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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 笑顔の輪 】



『みなさーん、ちょっとしたハプニングプロポーズがありましたけど むしろ盛り上がりましたねー!今日はリードイスト王だけではなく、みなさんが大好きな あの方達にもお越し頂いてまぁーす!それでは登場して頂きましょうっ、歌姫シオン・ヴィーナスちゃんと、ケント・ウッドベルくんでーす、どうぞっ』



猫耳MCがそう言うと、櫓の上空に大きな魔法陣が出現し 眩しいほどの光が櫓を包み込んだ。



発光するように白光りした櫓から光が弱まっていくと、そこには櫓ではなく ライブステージが出来上がっていた。



ステージの中央には猫耳MCの姿はなく 代わりに先程と同じ浴衣を着たシオンとケントが立っている。



「ほわあぁー シオンちゃん、キッッタァー!あぁー、なんであたし さっき気絶なんかしちゃったんだよぉ。シオンちゃんほんっとカワイイッ!シオンちゃーんっ、シオンちゃーーんっ」



すでに盛り上がりまくっていた広場の人達であったが、シオン達が姿を現わすと 火に油を注いでように大騒ぎになった。



人々の火力を底上げした油であるシオンは その盛り上がりに心躍らせるような笑顔でみんなに向かって大きく手を振りながら挨拶を始めた。





『やっほー みんなアチチなくらい盛り上がってるねー!王様達がしっかりバッチリ会場をあたためてくれたんだねっ!まだまだ盛り上げていくよぉー!楽しさはどれだけ膨れ上がっても良いよねー?』



〝イェースッ!今年のカカカ祭りも最高だぁぁぁぁ〟


〝王様に英雄に歌姫にケント君なんて贅沢すぎるわぁ〟


〝さっすが学園長様だなっ、俺達が欲しているものをわかってらっしゃる〟



多くの人は今日のスペシャルゲストはリードイスト王だけだと思っていたのだが、それだけではなく歌姫達も呼ばれていた事が嬉しいようだ。


毎年すごい盛り上がりを見せるカカカ祭りではあるが、世界的に有名な人物がゲストとして2組も呼ばれたのは俺が知る限り今回が初めてなので、みんなの喜び様も納得だ。




『王様の挨拶で真っ赤に燃えて、英雄さんの結婚宣言でみんなに黄色い笑顔が咲いてる。よぉーし それならまずは その綺麗な色に心地良い涼しさとハッピーな色をつけちゃおっか!いっくよぉー!』



ラララ〜♪


ララ ラララ〜♬



歌ではない。

歌詞もない たった一文字の言葉にリズムを加えただけのシオンの声が広場に広がると


心地良い風が俺達全員の頬をくすぐった。



それまでは太陽の日差しにも負けない程に熱く燃え上がっていた人々であったが、その風に包まれると 熱気の色が変わっていった。



王の話しを聞いた時の燃えるような熱はそのまま。

ジャスティンの告白から生まれた楽しさもそのまま。

その上で そこに心地良さと幸せな気持ちが違和感なく追加されたような気分。




『うんうんっ、夏の暑い日に涼しい気分を味わうっていいよねっ!じゃあこのままライブ始めちゃうよー!って思ってたんだけど、実は今日 すっごい可愛い子に出会ったのっ!ホッペにムーブペイントでわたしを描いてくれててね、その子がとっても可愛かったし 嬉しかったのっ』




言った通りに広場にいる人達に涼しい風とハッピーな気持ちを届けたシオンが、とても嬉しそうな顔をしながらそう言っている。




そして俺の目の前にいるマキナの頰にはシオンが描かれている。


わざわざダイゴロウ先輩の結界で人払いをしてから転移して学園島へやって来たシオンが、俺達以外の一般人と会っていたとは考えにくい。


と言うことは、今シオンが言っている可愛い子というのは



「お、お、お、おねえちゃんっ!あたしが気を失う前にシオンちゃんと会ったのは夢じゃないんだよねっ!?も、も、も、もしかして 今シオンちゃんが言ってた子って あたし!?あたしかなっ!?」



マキナも俺と同じ考えに至ったようだ。


動揺と期待にあたふたするマキナをよそに、シオンは続けた。



『きっと その子も今ここに来てくれてると思うの。だから ライブの一曲目はその子に決めてもらいたいなぁーって思ってるんだ!もし来てるなら、1番最初に聴きたい曲のリクエストをして欲しいなっ。好きな曲をイメージしてくれれば、わたしが見つけるからっ、お願いっ!』



