表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末世界の管理業務。人材より人命が足りていません――欠勤事由:死亡のため  作者: ぶらっくそーど
第一項:死なないこと

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/169

平穏は前借り。利息は割増で請求される②


 午前の抽出(ドレイン)。今日はノクスから始める。


 抽出(ドレイン)室。ノクスは椅子に座っている。今日も毛布を持ち込んでいる。



「ノクス、始めますよ」


「……ん」



 装置を起動する。エネルギー値は104%。安全圏まで下げる、いつもの作業。


 104%……101%……98%……。


 順調に下がる。ノクスは目を閉じている。



「ノクス」


「……なに」


「来月のチョコ、月初に三個まとめて渡しますか? それとも分割?」


「……まとめて」


「分割のほうが長く楽しめますよ」


「あたしを子供扱いしないで」



 大きい子供の発言だが、置いておく。



「分かりました。月初にまとめて」


「……ありがと」



 94%……91%……88%。安全圏。



「終わりです」


 ノクスは目を閉じたまま。


 しかし、毛布の中で何かがもぞもぞと動いた。



「……ね」


「はい」


「あんた、最近よくあたしの顔を見るね」


「……」



 ばれていた。気づかないふりをしているつもりだったが、無駄だった。【忘却の魔王(オブリビオン)】の観察力を舐めていた。



「正直に言いますか?」


「うん」


「ノクスの瞼の裏に、一瞬だけ別の色が見えた気がしました。少し前に」


「……ふーん」


「気のせいかもしれません」


「気のせいじゃないと思うよ」



 ノクスが薄目を開けた。金色の瞳。今は、いつもの色。



「あたしの中、ときどき揺れるの。下から呼ばれてるみたいに。そういう時、たぶん、外にも漏れてる」


「ノクスは、自分の本来の姿を知ってるんですか」


「知ってる」


「……」


「べつに、隠してたわけじゃないよ。訊かれなかったから言わなかっただけ」



 訊かれなかったから言わなかった。それは、確かに、隠していたわけではない。



「ノクスは、自分のことが怖いですか」


「怖くない。あたしだから」


「俺は、ノクスのこと、怖いです」


「うん。知ってる」


「でも、ノクスの管理者は続けます」


「うん。それも知ってる」



 ノクスは目を閉じた。



「……あんたが怖がりながらここにいるの、悪くない」


 悪くない、というノクスの最大級の褒め言葉だ。たぶん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