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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
29/165

【 歌姫 シオン・ヴィーナス 】

ーーセントクルス中心街ーー


ライブ会場



『さぁ、それでは皆さんお待ちかね!我等のスーパーアイドル、歌姫シオンの登場だぁ!みんな、準備はいいかぁー?』


〝キャーーーシオンちゃーん〟


〝シッオッン シッオッン シッオッン〟


〝うぉぉぉぉっ俺の女神さまぁぁぁ〟


〝萌えぇぇブヒィィ萌えぇぇブヒィィ〟


〝ワオォーーンわんっわんっワオォーーン〟




中心街の特設ライブ会場は多くの人で溢れかえっていた。


熱気と熱狂が入り混じりお祭り騒ぎになっている。


先程まで王城から噴き上げていた火柱も、街全体から打ち上げられた花火と同化して観客を盛り上げる要素の一つになっていた。


大人も子供も犬でさえも、夏の陽気さに浮かれ切った表情でライブを待っている。



ーーーーー



ドクンッ ドクンッ ドクンッ


何度ステージに立っても、始まる前の緊張がなくなる事はない。


ライブの日取りが決まりチケットが売れたと聞くたびに、いつも自分に問い掛けてしまう。


「わたし、成長できてるのかな…」


日々の努力はしているつもりだけれど、どれだけ繰り返し練習をしてもゴールに近づけているのかわからない。


「上手くやれてるのかな…」


自信などない。


自分に出来ることも少ない。


それでも

やりたい事、やらなくてはいけない事は決まっている。


そして、わたしに出来る事は歌う事だけ。


なら、わたしは歌う。


歌っていくと決めたのだから。


「いつか、あの人に届くといいな…」


わたしに希望をくれた、


名前も知らないあの人に…。



目を閉じ、幼い頃に出会った恩人を思い浮かべながら、両手を胸に当てて自分の鼓動に耳をすませる。


ドクンッ ドクンッ トクンッ



「よしっ!大丈夫っ!」


高鳴る鼓動が落ち着きを取り戻し、目を開けて控え室を出た。


ーーーーー


「それでは登場だぁぁ!!!シオーーーンッ、ヴィィィィィナァーーース!!!」


MCに名前を呼ばれ、わたしは光に包まれたステージへ駆け出した。



沢山の人、沢山の声、その全てがわたしに元気を与えてくれる。


(嬉しいなぁ。わたしなんかの歌を聴く為に、暑い中こんなに沢山の人が集まってくれてる)


わたしの声で、ここにいるみんなに元気をあげたい。


喜びは伝染するものなんだ。


1人が笑えば、その隣の人が笑顔になって、さらに隣の人も笑いだす…


そうやっていつか世界中のみんなが笑顔になれる日が必ず来るって、わたしは信じてる。



だから、まずはわたしが笑って歌おう!


辛い事や嫌な事があった人でも、わたしにつられて笑っちゃうくらいに元気良くっ!


「みんなぁー!いっくよぉー!」


涙なんていらない、悲しみなんていらない。

みんな幸せになればいいっ!


人の数だけ心がある。


好きな物も嫌いな物もバラバラで、喧嘩やいがみ合いは絶えないし、これからもずっと生まれ続けていくのだと思う。


人の数だけ心があって、みんなそれぞれバラバラだとしても…


気持ちを1つにする事は出来る。


喜びを分かち合って、楽しさを共有して、感動を伝え合って、手を取りあいながら笑う事は出来る。


(みんなに届いて、わたしの気持ち!)



〝うぉぉぉぉっ届いてるぞぉぉぉ〟


〝ヴィーナスちゃんまじヴィーナスゥゥゥ〟


〝ありがたやぁ、ほんにありがたやぁ〟


〝ワンっワンっワオォーーン〟


〝素敵ぃぃぃこっち向いてぇぇぇ〟




喜びと興奮の大歓声の中


歌姫シオン・ヴィーナスのライブが始まった。

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