シオンはそう言うと、ギュッと目を閉じた。



「あ、あたしで いいのかな?違ったら違った時だよねっ!よぉーし、じゃあ何をリクエストしようかなっ、全部大好きなんだけどなぁ・・・。うん、これに決めたっ!イメージすればいいんだよね?んーーー、んんっーー」



マキナは自分だと確信したわけではなく、自分だったら嬉しいけど 違ったら仕方ないといった様子で シオンのお願い通りに好きな歌を必死にイメージしていた。


目を閉じて必死にイメージするマキナの頬では、ムーブペイントのシオンがコミカルな踊りを披露しており 真剣な形相のマキナとのギャップが微笑ましい。




『見つけたっ。リクエスト届いたよっ!スマイル・リンク・リングだねっ、わたしもこの歌 大好きっ』



シオンが感じ取ったリクエスト曲を発表すると、マキナは驚きと喜びで乱舞しそうになっていたので どうやらシオンの言った可愛い子というのはマキナで正解だったようだ。



シオンと繋がった瞬間にマキナにもそれが感じ取れたらしく、喜び方が尋常じゃない。



『それじゃあ今度はみんなにお願い!近くの人と手を繋いでくれないかな?知り合いでも知らない人でも関係なく、手を繋いじゃおうっ』



シオンのお願いを聞いた人々は シオンの願い通り 友達も他人も関係なく手を繋いでいき、シオンのいるステージを囲むように何重もの輪が出来ていった。



俺達も近くの人と手を取り合い 輪の一員になっていく。


といっても俺達は仲間内で固まっていたので、両端以外は知り合いと手を繋いでいる。


ちなみに並び順は左端からセル、ハイナさん、サディス、マリア、俺、イリア、マキナ、ラピス、デュランの順番だ。



シオンのお願いからわずか10秒ほどで輪が出来上がり、それを見届けたシオンが満足そうに笑顔を見せている。



『みんなありがとー、今日はカカカ祭りだから、あははの部分の歌詞はカカカに変更しちゃうねっ!この歌を知ってる人も知らない人も、自由気ままに気の向くまま一緒に歌っちゃおうねっー!じゃあさっそく一曲目、いっくよぉー』



『ーーーーーーーーーーーーー


カカカー うふふー えへへ yeah yeah


カカカー うふふー えへへ yeah yeah yeah


〝うおぉぉぉいぇい いぇい いぇーい〟



ほら つ な い だ 手


その 先を見てごらん


ほら い と し い あの子の


笑顔が咲いてるよっ



ーーーーーーーーーーーーーー』




観客の合いの手を織り交ぜながら、シオンらしい元気一杯の歌が会場を大いに盛り上げた。



歌詞にあったように、繋いだ手の先を見てみると 歌詞の通り そこには楽しそうに笑うイリア達がいる。


いつも見ている当たり前のその笑顔が、いつもより輝いて見えるのは シオンの特別なライブのせいなのだろうか。



『ーーーーーーーーーーーーーーー


いと し い あの子の


その 先 も 見てごらん


ほら キ ミ か ら広がる


スマイル リンク リングッ


ーーーーーーーーーーーーーーーー』




俺の右手に繋がるイリア、そのイリアの右手に繋がるマキナ、その先もずっとずっと笑顔が繋がっている。



シオンの歌になぞらえる様に 広場に広がる笑顔の輪。


どこまでも途切れる事なく いつまでも終わる事なく この輪が続いていけばいいなと、俺は思った。





シオンがこの会場に姿を見せた時から、ずっと明るい雰囲気が充満している。


楽しくもあり、幸せな気持ちでもあり、形容し難い幸福感が溢れてくるようだ。



気が付けば、俺も笑顔になっていた。


楽しいから笑っているのか、笑っているから楽しいのかわからない。


イリア達が楽しそうだから 俺は今 幸せな気持ちになっているのかもしれない。


もしそうであるならば この気持ちは普段から感じている事なのだと思う。


でもそれをこれほどまでに意識した事はない。


シオンの歌が その人にとっての幸せを強調させて気付かせてくれているのかもしれない。



ーーーーー



ーーーー



ーーー



ーー




ずっと続いて欲しいと思っていたが、シオン達のライブはたった4曲で幕を閉じた。


楽しかったサプライズライブが終わり、祭り客達は少し寂しい気分になった者もいたが リードイスト王との約束もあり、その後も全力でカカカ祭りを楽しむ事にしようと気持ちを切り替えて櫓会場から散って行った。



他の人達と同じように 俺達も引き続き祭りを楽しむ為に場所を移動する事にした。

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