフウリックさんの趣味だろう。
だとしたら、中々に渋いセンスだと思わないはずが無い。
まぁ、ここまでこだわっているんだ。
風呂も期待できるだろう。
感想とご意見をお待ちしております!!
私事ですが、最近はなろうの読者側になっていまして、某錬金術のお方の作品や日間のほうの作品を読ませてもらっています。
やっぱ、日間に乗っている人達はテンポのよさが違いますね。
以上私事でした。




