地下117階より下には、何がある? 答え:行きたくないもの全部⑤
リビングに四人を集めた。ノクスは自室で準備中。
「俺とノクスが、これから下に降りる。脱走した変位個体の捕獲を手伝いに」
セラが目を丸くした。
「つかさが下に行くの?」
「行きます」
「あたしも行く!」
「ダメです。セラが行くと廊下が歪んで通れなくなる」
「……それはそう」
メルトがノートを掲げた。
『ノクスだけ? わたしは?』
「メルトにはここの守りを頼みたい。俺がいない間、四人のエネルギーモニタリングをしてくれ」
『了解。端末で連絡は取れる?』
「地下140階くらいまでは電波が届くはず。それより深いと分からない」
ラグナが手を挙げた。
「あたしは!?」
「ラグナは走らないでください。俺がいない間に通路を壊されると、帰り道がなくなる」
「走らない! がんばって走らない!」
カイムが目を閉じた。
「……司くん。下に行くのは正しいと思う。でも、一つだけ」
「なんですか」
「地下150階を過ぎたあたりで、空気が変わる。それより下は、わたしの目も届かない。時間がぐちゃぐちゃになるから。だから、150階より下では、自分の判断だけが頼りになるよ」
「カイムの予知なしか」
「うん。ごめんね」
「謝らなくていい。150階までは見えてるんだろ?」
「うん。150階までは、司くんとノクスが一緒に歩いてる姿が見える」
「その先は?」
「見えない。でも、見えないのは、悪いことが起きてるからじゃないと思う。わたしの能力が届かないだけ」
届かない。150階以下は、時間の境界を歩くカイムですら観測できない領域。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
セラが言った。
『気をつけて。』
メルトがノートを掲げた。
「つかさ、ぜったい帰ってきてね!」
ラグナが叫んだ。床が少し揺れた。少しだけ。
「帰ってきます、走って」
「走っちゃダメって言ったのに!」
「自分は走っても壁が壊れないので……」
「えーっ、ずるい!」
「ずるくありません、これが普通です」




