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査察官は数字しか見ない。しかし、数字に載らないものもある②
10時00分。
隔壁扉の外にある来客用ゲートの認証音が鳴った。
戸波さんと一緒にゲートへ向かう。分厚い扉が開き、一人の女性が立っていた。
黒いスーツ。黒い髪をきっちりとまとめている。端末を三つ持ち、うち一つは常にデータを流している。目つきが鋭い。鋭いというか、刃物だ。視線が触れただけで査定されている気がする。
「品質管理部、榊原環です。本日の査察を担当します」
声にも温度がない。配給品の栄養ブロック並みに味気ない。
「第七区画統括責任者の戸波です。こちらが管理者の灰嶋です」
「よろしくお願いします」
榊原は俺の顔をちらりと見て、端末に何か入力した。
「管理者の灰嶋司、20歳。配属日は4月1日。勤務日数22日。臨界点生存実績1回。防護スーツの損耗率――100%?」
「一着全損しました。臨界点対応時に」
「現在の装備は?」
「新品に交換済みです」
「交換コストは?」
「申請中です」
「申請中。つまり未計上」
端末にまた入力された。二秒で査定が進んでいく。この人、会話のすべてを数字に変換している。
「では、区画内を見せてください」




