応援部隊が来た。解決ではなく、問題を持ってきた③
大鉄が抽出装置の換装作業を始めた。
氷室と水無瀬は、非常階段E-7から下層へ向かった。D-07の封印補修のためだ。
大鉄が作業をしている間、俺は携帯型抽出ユニットで各個体の応急抽出を回した。携帯型ユニットは弁当箱サイズの小さな装置で、椅子に座らせる必要がない。個体の手に触れるだけでエネルギーを吸い出せる。
便利だ。便利すぎる。なぜこれを最初から支給しない。
「灰嶋さん、それ一台500万ポイントするんですよ」
大鉄が作業しながら言った。
「500万」
「管理者の月給6250ヶ月分ですね」
計算してくれなくてよかった。520年分の月給。この装置一台で、俺は520年間無給で働いたのと同じことになる。
「これ、壊したらどうなります」
「弁償ですね」
「520年ローンですか」
「いや、弁償できないので、たぶん閲覧制限になります」
「人間が閲覧制限になるんですか」
「存在自体が機密扱いになるんですよ。……冗談ですけど」
冗談であってほしいが、この組織ならやりかねない。
携帯型ユニットでノクスの手に触れた。
「……冷たい」
「ユニットが冷えてるんです。すみません」
「べつに。あんたの手のほうが冷たい」
俺の手のほうが冷たいのか。二時間走り回って汗だくだったはずだが、体温が下がっているのかもしれない。
ノクスのエネルギー値。109%→105%。効率がいい。NT-3500の三倍は出ている。500万ポイントの価値はあるかもしれない。
「ノクス、体調は」
「……ふつう。さっきより楽。下のうるさいの、少し弱くなった」
氷室たちが下層で封印補修を始めた効果か。深層からの圧力が弱まっている。
「チョコ」
「今月の在庫はゼロです。来月分を二個先払い済みなので、来月届く三個のうち手元に来るのは一個です」
「……計算合わない」
「合ってますよ」
「絶対合わない。あたし二個しかもらってないのに、なんで残り一個なの」
「一個目が一個半で、二個目の分と合わせて来月分から差し引くと――」
「わかんない。もういい。とにかく来月一個は少ない」
「文句はD-07に言ってください。あっちが漏洩しなければ、こっちの予算は荒れません」
「深層のせいでチョコが減るの、意味わかんないんだけど」
意味は分かる。分かるが、ノクスに因果関係を説明する気力はない。




