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オタク勇者の英雄伝ではない何か  作者: ヒビキ
第一章 アポロス編
11/23

殺し屋アイク 退場

“死” これはただひとつの命がなくなること以上に、あらゆる場面で様々な影響を及ぼしてしまうものだと思う。

例えば、師匠や仲間、そして恋人など大切な人の死。それは失った人に悲しみという深い影響を与える。

また、死してなお、語り継がれる偉人たち。彼らはみな何かを未来に託し、それが今の人の人生観にすら影響している。


つまり、誰が死ぬにせよ、人や社会に何らかのいい意味でも悪い意味でも影響を与える。言うなれば、この社会で生きていく限り社会に影響の無い死は不可能であろう。だから、俺は・・・・・。












ーーー田村sideーーー


「和人ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


地竜なんて化け物と戦い、満身創痍になりながらも何とか撃退。誰1人として失わず帰ってきたと思ったら、アイクさんの魔具に貫かれている血だらけの和人の姿があった。崖の下の海は荒れに荒れていて、波が高くなって打ち寄せていた。


「ありゃりゃ。よりによって、勇者くんのお仲間とは。まったく運がないな。まぁ、いいや。」


ズボッ!


「ぐわっ!」


アイクさんはそう言い、魔具を抜くと、和人は苦しそうに血を吐き出した。


「はぁ、はぁ。くっ、くそが。」


「へぇ〜、まだ生きてたんだ。でも、残念。君には死んでもらうよ」


何だよ、一体何がどうなってんだよ!何で和人が死にそうなんだ?

てか、そんなことより、早く和人を助けないと!


「そーだ、2人は?」


2人はというと、そのあまりに凄惨な光景に光景に言葉に失っているのか、動けそうにない。


「ちくしょう。こうなりゃ、召喚 “ブラッディ ベア”! そして、強化!」


僕は先ほど魔裟斗に肉片にされた赤い熊を呼び出した。僕の魔具で呼び出した魔獣はさらに自分の魂魄を使い、強化できる。慣れてないからいきなりAランクみたいにはできないが、DをCにするくらいなら何とかできる。

本当はBランクなんかを出せればいいが、何故か出せそうにない。


「いっけぇぇぇぇ!」


「まったく、少し静かにしていてくれ。“縛動”!」


突然、僕たちの動きが止まった。3人と1匹の動きを同時に止めて、尚且つ喋ることすら封じるなんて、なんて魂術の精度なんだ。ダメだ、このままでは。


「さーて、ようやくだ。」


「ま、待て。頼むから待ってくれ。」


「お前、それで待ってくれる奴みたことあるのか? まぁ、どっちでもいいけど。」


「や、やめろぉぉぉぉぉ!」


振り下ろされた刀。和人から吹き出す鮮血。

そして、崖から落ちていく和人の姿。どれも否定したい、けれどどれも起こってしまった現実。


「この野郎ぉぉぉぉぉ!“ブラッディ ベア”!」


僕はブラッディ ベアをアイクのもとに走らせた。血が上っていて何故、動かせるのかなんてこれっぽっちも疑問に思わなかった。


グォォォォ!


「こんな熊程度じゃ、いくらいても無駄だよ。」


僕が呼び出したブラッディ ベアがあっという間にやられていく。嘘だろ、強化してもあんなに簡単にやられるのかよ。僕じゃあいつには勝てないのか。








「ふざけんな。僕の友達が殺されたんだぞ。このままでいいわけあるかぁぁぁぁ!

現れろ!“地竜”!」


それは本来呼べるはずが無かったもの。けど、何故かその時の僕には確かな確信があった。体の奥から何かが溢れ出る感覚があった。


僕の声に答えるように魔具が輝きだし、ここに1匹の竜が現れた。


「やれる。これなら・・・やれる。いくぞ、地竜。弔い合戦だ!」


必ず、あいつを倒す。だから、見ていてくれ、和人!














ーーー???sideーーー


(よし、これでいいにはいいが、地竜はいくらなんでもやり過ぎだろ。)


あ、どうも。久しぶりの登場で名前を忘れてる人がいるかもしれないので改めて自己紹介を。俺の名前は剣崎 和人。今はしがない暗殺者をやっています。にしても、こいつの黒一色の格好は何とかならんのかな。もっと腕にシルバー巻くとかSA!

そんなことは置きつつ。えっ、なんでお前いんの?とお考えのみなさん。それの説明には時間を戻す必要があります。






ーーー時は遡り、数時間前ーーー


「やっと、みんな行ったか。」


「そうーだね。」


俺こと、剣崎和人はグループにハブれたため

、ここにいるアイクと2人で行動していた。


「てか、アイク。これから何すんの?」


「そうだね。うーん。あっ、そうだ。よかったら、あっちの方に行ってみない?」


「崖の方か。いやダメだろ。」


「ほら、ダメって言われることほどやりたくならない?」


「いや、分からんでも無いけど。」


「でしょ、でしょ。それに僕もいるから心配ご無用。それじゃあ、出発進行!」


「はいはい。」


呆れながらも、ワクワクしている自分を恥ずかしく思いながら、アイクの後を追った。






「さて、到着!いやー、いい景色だね。君もそう思うだろ、和人君。」

(この辺ならいいかな。)


