【 一途な想いは声援と涙と友情を生む 】
ーーーー櫓会場 広場
リードイスト王の挨拶が終わると、広場の人々はもの凄い熱気を立ち上らせながら盛り上がっていた。
周りの人達と同じようにリードイスト王の挨拶を聞いていた俺達の中で、他の人達と同じ様にワイワイ騒いでいるのは マキナとセルとサディスさん。
ハイナさんは はしゃいでいるセルを恥ずかしさと苛立ちの混ざった顔をしながら 何度もセルの足を蹴っており、
イリアはマキナがハイテンションのまま どこかに走って行ってしまわないように必死に押さえている。
「テレビなどで よく拝見してましたけど、セントクルスの王様はとても素敵なお方ですね」
「ふんっ」
ラピスは実物の王様を見れて感激したのか 話しに感動したのかはわからないが、すでに王の姿がない櫓上部をキラキラと目を輝かせながら見ており、その横でデュランが不機嫌そうに鼻を鳴らしていた。
かく言う俺も ラピスとは少し違うが、感動にも似た高揚を感じていた。
つい先日、偶然ではあったし まともに会話など出来たわけではないのだが、手を伸ばせば触れる程の近距離で道案内をしてくれたリードイスト王。
その人物が これだけ多くの人の前で話しをし、たった数分の挨拶で広場に集まった人達に感動を与え 称賛されている事が、なんだか嬉しいような誇らしいような…そんな奇妙な気持ちを感じさせてくれていた。
「いててててっ、どうしたマリア?」
王様の話しに感動した人達を見ながら 第三者的な感動に浸っていると、合流してからずっと俺の背中に張り付いているマリアが俺の耳を引っ張ってきた。
おそらく先程から呼び掛けていたのだろうが、俺が気付かなかった為 耳を引っ張るという荒業に出たようだ。
「…ばくはつ、すんぜん?」
なにがだよっ!
爆発ってなんだ?
これだけ沢山の人がいるのに全く気にせずイチャイチャしてるそこのリア充カップルの事か?
それともまさか 膀胱?
トイレに行きたいって事なのか?
それにしてはイライラしている様子も我慢してる様子もない。
結局 何が言いたいのかわからなかったので確認する為 マリアの方を振り向くと、マリアは先程までリードイスト王が立っていた場所を指差していた。
マリアの指差した先にある櫓上部にはリードイスト王とサラ先生の姿はなく、進行役の猫耳MCとジャスティンがいるだけなのだが…
「ん?どうしたんだろ?」
ジャスティンの様子がおかしい。
遠目からなので状況はよくわからないが、ジャスティンは俯いたまま肩を震わせており マリアが言うように、爆発寸前でなんとか堪えている様にも見える。
「爆発寸前って、あの人の事か。何かあったのかな?」
俯くジャスティンの横では 猫耳MCもどうしたらいいかわからないといった様子であたふたしている。
普通ではないその様子に 心配にはなったが、俺にはどうする事もできないので しばらく様子を見ていると
突然ジャスティンが顔を上げ、先程リードイスト王が立っていた拡声魔法陣の前に立った。
『うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
ジャスティンの突然の咆哮に広場にいた人達は驚き、発信源であるジャスティンへと視線を集めた。
ジャスティンの隣にいる猫耳MCも驚いた顔をしながら、慌てて拡声魔法陣を消し ジャスティンに何か声を掛けていたが ジャスティンはその場を離れるつもりはないようだ。
『陛下は平和への宣誓をされたっ!それなら俺もっ、いまっ、ここで皆様に宣誓をさせて頂きたいっ!』
拡声魔法陣を使わなくても広場中に聞こえる大きな声でジャスティンが叫んだ。
猫耳MCも なんとかジャスティンを後ろに引っ込めようと頑張っているが、女性1人の力でどうにか出来るような人物ではない。
『俺はっ、サラとっ、結婚する事をっ!ここに誓いますっ!!!』
ジャスティンが燃え上がった感情を爆発させ、大きな声で結婚宣言をした。
そして それを聞いた人々からは沢山の声援と笑い声が贈られた。
〝その諦めの悪さっ、素敵ですぅぅぅ、いつかサラ様にもきっと伝わりますよっ〟
〝今年こそは成就するといいですねジャスティンさまぁ〟
〝あっはっはっ、サラ様は鉄壁だぞ!頑張れジャスティン様〟
『ありがとうございます!はっはっはっ、今年こそは皆様に良い報告が出来そうな気がっ、ぐっ、ぐおぉぉ・・・』
スポーツの後にシャワーで汗を流した時のような清々しい笑顔で話していたジャスティンであったが、突如 後方から飛んできた鞭に首を絡め取られ 下からは見えない櫓の中央へと引っ張られていった。
間違いなくサラ先生の仕業だ。
夫婦漫才のような喜劇を見せられた広場の人達からはジャスティンを心配する声など一つも上がらず、笑い声だけが上がっている。
というのも、このジャスティンとサラ先生のやり取りは もう恒例のようなもので、みんな色々と察しているからだ。
「あれほどに真っ直ぐ愛を伝えられるなんて、素敵ですね。少し羨ましいくらいです」
「ふふっ、ラピスちゃんは大人しくて控え目だから あれくらい積極的な人が合うかもしれないね」
「えぇー!?ラピは絶対 軟弱系男子の方が合ってるよー。ラピって普段はおしとやかだけど怒るとめちゃくちゃ怖いし、絶対 男を尻に敷くタイプだと思うけどなぁ」
女性陣はなにやらジャスティンの告白で盛り上がっているようだが、正直 俺はそっち系の話が苦手なので入っていけない。
マリアは爆発発言の後は一言も話さず俺の背中に張り付いているので何をやっているのかわからないし、少ない男性陣のうち、セルはいまだに櫓上部にいる猫耳MCに見惚れている。
なので なんとなくデュランに声をかけようとしたのだが、デュランは女性陣の話に気になることがあったのか 色恋話しをするイリア達の方へと どしどし歩いて行ってしまった。
しかしデュランが色恋話しに興味があるのは意外だった。
デュランといえばシスコン、もしくはサディスのサンドバッグというイメージが強過ぎたので 恋愛に興味などないと思っていたのだが、やはりデュランも思春期の男なのか と、少し安心した。
「ラピス、お兄ちゃんはラピスが大好きだぞ」
「っ!?ちょっとお兄ちゃん、いきなり何言ってるの!?やめてよ恥ずかしいっ、ばかっ、お兄ちゃんのばかばかっ」
「ぷっ・・あははっ、ラピごめんっ、あたし間違ってた!ラピにお似合いなのは軟弱系男子じゃなくてラピ兄だったねっ、ラピ兄最高っ!あーお腹いたひぃー」
違ったぁ!
デュランの興味を引いたのは色恋話しじゃなくてラピスの発言だった!
真っ直ぐ一直線に一途な想いをストレートに伝えやがった。妹にっ。
デュランの発言でマキナの腹筋が崩壊してしまったようだが、ラピスは恥ずかしさからか顔を真っ赤にし 少し涙目になりながらポカポカとデュランを叩いている。
その様子を微笑ましい光景を眺める様にイリアが見つめているが、デュランは堂々と腕を組み直立不動している。
なんか もう、俺もデュランを応援したくなってきたよ。
そんなこんなで賑やかだが和やかな時間を満喫していると、先程の猫耳MCが広場へと声を届けて来た。




