【 ケント・ウッドベル 】
編み込みの入った革のズボンに白のTシャツというシンプルな中にもセンスを感じさせる服装。
ブレスレットを付け、首からはシルバーのロケットペンダントを下げている。
そして左耳に1つ右耳に7つのピアスをつけていて、冷たさを感じさせるほどの鋭い目付きと相俟って少しガラが悪く見える。
しかし銀髪の上に金髪を被せたようなツートンヘアーと肩に掛けたギターのおかげでヤンキーというよりファンキーな感じに見える。
それにしても、まさか飛ばされた先で不登校のクラスメートに出会うとはな…
ケント・ウッドベルか。
たしかにどこかで聞いた事のある名前だ。
・・・ん?
ケント・ウッドベル!?
「ケント・ウッドベルってまさか、あの剣豪一家の異端児って言われてるケント・ウッドベルか!?歌姫のパートナーの!?」
俺の記憶にあるケント・ウッドベルと言う名前は、流行りに疎い俺でも聞いた事のあるくらい有名な人物1人だけだ。
剣の世界で右に出る者のいないウッドベル一族の中でもずば抜けた才能を持っていたケントと言う少年が、剣の道を外れて歌姫と共に音楽の世界で成り上がったという話を聞いたことがある。
「あん?気付いてなかったってのか?オレと同じメーカーのヘッドホンしてるから、オレのファンだと思ってたぜ。っつかそれ、かなり昔の型だよな。久し振りに見たぜ!お前、いいセンスしてるよ」
気付いていなかった事に少し驚いた顔をした後、ケントは目を輝かせながら俺のヘッドホンを見て褒めてくれた。
「あぁ、ありがとう。これは10年以上前に母さんが買ってくれたやつなんだけど、愛着が湧いちゃって…修理しながらずっと使ってるんだ」
お気に入りのヘッドホンを褒められたのが嬉しいような照れくさいような変な気分を味わいながら答える俺を見て、感心したようにケントが笑った。
「10年以上ってすげぇな。貰った物を大事にできる奴は、良い奴って証拠だぜ」
べた褒めはさすがに照れる、、、
歌姫のパートナーであるケントは、雑誌やテレビなどでも度々特集を組まれる程の有名人で、人気もそこら辺の有名人なんかよりも高いと、イリアとマキナに力説された事がある。
俺はあまりテレビなどを見ないので顔までは知らなかったが…
それでも、そんなハイスペックな人物に褒められたら照れるというものだ。
〝うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〟
むず痒い気分を味わいながら、照れ隠しの為に頭を掻いていると突然大きな声が響いてきた。
先程まではMSSの力で遠くから聴こえていた大勢の声だったが、今度は直接耳へ響く大きな歓声だ。
「おっと、オレはそろそろ行かねぇと。しっかし防音のここまで客の声が聞こえるとはな。シオンの奴、しっかり盛り上げてるみてぇだな」
ケントがここにいる時点でライブ会場から近い場所だと思っていだが、周りがやけに静かだと思ったら防音だったのか。
もしかしたら、ライブ前にケントが集中する為にわざわざ作られた部屋なのかもしれない…
「ライブ前の集中に水さしてごめんな。それより俺はどこから出ればいいんだ?」
「気にすんな、オレも久し振りに気の合う奴に会えて楽しかったしな。っつかお前ライブ見ていかねぇのかよ?特等席用意してやるぜ?」
俺が謝罪をし帰り道を聞くと、ケントはまた悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、ファンならヨダレが出るほど嬉しいであろう提案をしてくれた。
「嬉しい申し出だけど、ツレと待ち合わせしてるんだ。だから普通に観客席から見させてもらうよ」
「そぉかよ。まぁお前とはまた会えそうな気がするしな。出口はあっちだ。スタッフには伝えといてやるから気にせず出ていいぜ」
確かに、俺もケントとはまた会えそうな気がする。
ケントが学園に登校してこれば会えるのは間違いないが…
それは難しいか。
なにはともあれ
「色々ありがとうなケント。ライブ頑張れよ」
ここにいたのがケントでよかった。
そしてケントが良い人でよかった。
「おぅ、またな!タクト」
ケントはそう言うと、そのままライブ会場へと向かって行った。
「俺もイリアと合流するか。ライブも始まりそうだし、先にお土産でも買っとくかな」
ケントの向かった通路とは反対の通路を進み、俺は出口を目指して歩いていった。