「あぁ、確かにな。」


「そうだ。用を足してくから、少しここで待っていてくれ。」


「了解。」


そう言うと、アイクはそっと森の中に消えた。さて、俺も準備しますか。








ーーーアイクsideーーー


「さてと、そろそろお仕事しますか。」


森の中に隠れると、辺りを見渡した。にしても、結構な報酬が出るから警戒したものの、まさかこんなにチョロい仕事だとはな。けど、いつもとまったく違うキャラを演じてたから、精神的には疲れたな。


「とっとと終わらせるか。“瞬身”、“消影”、“無音”」


“瞬身”は身体全体のスピードを上げる強化系の魂術、“消影”は気配を絶つ強化系の魂術、“無音”は俺から発する音を軽減する強化系の魂術。他の魂術は得意じゃ無いが、強化系には自信がある。


(これだけかけてあれば、だいじょうぶだろ。)


おれは奴のガラ空きの背中目掛けて、己の魔具を構え、走り出した。いただくぜ!報酬!




ドガン!



あ、あれ、いつの間に俺は空を見てたんだ。もしかして寝転んでるのか、俺。なんで、頬が痛いんだ?


「おいおい、いつまで寝てるつもりだ、アイク!」ニヤッ


俺の目の前にいた奴はさっきまでとはまったく違っていた。実力を隠していたとか、そんなレベルじゃなく、もはや、別物だった。

そう、決して別人などではなく、別物だった





ーーー剣崎sideーーー


おいおいマジかよ。


まさか、


そんな、


あいつが、





こんなに弱かったなんて!


おかしいだろ!なんで暗殺なんて、重要な任務にこんな奴連れて来てんだよ。しかも、何かいきなり突っ込んでくるから、ついワンパン決めちまったぞ。はぁ。

まぁ、いいか。どーせ、こいつには死んでもらうんだ。とことん悪になってやる。


「おいおい、いつまで寝てるつもりだ、アイク!」ニヤッ


さーて、とっととやること済ませますか!





ーーーアイクsideーーー


一体誰だよ。チョロいとか言った奴は?おれだな。


まぁ、いい。こうなったら城に戻って、エリザに騙された分の金を分捕ってやる。

いや、待て。もし、本当に知らないなら、こいつはそれをずっと隠してきた。何故だ?答えは単純だ。何か知られたくないことを持ってやがる。国さえ知らないこれをエリザに知らせれば、さらに金が入る。

よし、絶対生き延びてやる。



「おい、剣崎。さっきはなかなかやってくれたじゃないか。なら、今度はこっちの番だ。行くぞ!」


魔具を再び構えると、俺の姿が10人にも分裂した。


「なんだそりゃ!分身か。てことはお前忍者だったのか!」


何か訳の分からない事を言っているみたいだが、構わん。やってやる!


「行くぞ! “剛腕” “斬刃”」


ただでさえ苦手な付与系の魂術だ。長くはもたん。短期決戦で決める、と見せかけて、既に俺の本体は城に向けて移動している。

後は時間を稼げば、任務完了だ!


「なるほど、面白いもんを見せてくれたお礼だ。こっちも手の内を見せてやるよ。

【slash】」


そういうと、彼の剣に何かが浮かび上がり、一瞬で距離をつめられた。


「よっこらしょ。」


そんな気が抜けるような掛け声とともに起こったのは信じられないことだった。


「何だ、そりゃ。全員を一撃だと!」


「何言ってんだ?まだ1人いるだろうが。」





や、やばい。こいつ、気づいてやがった。


「まぁ、それも“瞬脚” !


ドガン!


これで終わりだがな。」ガシッ


ま、まじかよ。早過ぎるだろ。


「悪いな。お前には誠に個人的な理由で死んでもらう。せいぜいあの世で恨んでくれや。」





ーーー剣崎sideーーー


とまぁ、こんな経緯でやつを捕まえた後、俺の魔術で俺の姿そっくりに偽装して、俺を死んだことにしたってわけよ。これが俺の考えた作戦さ。

えっ、なんでそんなめんどくさいことをしたのかって?それは単純に俺の死をアピールするためだ。

まず、この世界に来てからクラスを観察した結果、クラスの連中の中にはネット小説を読んでいるやつが何人かいることがわかった。最初の方で、チートとかチーレムとか言っていた奴がいい証拠だ。例えば、そんな中で1人の少年が行方不明になったとしよう。普通は助からないと諦めるが、そいつらだけは、もしかしたら、「あいつ、チート持って生き延びてんじゃね?」と言う疑問が出るかもしれん。だからこそ、はっきりと俺の死を印象付けるためにあんなことをしたのさ。考え過ぎだとは思うがね。


まぁ、何事もなく、崖から死んだふりで落ちれば、ミッションクリアさ!よし、頑張るぞ!








この後、まさかあんなことになるなんて、その時の俺には知る由もなかった。








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