【 しばしの別れ 】
揺れが収まった後 イリア達を見ると幸いなことに誰も怪我などはしていなかった。
ケントが咄嗟に展開してくれた結界の中にイリア達も入っていたので、転倒などをせずに済んだようだ。
「おーいタクトー。大丈夫かぁー?ってマキナちゃん笑いながら気ぃ失ってるじゃん!頭でも打ったの?」
「違うのセルス君、マキナは大丈夫。それにこっち側にいた皆んなはケント君が結界で守ってくれたから。セルス君達こそ大丈夫だった?誰も怪我してない?」
少し離れた場所にいたセルや生徒会の人達もダイゴロウ先輩が近くにいたおかげで誰も怪我をしなかったそうだ。
「おいシオン。いつまでボーッとしてんだ」
「え?あ、ケンちゃん。・・・あれ?みんなどうして枯れた花みたいな顔してるの?んんっ?わたしなんで地面にペッタンコしてるの?」
俺達と同じようにケント達も怪我などはなく無事なようだ。
地震の直前から様子がおかしくなり、突然心ここに在らずといった様子で、焦点が合っていないような目で一点を見つめてボーッとしながら地面に座り込んでいたシオンも、ケントが呼びかけた事により正気に戻っていた。
「ケント、さっきはありがとう。おかげで誰も怪我をせずに済んだみたいだ。シオンさんは大丈夫か?地震の直前からなんか様子がおかしかったけど…もし具合が悪いなら、日陰で少し休んだ方がいいんじゃないか?」
「ありがとタッちゃん もう平気!急に家から外に飛び出したから太陽さんに負けちゃったのかも。心配かけてごめんね。それよりもタッちゃん!わたし達はお友達になったんだから、わたしの事はシオンって呼んでよねっ!ケンちゃんだけ呼び捨てにするなんてずるいっ!わたしも呼び捨てがいいっ」
「あ、あぁ。わかったよ」
俺が返事をするとシオンは満足そうに頷き、ケントに手を借りて立ち上がった。
シオンが立ち上がると、ちょうどクローツ先輩達もこちらへやってきた。
「小僧っ子達も無事だったようじゃな」
「ケント君、大事な後輩達を守ってくれて感謝するよ。咄嗟にあの精度の結界を張るとはね、さすがはウッドベル一族といったところかな。うん、優秀だ」
クローツ先輩がケントにお礼を告げるが、ケントは片目をピクつかせて不機嫌な様子を隠そうともせずに舌打ちをしていた。
「ちっ、んな事より そろそろ時間だろ。さっさと送れ」
世界的に有名な八英雄であるクローツ先輩に向かって無礼な態度のケントに対して、先輩達は慣れた様子で誰も注意をしたりはしない。
まぁ年下だとしてもケントは客人なので、それが普通なのかもしれないが。
「うん、そろそろ行かないとね。ティーレ、あとは任せたよ。僕達も各所の被害確認だけしてすぐに向かうから」
「わかった。客人、行くよ」
時間的には10分程で王様の挨拶が始まる。
その後にサプライズライブをするのでケント達は今からティーレさんの転移で会場に向かうようだ。
出発前にシオンがイリア達に挨拶をしている中、ケントは俺へと声をかけてきた。
「この前のセントクルスの地震に続いて学園島の祭りの最中での地震。ただの地震かもしれねぇが、オレはキナ臭い感じがしてならねぇ。タクトも何かあった時にはすぐに動けるように用心だけはしとけよ。お前にも大事なもんがあるんだろ?」
ケントはイリア達をチラリと見て俺にそう言った後、そのままティーレさんの転移空間へと入っていった。
ケントが転移空間へ入るとそれを追いかけるようにシオンも歩き出し、転移空間に入る手前で振り返り 俺達へ向かって大きく手を振った。
「みんなー、後で歌うから絶対見に来てよねー!まったねぇー」
元気なシオンがその場からいなくなると、普段は騒がしいはずのマキナが気を失っている事もあって一気に静かになった。
そこで俺は、いつもなら見た目だけでも騒がしく感じる学園長の姿がない事に今更気が付いた。




