【 王と凡人の散歩 】
コツ コツ コツ コツ
「・・・・」
コツ コツ コツ コツ
「・・・・」
コツ コツ コツ コツ
空気が重い…
ただ歩いてるだけなのに、これほどまでに疲れた事はかつてない。
何か話した方がいいのか、下手に声を掛けてはいけないのかがわからない。
まさか俺が王様と2人きりになるなんて夢にも思っていなかった…
リードイスト・セントクルス王
二十歳という若さで王座に就き、現在のセントクルスを束ねている人物。
若くして王座に就いたのは先代の王が亡くなったのがきっかけではあったが、それ以前から国政の大半を取り仕切っていたらしく、国民や城内での信用や信頼は圧倒的だった。
さらに剣や魔法も超がつくほど一流で、王自らが主催の魔剣闘技大会などを開き、優秀な人材を探しては自身の稽古相手にしているほどだ。
魔法に関しては得意属性が雷のみで、最優の称号も受け継いでいる。
それだけではなくジースとMSSレベル3も持っており、憧れと尊敬を一身に受ける存在だ。
リードイストが王になってから城で働く顔触れがガラッと変わり、側近や重臣は全てMSS持ちで固められた。
その為、セントクルス王国は若くて強い王国になり、国全体が活気に溢れるようになっていった。
MSSを持つことが出来ない大人達も、職を失うことはなく役割と役職を与えられ、不平不満が出る事もなく城外で職務を全うしている。
それも全て采配を振るう王様が優秀だったからだ。
王様の人気を後押ししたのは、八英雄のリーダーが側近に就いた事だろう。
昔に行われた凱旋演説でも滲み出ていたが、人が大好きなあの青年が側近に就いた事で、国民と王城に関わる人達の心の距離感の様なものが一気に縮まった。
今までは雲の上の存在にしか感じられなかった王族に対し、憧れを抱く事が出来るくらいの距離には近付いた。
親近感とまでは言わないが、それに近い感情を国民達は感じる事が出来るようになったのだ。
……だからと言って、この距離は無理だろ。
手を伸ばせば触れられる位置に世界最大の国の王様がいるのは無理だろ。
「見たところ君はまだ若い様だが、任務に参加していたのか?」
先に沈黙を破ったのは王様だった。
「あ、はい!今年十六歳にならさせていただきました高等部1年にならせられますタクト・シャイナスでございました!」
しまった・・・
盛大にミスったのが自分でもわかった。
あーもうだめだ、神はいなかった…
「そんなに緊張する事はないよ。しかし、一年生で王城の任務とは…。それに今日は特別な任務だったはずだが、君は何か特別な力でもあるのか?」
俺の失言を気にした様子もなく、王様は前を向いたまま質問を投げかけてきた。
「いえ、俺に力なんてありません。今回はなんと言えばいいか…保護者参加のようなものです」
王様は俺の返答に一度だけ振り返り、顔をチラッと見た後また前を向いた。
「保護者か…」
「それより王様、王様が俺みたいなただの学生の道案内なんかして大丈夫なんですか?迷った俺が言うのもなんですけど…」
王という立場もあるし、国政の事などほとんど知らない俺から見ても王様が忙しい人だという事くらいはわかる。
それなのに、ただの迷子の案内などしていてもいいのだろうか。
「気にしなくていい。私は私のやりたい事をする。それが一番の近道であり、正しい道だからだ。今回は君の道案内をする事が正しい道だというだけだ」
「は、はぁ」
どういう意味かわからなかったが、王様の考えを俺みたいな一般人が理解できなくても仕方ないと思い聞き流した。




